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世界のパン〜オーストリア

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オーストリア、と聞いて、一体、何を思い浮かべるだろう。

意気揚々と「カンガルー」、「コアラ」と答えた人は、
注意力散漫な人である。
「カンガルー」や「コアラ」がいるのは、
オーストラリアであって、オーストリアではない。
どちらも国の名前であるが、1文字抜けるだけで
全くの別の国を指すことになってしまう。

オーストリアは中央ヨーロッパの国の1つで、
北にドイツ、東にハンガリー、南にイタリア、西にスイスと
国境を接している。
首都はウィーンで、この名前は聞いたことがあるという人も
多いだろう。
そう、「音楽の都」ウィーンである。
オーストリアは、数々の有名な音楽家を輩出している。
モーツァルト、ブルックナー、シューベルト、マーラーなど、
音楽の教科書の常連たちの多くが、オーストリアの音楽家である。
また、ウィーンの名を冠した少年合唱団なども、
世界的に有名である。

このように、高い音楽文化を持っているオーストリアだが、
同じように「食文化」にしても、レベルの高いものを持っている。
これは、先に書いたように、ヨーロッパ諸国の
ほぼ中央に位置しているため、
古くから様々な文化が流入してきたためである。
そのため、「パン文化」においても、早くから発達しており、
その高い「パン文化」は、周辺各国へと影響を与えた。
フランスについて書いた際にも触れたが、
クロワッサンやブリオッシュなども、
もともとはオーストリアから、
もたらされたといわれているのである。

オーストリアの有名なパンの1つに、「ゼンメル」がある。
これは、別名「カイザーゼンメル」とも呼ばれる。
丸く平べったいパンなのだが、その表面には
外周から中心へ向かっての、何本かの折り目がついている。
クラスト(パンの外側)は薄く、パリッとしており、
クラム(パンの中身)は柔らかく、軽い食感である。
その形が、皇帝のかぶる王冠に似ていることから、
「カイザーゼンメル」の名前がついたといわれる。
この模様は、元は手で作られていたが、
現在では、「型」に入れて焼くことによって作られている。
「型」に入れて、その模様の入っている面を下にして焼くため、
生地の膨らみが抑えられ、平らな焼き上がりになる。
本場・オーストリアでは、水平にスライスして、
ハムやチーズ、野菜などの具材を挟み、
サンドイッチにして食べることが多い。
「カイザーゼンメル」は、2時間パンとも言われ、
焼きたてが一番美味しいとされる。
そのため、4時間以内に食べることが推奨されている。
そういう意味で、日本で本式の「カイザーゼンメル」を
手に入れるのは、難しいだろう。

この「カイザーゼンメル」と全く同じ生地を、
薄く延ばし、これをクルクルと巻いて棒状に成型したものが、
「ザルツシュタンゲン」である。
「ザルツ」は「塩」、「シュタンゲン」は「棒」という意味で、
その名の通り、表面には塩とキャラウェイシードがまぶしてある。
生地を薄く延ばしたことにより、生地に層ができ、
全体的にサックリとした食感に仕上がっている。
成型の仕方は違うものの、イタリアの「グリッシーニ」と
似通った所がある。
(形状的には「グリッシーニ」の方が、
 よほど「棒」状ではあるが……)
塩味がついているため、そのままビールのおつまみとして
食べられることもある。

さて、先にも書いた「クロワッサン」だが、
これも元は、オーストリアで作り出されたものである。
具体的に言えば、イーストの入ったパン生地を薄く延ばし、
バターを塗り込み、これを何重にも折り重ね
焼き上げたものだ。
この手のものは、英語圏においては
「デニッシュ」と呼ばれているが、
これは「デンマーク風」という意味である。
つまり、この手のものを「デニッシュ」と呼んでいる国では、
デンマークから伝わったことを意味しているが、
そのデンマークへは、オーストリアから伝わったとされる。
つまり、「デニッシュ」発祥の地こそが
オーストリアという、ワケのわからないことになる。
では、発祥の地であるオーストリアでは、
何と呼ばれているかというと、「プルンダー」と呼ばれている。
これは「壊れやすい」という意味であり、
食べているとボロボロと崩れる、デニッシュ系のパンには、
ぴったりの名前である。
なお、フランスの「クロワッサン」の元となったのは、
「キプフェル」という三日月型のパンだとされているが、
これはデニッシュ生地では作られておらず、
普通のパン生地で作られている。
ひょっとすると、フランスへと持ち込まれる際に、
「キプフェル」と「プルンダー」が、ひとまとめにされて、
「クロワッサン」となったのかも知れない。
食感や、味わいなどを考えた場合、
この「プルンダー」こそが、
「クロワッサン」の元祖といえるだろう。

「クグロフ」は、有名なクリスマス菓子である。
卵やバターをふんだんに使った、リッチな味わいのパンで、
オーストリアではクリスマスに限らず、
お祝い事のときに食べる。
「クグロフ」というのは、フランスでの呼び方で、
オーストリアでは、「グーゲル・フップフ」と呼ばれている。
「グーゲル」は、丸い形、
「フップフ」は、ビール酵母という意味がある。
そう、「フップフ」とは「ポップ」のことである。
18世紀以前のオーストリアでは、
ビール酵母で生地を発酵させていたので、
恐らくは、その名残なのではなかろうか?
斜めにうねりのある、蛇の目模様の陶器製の型の中に、
香り漬けした干しぶどうを入れ、
ブリオッシュ風の生地を入れて焼き上げる。
食べる前に粉砂糖をかけるのが、一般的である。
かの、マリー・アントワネットの好物であったと伝えられる。

また、オーストリアには、生地にライ麦粉を加えた
「ライ麦パン」も作られている。
ただ、北のドイツとは違って、ライ麦が主体となることはなく、
あくまでも主体となっているのは小麦粉だ。
「ゾンネンブルーメン」というパンでは、
小麦粉80%、ライ麦20%といった具合の配合であり、
「ライ麦パン」と同じように、
発酵種にサワー種とパン酵母を併用しているため、
独特の酸味がある。
ただ、表面いっぱいにまぶされた「ヒマワリの種」が、
その酸味を和らげ、食感も良くしている。

かつて、ヨーロッパの文化の交流点として、
その文化の先端であったオーストリア。
それは「パン文化」でも、同じことであり、
オーストリアは、ヨーロッパの「近代パン文化」において、
その土台となった。

そういう意味では、様々な国の「パン文化」にとって、
オーストリアは故郷といえるのかも知れない。

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