自分は現在、兵庫県に住んでいる。
大学時代に九州福岡にいたのだが、その時は安アパートで1人暮らしだった。
そうなると、自分で食事の用意をしなければならなくなる。
近くに、頼れる親戚もいない。
右も左もわからない町に1人。
自転車や、原付といった足もない。
とりあえず、何か食べるものを探すため、
てこてこと歩いて、町に出た。
何時間か歩き回って、とりあえずスーパーを見つけた。
これで食料品を買う場所がわかった。
早速、晩飯でも買うかなー、と店に入って店内を見て回ったのだが、
いろいろ変なものがあった。
鮮魚コーナーには、見たこともない魚が並んでいた。
そしてその片隅に、カーキ色のゼリー状の物体が置いてあった。
「おきゅうと」であった。
後で知った事だが、海藻(エゴノリ)を煮て、かためたものであった。
しかし当時の自分には、ただのよくわからない、不気味なものであった。
インスタントラーメンでも買うかと、インスタントラーメンのコーナーに行くと、
今度はインスタントラーメンが棒であった。
今では全国区になったが、マルタイの「棒ラーメン」はその当時、
兵庫県では見られなかった。
いくら探しても、食べ慣れたイトメンの「チャンポンめん」はなかった。
さすがにエラい所へきたなー、と思った。
そういう経験をしたからか、離れた所に行くと、
とりあえずスーパーに入ってみるクセがついた。
そうすると、地元のスーパーでは絶対に見かけない商品が、そこに並んでいる。
普段、あまりスーパーに行かない人間だと、
その違いに気がつかないだろうが、スーパーを日常的に利用している人間、
つまり主婦や、一人暮らしの人間がそこに入った場合、
きっとそこに並んでいる商品を見て、驚くことになるだろう。
今回はそういう話である。
先に書いたように、旅先などでスーパーに入ると、
その土地で愛されている、ミョーな商品が並んでいる。
特にそれが顕著なのは、鮮魚コーナーだ。
ここでは地方性というものを、いやというほど感じることができる。
聞いた事もないような魚、貝、甲殻類、海藻……。
さらには、自分の時の「おきゅうと」のような、
その地域独特の加工品もある。
東海地方の一部で販売されている、「イルカの肉」などは、
他の地域の人間からすれば、思わず自分の目を疑ってしまう商品だろう。
好奇心旺盛な人なら、迷わずカゴの中に放り込むに違いない。
で、家に帰って悩むのだ。
これ、どうやって食べたらいいの?と。
まあ現在は、インターネットという便利なものがあるので、
冒険的な買い物をするのに、躊躇がない。
食べ方がわからなくても、調べてみれば何とかなるからだ。
そういう意味では、精肉コーナーにはあまりそういうことがない。
ただ、羊肉などは全く扱っていない地方もあり、
そういう人間が羊肉を見ると、思わず買って食べてみたくなる。
部位的なものだと、ホルモン、豚足なども地域性のある食材だろうか。
面白いのは、調味料コーナーだ。
一般にいわれることだが、関西では、やたらソース類が充実している。
名古屋近辺では、味噌の品揃えがただならぬ量だ。
九州では甘みのある醤油があるので、これも他の地域の人には珍しいだろう。
これらは買っておくと、普段の食生活の幅が広がるので、
是非購入を勧めたい。
常温でも品質が劣化しないのが、うれしい。
麺類、それも生・乾燥問わずインスタントものには、地方色がある。
九州の棒ラーメンはすでに全国に広がったが、
まだまだ地元のみの麺商品というのは、残っている。
名古屋のきしめん、伊勢のうどん、などは生麺の商品だ。
カップラーメンや、袋入りインスタントラーメンにも、地域色豊かなものがある。
総菜コーナーも面白い。
天ぷらやコロッケが並んでいる中に、ミョーなものがあったりする。
関西では紅ショウガの天ぷら、名古屋では名物の手羽先などが、
置いてあるスーパーもある。
さつま揚げの類いも、地元の魚介類を使っているものもあり、
そういうものを見ると、つまんでみたくなる。
意外と侮れないのが、スーパーにあるフードコートだ。
こういう場所に潜り込むと、お好み焼き、焼きそば、たこ焼き、麺類などで、
地方の名物を見つけることができる。
広島風お好み焼き、明石焼、どろ焼き、ホルモンうどん、きしめん。
こういったB級グルメが、フードコートのメニューにある。
専門店ほど、気取っていないのがうれしい。
一番、地方色があるのが、パン・菓子類コーナーだ。
地方の小さなスーパーの場合、地元のパン業者が、
ミョーなパンを作って、納入していることがある。
他の地域の人間が見れば「?」となるのだが、
地元の人間から、熱い支持のあるパンだ。
また菓子類にも、地方性豊かなものがある。
「鶯ボール」、「シガーフライ」、「しるこサンド」、「満月ポン」などは、
その手の菓子の代表だ。
一部、人気が出たものは、そこから全国に広がっていく。
以上、いくつか挙げたように、地方のスーパーには、他の地域の人間には、
思いもよらない商品が、並んでいることが多い。
そして、スーパーの商品は、驚くほどに安い。
人へのお土産には使えないが、自家で消費するものを買うのであれば、
スーパーで買うと、実に安上がりですむ。
地方に行けば、その地方独特のスーパーがある。
それは、それぞれの地元の人の生活に、密着した品揃えで、
人々の生活を支えているスーパーだ。
そこへもぐりこむことは、その地方の人々の生活に、触れることでもある。
何かの機会に、自分と縁のない地方に赴いたときには、
是非、その地方のスーパーを覗いてみてもらいたい。
きっと、思わぬ掘り出し物が転がっているだろう。