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ラスク

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By: ume-y

先日、揖保川の下流・中川に、
アリゲーターガーが現れたという話を書いた。

アリゲーターガーというのは、
近年、日本各地で目撃されている魚で、
最大の特徴は、まるでワニの様なゴツい顎である。
また、大きく成長することでも知られており、
最大サイズのものになると、なんと体長3mにもなるという。
もちろんこれは、現在確認されている中でも
最大のサイズの個体になるのだが、
平均的な個体でさえ、体長2mほどに成長するというのだから、
大型化する「種」であることには、変わりがない。

神戸新聞が伝えたところによると、
今年6月、揖保川の下流・中川で泳いでいる
アリゲーターガーを確認。
この個体はすでに体長1mを超えていると見られ、
揖保川漁協は産卵期のアユが、
アリゲーターガーに食い荒らされることを懸念し、
はえ縄などを使って捕獲を試みたが、ことごとく失敗し、
今もアリゲーターガーは揖保川を泳いでいる、という。

こういう話を聞いた場合、とりあえず現場へ行ってみたくなるのが、
自分の悪いクセである。
のんびりとサイクリングを兼ねて、自転車で出かけていった。
気分は、往年のTV番組「水曜スペシャル」の、
川口浩探検隊そのものである。
当番組風のタイトルを付けるとしたら、
「秘境!揖保川下流で、謎の怪魚・鰐魚を追う!」
と、いったところだろうか。
大まかに、土手の上からざっと川面を見て回り、
うまくいけば、泳いでいるアリゲーターガーが見られるという、
非常に曖昧で、大雑把な計画であった。

この計画の第1段階は、「腹ごしらえ」であった。
広い揖保川で、たった1匹の魚を探そうというのだから、
何よりも必要になるのは、体力である。
そういうことになれば、まずやるべきことは「腹ごしらえ」である。
現場近くで朝食バイキングをやっている店に行き、
しっかりと「腹ごしらえ」をすませることにした。

その店は、昼と夜にも、
バイキングスタイルで食事を提供しているのだが、
実は朝も、モーニングサービスということで、
割安のバイキングを提供している。
昼、夜に比べると格段に品数が少ないのだが、
しっかりと腹ごしらえをするのが目的なのだから、
この際、多少の品数の少なさには目をつぶる。
もちろん、品数が少ないとはいえ、
昼、夜の半分程度の品数はあるので、選択肢は充分である。
色々と取り合わせながら、メニューを物色していると、
パン類のコーナーに、
バスケットに盛りつけられた「ラスク」があった。

そのバスケットの前には、確かに「ラスク」と書かれているのだが、
パッと見た感じ、自分の知っている「ラスク」とは、
ちょっと趣が違う。
自分の知っている「ラスク」は、小型の食パンか、
バゲット(フランスパン)を薄くスライスし、
これに甘い味付けをした後で焼き上げ、
これをカリカリに仕上げたものである。
だから普通の「ラスク」は、サイズは違えども
普通のトーストと同じ様な出来上がりになる。
(もちろん、普通のトーストの様に、外はカリカリ、
 中はふっくらとはしておらず、中までカリカリなのだが……)
ところがここの「ラスク」を見てみると、
パンの端の部分、いわゆる「耳」の部分を使って、
「ラスク」を作ってあるようである。
確かに、普通に食パンを用意して「ラスク」を作れば、
そのうちのいくつかは、「耳のラスク」が出来上がるのは当然だが、
いくらなんでも、ほとんど全てが「耳」というのは、おかしい。
だが、ふと、「ラスク」の入ったカゴの横を見てみると、
そこには大量に並べられた、卵のサンドイッチ。
……。
なるほど、そういうことか、と店の事情を理解し、
「ラスク」と卵のサンドイッチを取り皿にのせて、
自分のテーブルへと戻っていった。
「耳」を使って作られた「ラスク」は、
普通の「ラスク」よりも少々堅さがあるものの、
普通のものよりも香ばしさがあり、
これはこれで、なかなかウマかったのである。

先にも書いた通り、
「ラスク」はパンを二度焼きした、焼き菓子である。
0.5~1㎝ほどの薄さに切ったパンに、
卵白と粉砂糖を混ぜたものをぬり、オーブンで焼き上げる。
この「卵白と粉砂糖を混ぜたもの」をかけることを
「アイシング」という。
かつて「パウンドケーキ」について書いた際には、
粉砂糖とレモン汁を使った「アイシング」について触れたし、
ベーカリーなどで販売されている
「シナモンロール」にかかっている「白いアレ」も、
「アイシング」だ。
当然、「アイシング」を施せば、
「ラスク」の仕上がりは甘くなるのだが、
近年では、ガーリックなどを塗って焼いた、
塩味の「ラスク」も作られるようになった。
独特のカリッとした食感があり、
水分含有量が少ないため、保存性も高くなっている。
普通は、サクサクと容易に食べられる堅さに焼かれているが、
保存性を高める目的で、非常に堅く焼き上げられたものもある。
これらは保存食として使われたり、
幼児の歯固めに用いられる。
そんなものを子供に食べさせて、消化に悪くないの?と、
日本人的な感覚で思ってしまうのだが、
実はどういうワケか、カリカリに焼き上げられたパンというのは、
消化にいいのである。
(同じようにカリカリに焼き上げられた、
 イタリアのパン「グリッシーニ」も、
 元々は病弱な王子のために作られたとされている)
子供が風邪を引いて食欲が無い様なとき、
親は良く「おかゆ」を作って食べさせようとするが、
その食感から、「おかゆ」を嫌う子供も多い。
そういう場合に、「ラスク」を与えてみるというのも、
栄養補給の有効な方法なのかも知れない。

現在の様な「ラスク」が作られだしたのは、
1900年代始めごろの、ドイツでのことらしい。
保存が利くため、もともとは軍隊用の保存食として、
作られたものだったようだ。
ただ、パン生地(小麦粉に様々な副材料を加え、練ったもの)を
二度焼きするという手法については、
ここで考え出されたものではなく、
古くから行なわれていたもので、現在ではお菓子の一種である
「ビスケット」なども、元々の意味は「二度焼く」というものなので、
パン食文化圏では、古くから知られた技法だったのかも知れない。
二度焼きしているわけではないが、「乾パン」や「堅パン」なども
パン生地をしっかりと焼いて水分含有量を減らし、
保存性を高めている点は、「ラスク」と同じである。
(「乾パン」や「堅パン」も、「ラスク」と同じように
 軍用食としてや、航海の保存食として用いられることが多かった。
 現在でもこれらは、その保存性を活かし
 非常食として用いられている)

これがいつごろ、日本に入ってきたのかは、はっきりしない。
ただ調べてみると、各地に日本「ラスク」発祥の地があるようだ。
もともと保存性の高いお菓子なだけに、
海外からのお土産として、日本に持ち帰られることも
あっただろうと思われるが、
いかんせん、日本人の目には「堅いトースト」くらいにしか
映らなかった可能性もある。
だとすれば、見よう見まねでこれを作ってみようとした
菓子職人が複数いたとしても、おかしなことではあるまい。
そして、ある程度の腕のある菓子職人なら、
「ラスク」の再現は充分に可能だったのではないか。
と、すれば、これの再現に成功した菓子職人が、
それぞれ「ラスクの日本発祥」を名乗ることは、充分にあり得る。
現在のように、インターネットなど無い時代、
それぞれが「日本で初めてのラスク」と信じて、
これを売り出したものと思われる。

さて、この「ラスク」やサンドイッチも含め、
腹ごしらえをした自分は、意気揚々と揖保川下流・中川へ向かった。
のんびりと土手上の道を自転車で流しながら、
それらしい影を追ったのだが、結局見つかったのは
ごく普通の亀が1匹だけであった。

現実は「ラスク」ほどには、甘くないということだろう。

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