自分の住んでいる播磨地方では、回遊魚が遅れて回ってくる。
アジのサビキ釣りは、ファミリーフィッシングの定番だが、
これは夏の釣りである。
実は早い所では、5月か6月くらいから釣れ始める。
そのまま釣れ続けて、遅い所では11月ぐらいまで釣れる。
播磨地方は、この遅い方にあたっているようで、
大体、アジが釣れはじめるのは、秋口になってからである。
このころになると、姫路港や網干、室津や相生などで釣り客が増える。
みんなアジを狙ってきているのである。
風が涼しくなってきたころ、アジを釣るために家族連れがやってくる。
銘々の竿にサビキ仕掛けをつけ、海の中に放り込むと、
アジのみならず、イワシやママカリ(コノシロ)などが釣れる。
この辺りは食べられるので、持ち帰る人が多いが、
フグや、ダイチョウ(ヒイラギ)、コッパグレなどは、
なかなか持ち帰って食べようか、という人は少ない。
そんなサビキ釣りシーズン全盛期にあって、
もくもくとウキ釣りの仕掛けを投げ続ける釣り人がいる。
サヨリ釣りをしている人々だ。
まわりがサビキ釣りばかりの中、サヨリ釣りをしている人はかなり浮いている。
今回は、そんなサヨリ釣りについて書いていく。
サヨリは漢字で書くと「細魚」となる。
「針魚」と書く場合もある。
どちらの字にしても、その細長い魚体を表している。
特徴的なのはその鼻先で、下あごが針のように尖っている。
カジキマグロという有名な魚がいるが、あれのちょうど反対だ。
ダツ目サヨリ科の海水魚で、水面近くを群れをなして泳いでいる。
背中は青緑色で、腹部は銀色。
典型的な青魚の色である。
内臓を包み込んでいる腹膜は真っ黒で、実は腹黒い魚である。
そのため、腹黒いという意味合いで、その名前を使われることもある。
しかしこれには、光が身体を透過するのを防ぐ目的があり、
別段、この魚の性格が悪いなどということではない。
わりと簡単に釣れる魚なので、
初心者から上級者まで幅広いファンがいる。
3月ごろから11月ごろまで釣ることができるが、
もっとも良いシーズンは3月から5月までで、
かなり大型のサヨリを狙うことができる。
それとは別に、9月から11月にかけては、鉛筆サイズのものが多く釣れる。
撒き餌をしながら釣ると、魚群が長く留まり、釣果があがるが、
まわりでサビキ釣りをしている釣り客がいるようなら、
彼らの撒き餌が、サヨリを集めてくれる。
水面近くを泳いでいるため、魚群は一目で分かる。
魚群の回ってきていない時は、全くその姿を見つけることはできない。
餌を食べたとき、ウキが大きく横に走る場合と、
ほとんどウキが動かない場合がある。
前者の場合、アワセは容易だが、後者の場合、釣り上げるためには技術がいる。
その辺りが、初心者から上級者まで、広く楽しめる由縁だろう。
仕掛けも、撒き餌をするためのカゴ釣りと、
アタリをとることを重視した、シモリ仕掛け(連ウキ仕掛け)がある。
シモリ仕掛けの場合は、水面下に沈んだいくつかのウキの動きによって、
そのアタリを正確に読み取ることができる。
逆にカゴ釣りの場合、リールのついている竿を使うため、
かなり沖合で群れているサヨリを狙うことができる。
竿もシモリ釣りの場合はのべ竿を、カゴ釣りの場合はリール竿を使う。
手がえしはのべ竿の方が素早いが、
リール竿には遠くのポイントを狙えるという利点がある。
釣れたサヨリは、美味しく食べられる。
食べ方としては、天ぷら、刺身、干物あたりが多い。
新鮮なものはクセがないのだが、締め方が悪いとクセが出ることがある。
刺身はある程度のサイズのサヨリでないと、作りにくい。
さらにこれをおろす時、腹膜の黒い部分をきれいに取り除かないと、
臭いが残るし、見た目も良くない。
これでも臭いが気になるのなら、
食べる時に、生姜醤油で食べるといいだろう。
天ぷらの場合、頭を落とし、鱗と内臓をとり、腹側からひらく。
この際、骨に沿って両側から包丁を入れ、3枚に下ろすような形にする。
もちろん、本当に3枚にするのではなく、背中側の皮は切らず、
中骨だけをうまく取り除く。
この時に、腹膜の黒い部分も取り除いてしまう。
後は、塩をふってしばらくおき、これに衣をつけて揚げる。
どちらも美味しいのだが、釣れたサヨリの数が多いと、
調理にやたら時間がかかってしまう。
面倒くさい場合は、あまり釣りすぎないようにしよう。
さて、わりと気軽に楽しめるサヨリ釣りだが、
実際にサヨリを狙って釣りをしている人は、結構少ない。
アジのサビキ釣りが8割、サヨリ釣りが2割といった所だろうか。
下手をすれば、、まわりがサビキ釣りばかりで、
自分だけがサヨリを釣っている、なんてこともある。
面白いことに、アジが全く釣れなくても、サヨリは入れ食いなんてことも多い。
そういう場合は、まわりが釣れなくて沈滞ムードの中、
1人だけどんどんと釣り上げ続けることになる。
……これが、実に気持ちいいのである。
お前等ヘタクソ、俺天才、なんていう気分にもなる。
まあ、性格の悪い話ではあるが、そういう優越感を味わえる釣りではある。
餌はサビキ釣りと変わらないので、
こっそりとサヨリ釣りの道具を持って行っておくと、
サビキ釣りがダメな時には、いい思いができるかもしれない。