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動物 釣り 雑感、考察

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小学生の音楽の教科書に、
「ふるさと」という唱歌が載っている。

自分が小学生だったときにはすでに、
古くさい歌だなー、なんて感想を持っていたのだが、
この「ふるさと」の冒頭に、
「ウサギ追いし、かの山
 小ブナ釣りし、かの川」
という一節がある。
自分が子供のころには、すでに山に「ウサギ」はおらず、
ウサギを追いかけるのは、学校の飼育小屋のウサギが
小屋の外へ逃げ出したときだけであった。
だが、川にはまだ「小ブナ」がおり、
子供時代には、これを釣って遊んだ記憶がある。

ちょうど自分が釣りを始めた、小学生の高学年のころに、
スポーツフィッシングとしての「バス釣り」が流行り始めた。
流行に敏感な周りの子供たちは、
一斉に、かっこいい「バス釣り」に転向していったが、
どういうわけか自分は「バス釣り」にはシフトせず、
相変わらず「小ブナ」などを釣っていた。
あー、流行に疎い子供だったんだなー、なんて思われそうだが、
実際はひとつかふたつ、安いルアーを買い、
コンパクトロッドをつかって「バス釣り」をしたことはあるし、
きっちりとブラックバスも釣り上げている。
それでもなお、「バス釣り」に傾倒しなかったのは、
エサ釣りである「小ブナ釣り」に比べると、
疑似餌を使った「バス釣り」は、
圧倒的に釣果が低かったからである。
だから、自分は成人するまで
本格的な「ルアーフィッシング」をすることなく、
ただひたすら、川で鮒や鯉、
オイカワやウグイなどを釣っていた。
もちろん、エサにはミミズを多用していたため、
外道としてブラックバスやブルーギルが多量に釣れたので、
同世代の「ルアーマン」たちよりは、
圧倒的に多くのブラックバスを釣っていた筈である。

話がそれてしまったが、
そのころ、うちの近所の川には、
凄まじい数の鮒や鯉が泳いでいた。
それこそ小さな用水路のような場所でさえ、
200~300匹はいそうな鮒の群れが泳いでいたのである。
そんな状況であったから、「小ブナ」に限らず、
鮒は本当に良く釣れた。
よく、
「釣りは鮒に始まり、鮒に終わる」
などといわれるが、その始まりが鮒であるのが、
納得できてしまうほどの釣れ方であった。
(この諺で、始まりの「鮒」とされているのは、
 ギンブナを主とした「マブナ」であるが、
 終わりの「鮒」とされているのは、
 俗にヘラブナと呼ばれる「ゲンゴロウブナ」である。
 ヘラブナ釣りは、繊細なアタリを読む必要のある
 高度に技術的な釣りで、色々な釣りをやってみた釣り人が
 最後に行き着くことの多い「釣り」である)

ところが、それから数十年。
うちの近所の川では、
全くといっていいほど鮒の姿を見なくなってしまった。

鮒はコイ目コイ科コイ亜科フナ属に属する、魚の総称である。
やたらコイ、コイ、コイと続いていることからもわかるとおり、
鯉とは非常に近しい間柄である。
外面的にも、非常に鯉に似通っているが、
鯉には口元にヒゲが生えているため、
鯉と見分けることが出来る。
通常、「マブナ」と呼ばれる「ギンブナ」や「キンブナ」は、
最大でも30㎝ほどにしか成長しないが、
「ヘラブナ」の名前で知られる「ゲンゴロウブナ」は、
40㎝をこえるほどに成長するものもいる。
「ゲンゴロウブナ」は「マブナ」に比べると、
体高も高いため、かなりのサイズ差に感じられる。
この他にも、鮒寿司に使われることの多い「ニゴロブナ」や、
諏訪湖付近に生息する「ナガブナ」など、
地方色の濃い品種もいくつか確認されている。
また、日本には生息していない品種で、
ヨーロッパに生息する「ヨーロッパブナ」というものもおり、
こちらはなんと最大で60㎝以上に成長する。

日本のみならず、アジア一帯では
古くから貴重なタンパク源であり、
日本でも各地に「鮒」をつかった伝統料理が残っている。
ただ、淡水魚独特の臭いなどが敬遠されたり、
「鮒」の生息数が減ったりなどの問題もあり、
各地の「鮒」料理も、だんだんと姿を消しつつある。
各地に様々な鮒料理を出す店があるが、
その中に「鮒の刺身」や「鮒の洗い」を出す所もある。
淡水魚の生食には、常に寄生虫の危険が存在しており、
海水魚の寄生虫とは違い、
淡水の「それ」は命に関わってくることもある。
これは別に「鮒」に限った話ではないので、
鮒の生食のみを危険視する必要はないが、
淡水魚の生食には、
一定以上の危険性があることは覚えておこう。

日本に生息する「鮒」のうち、
もっともその数が多く、
「マブナ」の名前で知られている「鮒」が、
「ギンブナ」である。
この「ギンブナ」は、その生殖方法が変わっており、
まず大前提として、「ギンブナ」にはほとんどオスがいない。
これだけを聞くと、繁殖することが非常に困難に思えるが、
実際には「ギンブナ」は日本の鮒の中で、
もっとも繁殖している。
これは少ないオスブナが、
死ぬ思いでがんばっている……ワケではなく、
「ギンブナ」の生殖方法が、無性生殖の一種である
雌性発生だからである。
純粋な無性生殖では、母親だけで生殖が可能なのだが、
「ギンブナ」の場合、生殖を開始するためには
オスの精子を必要とする。
ただ、この場合、必要とされる精子は、
必ずしも「ギンブナ」の精子ではなく、
「キンブナ」や「ゲンゴロウブナ」などの他のフナ類や、
「ドジョウ」や「ウグイ」の精子でも生殖が始まる。
そうなると、ほとんどの「ギンブナ」は、
雑種ということになりそうだが、
生まれてくる子供は全て純粋な「ギンブナ」である。
オスの精子は遺伝には全く関わっておらず、
あくまでも生殖を始める「刺激」にすぎないということである。
男の目から見てみれば、恐ろしいほどの女系社会である。
この雌性発生は、通常の有性生殖に比べて増殖率が高く、
これが「ギンブナ」の数が多い、理由のひとつになっている。

しかし先に書いたとおり、
最近ではこの「ギンブナ」でさえも、
その姿を見かけることはなくなった。
こういう話になると、
大体、「乱獲が~」とか「環境の悪化が~」という話になる。
しかし「鮒」を乱獲するような漁業は存在していないし、
「環境の悪化」にしても、下水道が完備され、
川の水はきれいになりこそすれ、悪化はしていない筈である。
では何故、「鮒」が減ったのか?

実はその理由は間違いなく「下水道の完備」である。
下水道が完備されて、確かに生活排水は川に流れ込まなくなった。
様々な汚染物質は流れ込まなくなったが、
それと同時に、川の生物にとっての栄養も流れ込まなくなった。
現在の川は、人類誕生以降、
もっとも汚染の少ない川であるが、
同時にもっとも栄養の貧弱な川でもある。
そんな中では、全ての食物連鎖の土台である
「植物プランクトン」がほとんど発生せず、
必然的にそれらをエサとする様々な生物が、
生きていられなくなったのである。

これは「生活排水」を無くせば、
川が、自然が蘇ると
盲目的に信じた、浅い考えの環境意識がもたらした、
新たなる環境破壊である。
人間と、その生活排水もまた、自然の一部であることを忘れた、
愚かな所行なのである。

我々は、今までの盲目的な下水道事業を改めて見直し、
本当にヤバい物質は取り除き、
環境に有用な栄養は自然の中に返していく、
新たな下水道事業を始めなければならない。

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