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歴史

野分と言われていた、台風一過

更新日:

2週続けての台風となった。

しかも、台風18号、台風19号ともに、

週末を狙うようにしてやってきた。

これには、各地の行楽地も大弱りだろう。

先にやってきた、台風18号のダメージが回復していない地域もあり、

そういう場所にとっては、まさに弱り目に祟り目、となってしまった。

さて、台風についてはこれまでにも書いたことがあるが、

英語のタイフーンが語源となっている。

タイフーン→台風というわけだ。

つまるところ、英語をそのまま表音漢字にしただけで、

台風という言葉自身には、大きな意味はない。

もともとは「野分」と呼ばれ、

「野の草を吹いて分ける」という意味であった。

それだけ強い風が吹く、ということだろうか。

11世紀初頭に書かれた「枕草子」や「源氏物語」の中に、

「野分」の言葉が出てきている。

少なくとも、平安時代には宮中の女性たちの間でも、

「野分」という言葉は日常的に使われていたようだ。

「野の草を、吹いて分ける」というからには、台風の後、

草原が2つ以上に区分けできる状態になっていた、ということだろうか?

……。

どうも想像がつかない。

現在でも、耕作放棄地や、住宅の建っていない宅地などが荒れ果てて、

草原のようになっていることがある。

しかし、台風の後、これが分かれてしまっているような状況は、見たことがない。

分かれる、ということは、強風によって草が引きちぎられて、

2つに分かれるということだろうか?

なるほど、これなら風の強さを表すには適当かもしれない。

しかし樹木の葉が強風によってちぎれるのとは違い、

草というのはそうそう、風によって引きちぎられることはない。

どんなに風が吹いても、倒れるという所がせいぜいだろう。

暴風によって「倒れる」と聞いて、一番最初に思い浮かぶのは、

稲穂の実った水田だろう。

台風が過ぎ去った後、稲穂がべったりと倒れてしまっている姿は、よく目にする。

もちろん、台風にあっても倒れない稲穂もあり、

水田においては、台風の前と後で、

区分けができるようになる、ともいえる。

もちろん、稲が倒れるのは台風だけに限ったものではない。

猪などの野生生物が、水田に侵入しても稲穂は倒されるし、

稲穂の実りが良すぎた場合も、自重によって倒れてしまう。

ミミズが大量発生して地面を掘り返すと、地盤が緩くなり、

稲穂が倒れることもある。

最近では、防除用ヘリコプターを飛ばすと、

その風圧によって、稲が倒れてしまうこともあるらしい。

一時、噂になったミステリーサークルなどでも、稲は倒れる。

もっともこれは、どこかの悪戯者によるもので、

いわば人為的な犯罪行為ある。

稲が倒れてしまうと、米から芽が出たり、腐ったりする。

そこまで行かなくても、コンバイン(自動刈入れ機)で稲刈りができなくなり、

場合によっては、手で稲を刈らなければならなくなる。

最近のコンバインは、ある程度倒れた稲も刈り取ってくれるそうだが、

それにも限界はある。

株元からべったり倒れてしまっている場合は、機械で刈れない場合がある。

そういうときは、お気の毒だが、人力で起こしながら刈るか、

一思いに鎌で稲刈りをするか。

どちらにしても、面倒な稲刈りになるのである。

「野分」から、ちょっと離れてしまった。

先に書いたように、雑草が生い茂っている場所では、

台風の強風によって、これが倒れている状態は、まず見ることができない。

逆に、水田の場合、台風後に倒れてしまっている状態は、

一種の風物詩のようなものである。

稲の品種改良が進み、倒れにくい、丈夫な種ができているはずの現代において

これなのである。

「野分」の言葉が使われていた時代、台風がやってくれば、

かなりの稲穂が倒れてしまったのではないだろうか?

もちろん、倒れたままにしていると、

稲が発芽したり、腐ってしまったりする。

倒れ方にもよるだろうが、稲穂が倒れてしまえば、

あわててこれを刈り入れたのではないだろうか?

もし稲穂が水に濡れていたとしても、すぐに引き上げ、

天日で干して乾かせば、腐ったりすることはないだろう。

米の品質は落ちるだろうが、充分に食べることはできるはずだ。

もちろん、風のあたり方によっては、全く稲が倒れない水田もあるだろう。

ちょうど山や林の陰になっていて、強風が遮られていた場合は、

稲穂は強風の影響を受けることもなく、シャンとしているはずだ。

台風が来て、稲穂が倒れた水田と、倒れなかった水田。

きっちりと明暗が分かれている。

台風によって、毎回、稲の倒れる水田もあるだろう。

あるいは毎回、影響を受けない水田もあるだろう。

風向きによって、影響を受ける場合、受けない場合がある水田もあるだろう。

これによって、あわてて刈り入れる水田と、そのまま稲穂を実らせる水田。

はっきりと区分けされることになる。

かつて言われた「野分」とは、このことを指していたのではないだろうか。

暴風雨が来ることによって、一面に広がる水田が、

稲の倒れた水田と、無事な水田に分けられてしまう。

いわば「野」が、くっきりと「分」けられてしまう。

ここから「野分」と呼ばれることになったのではないか?

従来の、「野の草を分ける」というものよりは、説得力があると思う。

日本全国を吹き荒れた、「野分」こと台風19号。

うちでは水田を作っていないので、稲が倒れるという被害は出なかった。

が、かわりに畑に植わっているキクイモが折れてしまった。

8月から台風が来るたびに、1本倒れ、1本折れ、

そして今回の台風で、最後の1本が折れてしまった。

すでに花も散って、枯れ始めている状況だったので、

地下にはそこそこの大きさのイモが育っているかもしれない。

倒れた稲の刈り取りではないが、倒れたイモの収穫にかからねばならない。

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