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ブラックバス

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自分の住んでいる地域では視聴できないのだが、
最近、「池の水を抜く」という番組が流行っているらしい。

大体の所は池の水を抜き、たまったヘドロやゴミなどを取り除き、
池をキレイにするというのが目的のようなのだが、
この番組の最大の見所は、池の水を抜く際に発見される
様々な水棲生物にある。
昆虫、両生類、貝等々……。
しかし、そんな中にあって、もっとも視聴者を惹き付けるのは、
やはり多種多様な魚類では無いだろうか?

コイフナは当たり前として、ナマズライギョ、モツゴ、タナゴ
などといった昔から馴染みのある魚類もいれば、
ブラックバスやブルーギル、ティラピアやアリゲーターガーなど、
いわゆる外来種の魚類も相当数捕獲されるようだ。
これらの番組のやり方を見ている限りでは、
もともと日本に生息していた種、いわゆる「在来種」については池に戻し、
もともと日本にはいなかった種、つまり「外来種」は池に戻さないというのが
そのスタイルの様である。
池に戻されなかった魚類はその後どうなるのか?
その点についてはほとんど、というか全くといっていいほど
触れられていない。
殺処分せずにどこかの河川に放すのでは、そこの生態系を壊すだけだし、
だからといって外来種だけを水族館のような所で飼い続けるというのも
現実的な解決策とは言い難い。
あの捕獲された外来種達はその後……、と考えると、
あれはあれで、なかなか恐ろしい番組の様に思えてくる。

さて、今回取り上げる「ブラックバス」という魚は、
この「外来魚」という問題の代表のような魚である。

日本では「ブラックバス」といえば「ラージマウスバス」、
いわゆる「オオクチバス(大口バスの意味だろう)」が一般的であるが、
本来的にいえば、10種ほどあるバス類全般を指した言葉であって
特定の種を指した言葉ではない。
名前に「ブラック」とついているものの、我々日本人のイメージする
「ブラックバス」、つまり「ラージマウスバス」の体色は緑色で、
ここの点は全く矛盾しているといえる。
まあ、それもそのはずで、本来、「ブラックバス」というのは
体の黒い幼魚期の「スモールマウスバス」を指していた言葉らしい。

淡水魚、海水魚という違いはあるものの、バス類はスズキの仲間で、
その顔つきなどは非常に良く似通っている。
(スズキは英語で「Sea Bass」、つまり海のバスと呼ばれる)
成魚の体長はもっとも大きくなるフロリダバスで80cmほど、
重量は10kgをオーバーする。
(現在、世界一大きなブラックバスとして登録されているのは、
 2009年、琵琶湖で釣り上げられた体長73.5cm、
 重量10.12kgのブラックバスである。
 このデータを見た人の中には、世界最大と言うわりには
 体長が小さくない?と思われる人もいるだろうが、
 世界基準では体長よりも重量が重視されるため、
 記録の上では10.12kgという数字の方が重要なのである。
 この2009年に釣り上げられたバスは、腹回りがまるまると太った
 人間でいうメタボ体型のバスであった)

原産地は北米で、ルアーフィッシングの対象魚として、
さらには食用魚として高い人気を誇っている。
日本には1925年、実業家の赤星鉄馬という人物が
アメリカのカリフォルニア州からラージマウスバスを持ち帰り、
箱根の芦ノ湖に90匹ほどを放流したのが最初とされている。
これは食用、釣り用として養殖の簡単な魚であることから、
キチンと政府の許可を得ての放流であった。
この後、1930年代に入り、長崎県、山梨県、東京都、群馬県、
兵庫県などへと移植されていった。
戦後、進駐軍によってさらにこれが拡散されたが、
こちらは養殖や食用目的のものではなく、
彼らのゲームフィッシング用の移植であったらしい。
1970年代に入ると、ブラックバスの魚食性の高さが
問題視されるようになる。
生態系、及び漁業への被害が目につくようになってきた、ということだろう。
このころには漁業調整規則で無許可の放流が禁止されるようになったが、
その後も人為的な放流は続き、ブラックバスはその生息域を
全国へと広げていく。
1979年には40府県、1983年には45都府県で
ブラックバスの生息が確認されている。

すでにブラックバスの生態系への影響も大きく取り上げられていた1988年、
ラージマウスバスよりも大型化する種であるフロリダバスが
奈良県の池原ダムに放流される。
さらに1990年代はじめ、福島県檜原湖において
スモールマウスバスが確認された。
このスモールマウスバスも、1925年にラージマウスバスと同様に
日本へと持ち込まれていたものだったのだが、
どうやら日本では定着しない、と考えられていたらしい。
それがどういうわけか、60年以上の時を越えて確認されたわけだ。
ひょっとすると、1925年の分とは全く別に
日本へと持ち込まれたものなのかも知れない。

ブラックバス移入の当初の目的が、食用と釣り用であったことは
先に書いた。
ただ、日本では、これがただ釣り用としてのみ受け入れられ、
本来の目的の1つであった食用という点では、全く用いられていない。
琵琶湖の周辺などの一部の地域では、ブラックバスを調理して
これを提供している所もあるようだが、
日本全国を広く見回してみた場合、食用としての市場は
全くのゼロと言い切ってもいい状況である。
ゲームフィッシングの対象魚として大いに釣られている魚なので、
もうちょっと食用として用いられていてもいいと思うのだが、
ブラックバスを食べている人というのは、極めて少数派のようである。
実際にブラックバスを釣って食べてみたという話は、
ネット上ではいくつも見ることが出来る。
それらの意見を集めてみると、概ね白身のあっさりとした味わいで
美味であるという点が共通している。
スズキの仲間だけあって、やはりこれに近い味わいらしい。
ただ、皮の部分と脂の部分には独特の臭みがあり、
ここの部分だけはしっかりと取り除いて調理する必要があるようだ。
(魚の皮部分というのも脂のついている部分なので、
 要は「脂の部分に臭いがある」と覚えておけばいい)
もちろん、淡水魚であるので寄生虫の心配もあり、
食べる際にはキッチリと火を通して食べるのがいい。

ブラックバスを食べたい、となったとき、
やはり一番簡単なのは、そこら辺の池や川で釣ってきて
これを調理して食べるという方法だろう。
ただ、
「ブラックバスを生きたまま移動させてはならない」
というルールが決められているので、
釣ったその場で魚を〆て、持ち帰る必要がある。
コイやナマズなどのようにキレイな水の中にいれておいて、
臭みを抜いてから調理するという方法が使えないわけだ。
(ブラックバスはコイやナマズほど泥臭くないので、
 キレイな水に入れておいても、それほど効果がないという人もいる)

場所によっては、
「釣り上げたブラックバスを水の中に戻してはいけない」
なんていうルールを定めている所もあり、
こういう場合は、食用に適さない小さなサイズでも持ち帰るか、
回収ボックスなどの中に放り込むしかない。

釣り人としては、心の痛むルールである。

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