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白菜

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先日、市内の農道を自転車で走っていると、
畑で白菜が縛られていた。
ぽってりとしたボディのやや真ん中上辺りを、
藁製の縄で縛ってあったのだ。

「ん?」と思う人もいるだろう。
自分もそう思った口だ。
うちでも昔、婆さんが畑で白菜を栽培していたが、
白菜を縛っているのは見たことがない。
ミョーなことをしているなーと思い、
家に帰ってネットで調べてみると、
白菜の中に霜がおりて、痛むのを防ぐためらしい。
……。
しかし思い起こしてみれば、
うちの婆さんの作っていた白菜は、
一度も縛られたりしていなかったが、
中が痛んでいたことなどなかった。
どうやら品種によっては、しっかり結球するため
白菜を縛らなくてもいいらしい。
婆さんが作っていたのは、
そういう品種だったのかもしれない。

白菜はアブラナ科アブラナ属の二年生植物だ。
二年生植物というのは、芽が出てから成長し、
種子が採れるようになるまでに、2年かかる植物のことだ。
我々は白菜が食べれるようになると、
すぐに収穫してしまっているが、
アレをあのまま放っておいても、年内は種子が採れない。
さらにもう1年、植えておかないと
白菜のタネは採取できないという、珍しい植物なのだ。
ちなみに白菜を収穫しないで放っておくと、
まるで菜の花のような花が咲く。
これは白菜が、菜の花と同じ
アブラナ科の植物だからだ。

白菜が日本に本格的に伝わったのは明治時代で、
それ以前にも、日本に持ち込まれてはいたが、
栽培が難しく(雑種が生まれやすく、
種を維持できなかった)、定着はしなかった。
日本に馴染んでいる野菜であるため、
古くから食べられているように錯覚されがちだが、
現在のように一般的に食べられるようになったのは、
昭和に入ってからのことである。
だから、江戸時代劇で鍋の具材に白菜が入っていたり、
白菜の漬け物を食べたりしていれば、
これは重大な時代考証のミス、ということになる。
もちろん、明治・大正時代においても
一般的でなかったことは確かなので、
この時代の映画・ドラマに白菜が登場していても、
かなり無理のある設定だといわざるを得ない。

原産地は中国であるが、
もともと「白菜」という野菜が存在していたわけではなく、
7世紀ごろにカブとチンゲンサイが交雑して、誕生した。
当初は結球性が弱く、
ほとんど結球することはなかったようだが、
16~18世紀にかけて結球するものが現れ、
これが日本に持ち込まれた。

極めて水分量の多い野菜で、
重量比では、じつに95%以上が水分である。
これはキュウリの水分量と、ほぼかわらない。
カロリーでいえば、キュウリを下回っている。
実に低カロリーな野菜なのである。
栄養的には食物繊維やミネラルが豊富で、
ビタミンCも多い。
ただ、ビタミンCは熱に弱いので、
鍋料理や炒め物などに使った場合は、
その摂取は期待できない。
ビタミンCを摂取したい場合、
日本では漬け物で食べるしかない。
(海外ではサラダなどでも、食べられている)
抗がん作用のあるイソチオシアネートを豊富に含み、
がん予防に効果的である他、
塩分の体外排出を促す働きのある、
カリウムも豊富なので、高血圧にも効果がある。

この時期、畑に植わっている白菜は霜にやられ、
ひどく傷んだ姿をしていることが多いが、
実はこれは、外面だけのことで、
霜に当たっていない内部は、全く無事である。
白菜は結球しているため、
中にいくつもの空気の層を持っており、
この空気の層が寒さから本体を守る役割をする。
最初に書いた、縛られている白菜というのは、
霜が白菜の内部に
入っていかないようにするためのもので、
11月下旬ごろから縛ることが多い。
もし霜が白菜の中に降りてしまうと、
水分を多く含んでいる白菜は凍ってしまい、
葉が枯れる「霜枯れ」が起こる。
白菜を縛っているのは、この「霜枯れ」を防ぐためで、
外側の葉はどうしても霜に触れてしまうため、
一見すると白菜が傷んでいるような状態になる。
なら、霜が降りる前に
白菜を収穫してしまえばいいじゃないかと
思ってしまうが、実は白菜はこの寒さの中で
デンプンを蔗糖に変える。
つまり、甘く美味しくなるわけだ。

畑の中で縛られ、無惨な姿をさらしている白菜。
一見、畑に残った出来損ないのようにも見えるが、
その悲惨な外見の内側では、
寒さによって味わいを増した極上の白菜が
眠っているのである。

我が家では、婆さんの作った白菜は、
煮物になるか、漬け物になるかであった。
クリーム色をしたプラスチック製の漬け物樽に、
2~3樽も漬け込まれる白菜。
バカみたいに塩が効いていて、
小さく刻まれた1片でも、ガンガンご飯が進んだが、
婆さんはさらに醤油と七味唐辛子をまぶして食べていた。
今考えれば、恐ろしいほどに
塩分過多だったのではないか?

しかし、そんな食生活を続けていた婆さんは、
何一つ大きな病気にかかる事なく、
もうすぐ齢100に手をかけようとしている。

ひょっとしてこれも、白菜の栄養効果なのだろうか?

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