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ネギ

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薬味というものが、日本以外にもあるのかどうかは分からないが、
とにかく、日本にはたくさんの薬味がある。

そばうどんをツユにつけていただこうか、というときには
小皿の上に3~4種類の薬味がついてくるのが当たり前だし、
豆腐を冷や奴で食べようか、というときにも、
何種類かの薬味を用いるのが当たり前になっている。
魚を生で食べようか、というときにも薬味は必須だし、
肉を焼いて食べようか、というときでさえ、薬味をつけることがある。

「薬味」という言葉を国語辞典でひいてみると、

薬味……1 食物に添える香辛料
    2 薬品

と、2通りの意味が紹介してあるのだが、
現在、日本で「薬味」ということになると、
1の意味を指すことがほとんどである。

日本には、それこそ多種多様な「薬味」が存在しているが、
それらの中で、もっともよく使われているものは?ということになると、
やはりこれは「ネギ」ということになるのではないだろうか?
そばやうどんでは、もり・かけを問わず、薬味として用いられるし、
冷や奴などでも、豆腐の上にまぶされることは多い。
刺身などでは、直接ネギを薬味にということは少ないものの、
寿司ということになると、にぎり寿司の上に
薬味としてトッピングされているということも、珍しいことではない。
日本の様々な料理の上に、小口に刻まれたネギを散らすと、
その鮮やかな色彩が、よりいっそう食欲を掻き立てる。
恐るべき使い勝手の良さであり、その万能ぶりは並ぶものがない。

「ネギ」は、ユリ科ネギ属に属する植物だ。
ユリ科と書いたが、分類によってはネギ科、ヒガンバナ科に
分類されることもあるらしい。
一般的に、関東は白ネギ、関西は青ネギ、という風に言われてきたが、
現在では流通網の発達によって、両種共に日本中に行き渡り、
このような好みの違いというのは、無くなってきているようである。
(調べてみた中には、現在では関東で青ネギを好み、
 関西では白ネギを好むという逆転現象が起きているというものもあった)
白ネギというのは、ネギを育てる際に土寄せをして、
陽に当たらない部分=白い部分が長くなるように育てたもので、
青ネギというのは、この土寄せを行なわないため、
陽に当たっている部分=青い部分が長くなっている。
白ネギの代表的な品種としては、加賀ネギ、千住ネギ、下仁田ネギ、
曲がりネギなど、青ネギの代表的な品種としては、京都発祥の九条ネギ、
万能ネギ、やっこネギ、ワケネギなどがある。
なお、関東で白ネギ、関西で青ネギが盛んだった理由として、
関東の土壌は粘りが少ない土質で土寄せが容易であったため、
逆に関西の土壌は粘りが強く、土寄せが大変だったからという説がある。

ネギは世界的に見ると、主に北半球に分布しており、
約300種ほどの品種がある。
原産地は、中国の西部から中央アジア北部辺りといわれていて、
中央アジアの高山地帯には、野生のネギが多く自生している。
これらが有史以前から中国へと伝わり、栽培されてきた。
華北・東北地方では、ネギの白い部分を利用する太ネギが、
華南・南洋地方には、青い葉の部分を利用する葉ネギが栽培されており、
ちょうどその中間辺りでは、万能型の兼用種も栽培されていた。
文献に「ネギ」が登場してくるのも、
紀元前に書かれた「山海経」や「礼記」で、
そこには「葱」の字で登場し、「礼記」にはその調理法も記されている。
中国最古の農書「斉民要術」では、ネギを白く育てるための
土寄せについても記されており、その当時から白ネギが
一般的であったことを示している。
このネギがヨーロッパへと伝わったのは、
16世紀ごろのことと考えられている。
ちょうどそのころの文献に、初めて「ネギ」のことが登場するからだ。
アメリカに伝わったのはさらに遅く、19世紀になってからだ。
もっともアメリカでは現在に至っても、
「ネギ」はほとんど普及していない。

日本に「ネギ」が伝わったのは、8世紀以前のことだと考えられている。
8世紀に編纂された歴史書「日本書紀」の中に、
その名前が登場しているからである。
仁賢天皇6年(491年)の記述に「秋葱」というものがある。
もし、この記述が事実だとすれば、5世紀の末にはすでに
「ネギ」が日本に入ってきていたことになるのだが、
すでに「日本書紀」が記された時代から200年以上も過去のことであり、
その記述にどれほどの信憑性があるのかは、疑わしい。
この後、平安時代に書かれた日本最古の本草学書「本草和名」や、
「延喜式」にも、ネギの説明と栽培方法が記されており、
このころには、広く一般的な野菜になっていたのかも知れない。

我々の生活に根付き、和食とは最早、切り離せないといってもいい「ネギ」。
かつては、うちの婆さんも畑で栽培していたのだが、
それは婆さんの性格を反映してか、やたら大きく太いシロモノで、
刻んで薬味として使うには、あまりにもいかつい「ネギ」であった。
ジャガイモ、大根と、かつて婆さんの作っていた野菜を
作れるようになってきた昨今、今度は「ネギ」に挑戦してみるのも
いいかも知れない。

もちろん、婆さんが作っていた、いかつい「ネギ」ではなく、
もうちょっと薬味に適した感じのものを作りたい。

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