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ちんすこう

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また、沖縄土産をもらった。

前にもらった沖縄土産は、沖縄の地酒「泡盛」で、
そのことについては、今年の2月ごろに取り上げた。
友人が家族旅行で沖縄に行き、そのお土産としてもらったものだ。
ビールか泡盛、どっちの方が良いか?という連絡が来ていたので、
「沖縄らしさ」を重要視して、泡盛を頼んだのだが、
友人連中の中で泡盛を頼んだのは、結局、自分だけであった。
(まあ、それとは別に、ルートビアを1本、
 飲ませてもらったのだが……)

そして今回は、弟夫婦の新婚旅行のお土産である。
3月に結婚した弟が、時期を見て
沖縄に新婚旅行に行くという話は聞いていたのだが、
それに行ってきたらしい。
沖縄で撮った写真をアルバムに収め、
のろけ半分の沖縄旅行の話を聞かせてくれたのだが、
その際、弟が沖縄土産ということで置いていったのが、
沖縄名物の「ちんすこう」と、「沖縄そば」であった。
さすがに弟は、自分と同じく、普段、酒を飲まないので、
お土産にアルコールを、とは考えなかったようである。
もちろん、「沖縄そば」についても興味はあるのだが、
やはり、個人的にお菓子である「ちんすこう」の方に興味がいく。
(今までの自分の書いてきたテーマを見れば、
 存外、お菓子についてのものが多いのは、分かってもらえるだろう)
早速、ということで紙袋から取り出して、手に取ってみた。

パッケージは、1辺10cmほどの正方形で、
箱の厚さは4㎝ほどである。
グリーンとイエロー、2色からなるデザインで、
フタの所には「パインチョコちんすこう」と印刷してあり、
その下には大きく、ノーマルの「ちんすこう」に
黄色いパインチョコをかけている写真が入っている。
どうやら、全くノーマルの「ちんすこう」ではなく、
それにアレンジを加えたものらしい。
「パインチョコ」という辺りが、そこはかとなく、
南国・沖縄っぽさを出している。

箱のフタを開いてみると、中には3個ずつ、
上下2段に個包装された「ちんすこう」が合計で6個、入っている。
さらに個包装された「ちんすこう」の下に1枚のハガキが入っていて、
これをポストに投函すると、
「沖縄お取り寄せカタログ」を無料で送ってきてくれるようだ。
まあ、早い話、
「ウマかったでしょ?もっと食べたいのなら、
 カタログを送ってあげるから、それを見て買ってね」
ということらしい。
宛先が「パイナップル王国」となっていたので、
どうやら「ちんすこう」の専門店(そんなものが、
本当にあるのかは知らないが……)ではなく、
パイナップル製品の専門店が作っている、
オリジナル「ちんすこう」らしい。
1つ、箱の中から取り出して開封してみると、
淡い黄色のチョコレートでコーティングされた
「ちんすこう」が出てきた。
パッと見た感じは、ただの黄色いチョコレートなのだが、
サイズの割には結構軽い。
中に「ちんすこう」が入っているためだろう。
形は「ちんすこう」でお馴染みの、サイドに波模様の入った
スティック状で、全体的に緩やかな丸みを帯びている。
一口齧ってみると、内部はサクサクとした生地で、
軽く心地よい歯ごたえだ。
そこに周りにコーティングされているパインチョコが、
爽やかながらもコクのある甘味を加えて、
ちょっと後を引く味である。
1つだけ食べて、残りはまた後で……と思っていたのだが、
ついつい1つ、もう1つと手を出して、
あっという間に半分ほど食べてしまった。

「ちんすこう」は、沖縄県で作られている伝統的な「焼き菓子」だ。
小麦粉、砂糖、ラードを原材料としており、
これらを練って生地を作り、成型してオーブンで焼き上げれば、
あのサックリとした食感でお馴染みの、「ちんすこう」が出来上がる。
小麦粉・砂糖・油脂を練り合わせた生地を焼いて作るので、
西洋菓子である「クッキー」によく似た仕上がりになる。
(クッキーの場合は、油脂に「バター」を用いることが多い)
そんな類似性から、意外に新しいお菓子なのか?と思ってしまうが、
時代的には400年前、琉球王朝時代から作られていた
長い歴史のある菓子である。

今から400年前、といえば、
西暦では1600年ごろのことになる。
本土の歴史で言えば、長く続いた戦国時代の終焉であり、
ちょうど「関ヶ原の戦い」が起こった年でもある。
歴史に詳しい人ならば、この時代は様々な国の人間が
日本へやってきていたころだと、わかるはずだ。
東南アジア方面から日本への航路の途中に
琉球王国は位置していたため、その時代には沖縄にも
洋の東西を問わず、多くの外国人が訪れていたはずである。
その外国人達は、日本に多くの文化を持ち込んだが、
沖縄にも多くの文化が持ち込まれることとなった。
「ちんすこう」もまた、そういう外国人によって、
沖縄に伝えられたとされているのだが、
ポルトガル、スペイン、中国と、それぞれの国から
伝えられたとする説があり、
そのうちのどれが真実なのかは、定かでない。
ただ、琉球王朝時代の沖縄では、「ちんすこう」は王侯貴族しか
食べることの出来ない、大変貴重な菓子であった。
また、その形状も、今日のような一口大のスティック状ではなく、
丸い菊花状であったといわれている。
現在の「ちんすこう」のサイドに、波形の模様が入っているのは、
ひょっとすれば、そのころの名残なのかも知れない。

琉球王朝の王侯貴族の菓子であった「ちんすこう」が、
一般に販売されるようになったのは、20世紀初頭のことである。
琉球王朝に庖丁人として仕えていた新垣淑規と新垣淑総から、
琉球菓子の作り方を伝授された新垣淑康が、
1908年に沖縄初の菓子司として菓子店を開き、
そこで「ちんすこう」を販売し始めた。
このころの「ちんすこう」は、まだ、琉球王朝時代のもので
サイズも大きく、食べるとボロボロと崩れやすいものだったのだが、
琉球と本土を行き来する者達にとっては、
格好の土産品として重宝がられていた。
恐らくは、焼き菓子であったため軽く、
日持ちする点が良かったのではないだろうか?
この菓子店から分家し、独立した新垣淑扶は、
それまでの「ちんすこう」を改良し、
現在の様な一口大のスティック状にし、
さらに製造過程のオートメーション化を進めて、
大量生産を可能にした。
さらにビニールパッケージに小分けにするという方法を取り入れ、
現在のスタイルの「ちんすこう」を確立することになった。

20世紀の末に、チョコレートで「ちんすこう」をコーティングした
「ちんすこうショコラ」が発売されたのをきっかけに、
様々なバリエーションの「ちんすこう」が作られるようになった。
現在ではチーズ味、紅イモ味、パイナップル味、塩味など、
様々な「ちんすこう」が販売されている。

さて、ここまで気軽に「ちんすこう」と書いてきたが、
よくよく考えてみれば、これはちょっと意味の分からない名前だ。
中には「ちんすこう」の響きから、
不埒な想像を働かせる輩もいるのだが、
もちろん、この名前には、そのような不埒な意味は全く無い。
(中には、それを逆手に取った商品もあるようだが……)
沖縄の言葉では「すこう」というのは「菓子」を意味しており、
「ちんすこう」とは、「ちん」なる「菓子」ということになる。
問題はこの「ちん」だ。
この「ちん」については、「珍」から来ているという説と、
「金」から来ているという説の2つがある。
意味的に言えば、「珍しい菓子」か「高価な菓子」となる。
琉球王朝の王侯貴族しか食べられなかった、という来歴から考えれば、
「珍」とも「金」とも受け取ることが出来る。
正直、これに関しては、どこまで行っても答えは出そうにない。

よく「貰っても微妙なお土産」なんていう、不遜なランキングがあり、
残念なことに「ちんすこう」も、
このランキングに入っていることがある。
確かに、小麦粉・砂糖・油脂で作られた焼き菓子である
「ちんすこう」は、現在では、似たようなものをいくらでも
スーパーの菓子売り場などで買うことが出来、
沖縄ならではの珍しさも、それほど感じることは出来ない。
クッキーなどがまだ珍しかった100年前ならばともかく、
様々なクッキー、ビスケット等が一般的になった現代では、
それほどありがたみを感じることも、少ないかも知れない。
だが、逆に言えばそれは、それだけ「ちんすこう」が、
時代を先取りしたお菓子だった、ということでもある。

まあ、結局、もらった「ちんすこう」を
あっという間に平らげた自分から言えるのは、
充分以上に美味しい、安心感のあるお菓子であるということだ。
この辺が、「定番」菓子の「定番」たる由縁であろう。

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