雑学、雑感、切れ味鋭く、思いのままに。

Falx blog 2

植物 雑感、考察 食べ物

連作障害

投稿日:

ちょうど、3月の中程くらいに
畑から大根を全て取り払い、春の植え付けの準備を始めた。

畝を深く掘り起こして、土の中に
雑草や木の葉で出来た大量の「腐葉土」を混ぜ込み、
さらにそこに鶏糞を混ぜ込んで、しばらく放置しておいた。
この「腐葉土」というのは、家の庭に生えてきた雑草や
落ち葉などをかき集めて積み上げ、半年ほど放置して作り上げた
自家製のものである。
摘み上けられた雑草の、上部分を取り払うと、
微生物などによって分解された、黒い「腐葉土」が姿を現す。
この「腐葉土」の中には、ミミズや、何かの虫の幼虫などが
ウジャウジャと繁殖している。
このミミズや幼虫も含めて、畝の土の中に混ぜ込んだものだから、
畝を整えてしばらくの間は、鳥がやってきて、
やたらに土を掘り返し、これらをついばんでいった。

その状態で半月ほど放置しておいた後、
ホームセンターで買ってきた「ジャガイモ」の種芋を
植え付けていった。
今年は、気候のせいか桜などの開花も遅く、
去年と同じように2月の下旬ごろにジャガイモを植え付けた
友人の所などは、植え付けたジャガイモが発芽せず、
植え付けをやり直すハメになっている。
そういう失敗例を知っていたため、
我が家では植え付けるのを延期して、
去年よりはかなり遅れた植え付けになった。

去年、桜が咲くころに植え付けたジャガイモは、
わずか1週間もしないうちに芽が出始めたのだが、
今年は、ジャガイモの芽吹きも遅く、
しっかりと芽吹き始めたのが2週間ほどたってからであった。
これまでに何度も書いているが、我が家の畑は狭く、
ちょうど1kg入りの種芋があれば、畑一杯に植え付けることが出来る。
去年と全く同じ場所に、去年と全く同じように、
ジャガイモを植え付けることが出来たのである。

さて、ここまでを読んで、自分の今年のジャガイモ栽培に
不吉な影を感じている人は、結構優秀なファーマーである。
そう。
先ほど自分は、去年と全く同じ場所に、去年と全く同じように、
ジャガイモを植え付けた、と書いた。
一応、冬場に同じ場所で「大根」を栽培したとはいえ、
時間的にいえば、1年前と同じ作物を「連作」していることになる。
「ジャガイモ」と「連作」とくれば、
すぐに思い浮かぶのが、「連作障害」という言葉である。

連作に起因する何らかの理由(主に土壌的なもの)により、
作物が次第に生育不良になっていく現象が「連作障害」である。
忌地、厭地、いや地(いずれも読みは「いやち」)ともいう。
その原因を大別すると、大きく3つに分けられる。
「土壌病害」「線虫害」「生理障害」である。
それぞれについて、個別に見ていこう。

土の中には、多くの微生物が生息しており、
この中には病気を引き起こす「病原菌」も存在している。
一方、植物は根から微生物のエサとなる有機酸や糖、
アミノ酸などを分泌している。
同じ科の植物は、似た物質を分泌することが多いため、
同じ植物、あるいは同じ科の植物を連作していると、
土の中に分泌される物質が著しく偏ることになり、
その結果として、土中に集まってくる微生物にも
偏りが生じるようになる。
そうなると、土中における生物の多様性が薄れてしまい、
場合によっては、特定の「病原菌」が一気に増えてしまうことになる。
当然、その「病原菌」による病気が発生しやすくなるため、
それによって収穫量は落ち込んでいくことになる。
これが、いわゆる「土壌病害」である。

さらに土中の成分の偏りは、「病原菌」のみならず、
「線虫」と呼ばれる生物のバランスも偏らせることになる。
もともと「線虫」には、作物に害を成す悪玉線虫と、
これらの悪玉線虫を食べてしまう善玉線虫がいるのだが、
連作によって土中の環境が変わると、
これら「線虫」のバランスも崩れてしまい、
結果として「線虫害」が起きやすくなるのである。

「土壌病害」と「線虫害」は、野菜自身とは関係のない、
いわば野菜にとっての「外敵」によるものだったのだが、
3つ目の「生理障害」は、これらとは違い、
野菜そのものの成長に起きる障害である。
そもそも野菜が必要とする成分は、
種類ごとによって大きく異なっている。
そのため、連作をしていると、土中の特定の成分が不足したり、
逆に過剰になったりすることになる。
当然、成長するのに必要となる成分が不足してしまえば、
野菜がまともに育たない、ということになる。
人間だって、バランスの欠いた食生活を続けていると
体の調子はおかしくなり、病気にかかりやすくなる。
これは、人間も野菜も同じことである。

では、この「連作障害」を起こさないようにするためには、
どうすればいいのだろうか?

実は、この「連作障害」を避けるための、いくつかの方法がある。

そのうち、もっともシンプルな方法が「輪作」である。
早い話、毎年同じ場所で、同じ科の植物を作る「連作」をするために
「連作障害」が起きるのであるのなら、
毎年、同じ場所で同じ科の植物を作らなければいいのである。
次々と別の科の植物を作るようにしていき、
同じ科の植物は、何年かおきにしか作らないようにすれば、
基本的に「連作障害」など起こりようがない。
ただ、これを行なうのであれば、
毎年、同じ作物が穫れないということになる。
ある程度の広さのある土地であれば、スペースを区切って
作付けの場所を年ごとに代えていくことが出来るが、
狭い土地では、毎年、同じ作物は収穫できないという
大きなデメリットがある。
野菜の中には、6~7年も待たなければ
土の状況が回復しないものもあり、
そういう野菜を作れるのも、
6~7年に1度だけということになってしまう。

違う野菜を順番に作る「輪作」を、
同時進行で行なってしまおうというのが、「間作・混植」である。
早い話、色んな科の野菜を交互に植え付け、
同時に栽培することにより
土中の栄養の偏りを少なくしようというものである。
植物の中には、近くに植えることで
お互いの生育に良い影響を与えるものもあり、
こういう関係を持った植物を「コンパニオンプランツ」と呼んでいる。
ただ、この方法では、畑の状況が
かなり混沌としたものになってしまう可能性が高い。
また、別種の野菜を同時進行で栽培するため、
ある程度の農業技術も必要となってくる。

「輪作」の一種になるのだが、畑栽培と水田栽培を
交互に行なうという方法もある。
「病原菌」や「線虫」などは、水の中で生息できないものが多く、
定期的に農地に水を張ることによって、
これらを処理することが出来る。
もっとも、この方法を使えるのは、もともと「水田」として
活用することの出来る場所だけである。
方法は少し違ってくるが、薬剤や太陽光を利用して
土壌を「消毒」する方法がある。
土壌の表面を黒い「マルチ」で覆ってしまうことで、
土壌の温度が上がり「病原菌」や「線虫」を駆除することが出来る。

土壌に完熟堆肥などの有機物を投入することにより、
土壌中の有用微生物の密度を高め、
微量要素の補給を行なうことが出来る。
早い話、栄養たっぷりのものを土に混ぜ込み、
足りなくなっているもろもろの成分を、補充しようというものだ。
一見有効そうに思えるが、足りなくなっている成分と
補充した成分のバランスがとれていなければ、
問題を完全に解決することは出来ない。

さて、色々と「連作障害」を防ぐ方法を列挙してみた。
農地の広さなど、条件が必要な方法も多く、
狭い我が家の畑で使える方法というのは、かなり少ない。
「輪作」は可能ではあるが、欲しい野菜が作れなくなるし、
「間作・混植」は、自分のような素人には難しい。
そうなると出来そうなのは、マルチで地面を覆って消毒するか、
(薬剤による方法は、基本的に無農薬でやるという方針に反する)
有機物を投入するか、である。
そう。
自分が行なった、雑草や落ち葉で作った「腐葉土」を
畝の中に混ぜ込んだのが、ちょうどこれにあたる。
ミミズなどが大量に発生している所を見ても、
それなりに栄養豊富なものに仕上がっているはずなので、
うまくいけば、これが「連作障害」を防いでくれるはず……なのだ。

果たして、自分の「連作障害」対策は功を成すのか?
それはまた、収穫の際に報告したいと考えている。

Related Articles:

にほんブログ村 その他生活ブログ 雑学・豆知識へ
にほんブログ村

スポンサーリンク
スポンサーリンク

-植物, 雑感、考察, 食べ物

Copyright© Falx blog 2 , 2024 All Rights Reserved Powered by STINGER.