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ジャガイモ

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日本は芋の種類に恵まれている。

スーパーなどに行けば、それこそ何種類もの芋が、
常時店頭に並んでいる。

赤紫色のサツマイモ。
黒ずんだ里芋。
ひょろ長い長芋。
季節のものとしては、つくね芋やイチョウ芋、
ジネンジョなどがある。

しかしこれらの芋を抑え、圧倒的な数で
売り場に並んでいるのが「ジャガイモ」である。
いかにジャガイモが、
我々の食卓に入り込んでいるかがわかる。
他の芋が無くなったとしても、
我々の食生活に、あまり影響はないだろうが、
ジャガイモが無くなってしまったら、
我々の食生活は、大きく様変わりするだろう。
それほどに「ジャガイモ」というのは、
我々日本人の食生活とは、
切っても切れない関係になっている。

ジャガイモは、ナス科ナス目の多年生草本である。
え?ジャガイモってイモ科の植物じゃないの?
と思われる人も多いかもしれないが、
実は分類上では、ナス科に属している。
ナス科のナス属には、その名の通りのナスやジャガイモ、
さらにはトマトなども含まれている。
里芋などは、サトイモ科の植物だし、
ジネンジョなどは、ヤマノイモ科の植物だ。
サツマイモだってヒルガオ科ではあるが、
サツマイモ属に属している。
芋の中で、もっとも生産量の多いジャガイモが、
分類上では全くイモの名を冠していないというのは、
なんとも不思議な感じがする。

主に地下茎の肥大した部分(塊茎)を食用にし、
この部分だけをさして「ジャガイモ」ということも多い。
食料として、多くの国で食べられているが、
デンプンなどの原料として、
加工用にもかなりの量が使用されている。
日本では、食用とされるものが25%、
加工食品用に使われるのが35%、
デンプンに加工されるものが30%、
残りの10%は種芋用となっている。
もちろん、デンプンとして加工されたものが、
食品に添加されることを考えれば、
生産されたジャガイモのほとんどが、
食用となっていることになる。

原産地は南米ペルーの高山地帯で、
チチカカ湖付近ではないかといわれている。
これがヨーロッパに伝えられたのが、
15世紀から16世紀にかけてのことで、
南米ではインカ帝国が栄えていた時代である。
永らく、インカ帝国の主食は
トウモロコシだったと考えられていたが、
近年では、ジャガイモが主食だったのではないかと、
考えられ始めている。
当時のヨーロッパには、
「イモ」というものが存在しておらず、
最初期には地中のイモを食べず、
茎や葉を食べる、などということもあったらしい。
ジャガイモは、麦などに比べても生産性が高く、
寒冷地などでもよく育つことから、
農家などで、主食とされるようになっていく。
当時の支配者階級にしても、
農民達にジャガイモを食べさせておけば、
その分だけ麦を取り立てることが出来るので、
ジャガイモの栽培を推奨した。
そのため、農民達は急速にその食を
ジャガイモに依存するようになっていった。

しかし1845年、ヨーロッパの全域で
ジャガイモの疫病が大流行し、
ジャガイモ栽培は壊滅的な被害を受けた。
この疫病は1849年までの4年間、猛威を振るい、
ヨーロッパではジャガイモ飢饉が起こる。
ジャガイモに食を依存していた農民達の被害は大きく、
このジャガイモ飢饉によって、
アイルランドでは100万人以上の餓死者が出た。
また人口の流出も激しくなり、
この時期に、実に200万人もの農民が、
アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリアなどへと
移住していった。
さらにこの飢饉のため、婚姻や出産が激減し、
人口が最盛期の約半分にまで落ち込むこととなった。
アイルランドでは、歴史を飢饉前と飢饉後に分けるほどに、
歴史的な大事件であった。

日本には、戦国末期から江戸時代初期ごろに、
南蛮人によって持ち込まれた。
ただ、このとき持ち込まれたジャガイモは、
栽培作物として定着することはなく、
日本でジャガイモ栽培が始まるのは18世紀末、
ロシア人の影響によって、北海道・東北で
栽培され始めたのが最初である。
サツマイモと同じように、一種の飢饉用の作物として、
各地で栽培が奨励された。
日本においては、1年のうちに2~3回
収穫することが出来るので、
「二度イモ」、「三度イモ」などと呼ばれた。
「二度イモ」「三度イモ」と並べて書くと、
全く別種のイモか?と考えてしまいそうだが、
実際には、どちらも同じ「ジャガイモ」をさしている。
また、飢饉時においては、人を助けることになるので、
「お助けイモ」などという呼ばれ方もしたようだ。

しっかりとしたイモの固さからは、
想像できないかもしれないが、
ジャガイモは重量比で、
ほぼ80%ほどの水分を持っている。
これはジネンジョなどの、トロロにするイモよりも
水分含有量が多い。
また栄養素としては、ビタミンCを豊富に含んでおり、
これがデンプンに保護されているため、
加熱してもビタミンCが破壊されることがない。
反面、カロリー的には米などの半分ほどしかない。
カロリー摂取という、食事本来の目的から考えてみれば、
主食とするには、やや非効率的な食品であるともいえる。
逆にいえば、ダイエットなどを考えている人間にとっては、
満腹感の割に摂取カロリーの低い、
理想的な食品であるともいえる。
カリウムも豊富に含まれており、
重量比での含有量は、バナナを上回っている。
カリウムは体内の塩分を排泄させるので、
高血圧などの予防、改善に効果がある。

だが、ジャガイモの芽にはかなり強い毒素が含まれている。
これは「ソラニン」と呼ばれる、有毒なアルカロイドで、
嘔吐や腹痛などの中毒症状を引き起こす。
滅多にないことではあるが、
ジャガイモの芽を大量に食べたために、
死に至ったケースもある。
保管しているうちに芽が生えてきた場合、
これらをきっちりと取り除いてから、調理しよう。
と、いうよりは、芽が出るまで放置したりせず、
早め早めに食べることを心がけよう。

かつて我が家で、婆さんが畑を作っていたころ、
それこそ大きな段ボール箱に、
数箱分のジャガイモが収穫できた。
当然、これを光に当てないようにして、
納屋の中などに保管しておくのだが、
何ヶ月かすれば、中のイモは一斉に芽吹き、
料理に使う際には、
これらを全て取り除かなければならなかった。
芽が大きくないうちは、
それだけでもよかったのだが、
芽がある程度育ってくると、
イモの方がブヨブヨに柔らかくなってくる。
恐らく芽の方に、栄養を取られすぎたのだろう。
この柔らかくなりかけているイモを、
まだ大丈夫、まだ大丈夫、といいながら料理していた。
果たしてアレは、本当に大丈夫だったのだろうか?

今となってはその辺りのことは闇の中だが、
幸い、何事も起こらず、現在に至っている。

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