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シメサバ

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先だっての夜、買い物のためにスーパーマーケットによると
鮮魚コーナーの片隅で、「シメサバ」が50円で販売されていた。

肉、魚、野菜や、弁当などの総菜類は、
閉店間近になると、値引き販売されていることが多いが、
それにしたって「シメサバ」1つ(半身)が50円は安すぎである。
そこいらのスーパーでは、半身をパッケージしたものが
300〜400円ほどの値段で販売されていることを考えれば、
この50円という価格が、いかに破格であるかが分かるだろう。
切り身の状態で冷凍販売されているサバでさえ、
4枚入りで400円ほどするのだ。
これを解凍して、塩をして、酢に漬け込んだものが
それなりの値段になるのは、当たり前のことで、
いかに値引き販売をしているといえども、
これが1つ100円を切るというのであれば、
これは、ほぼ捨て値であると考えて間違いはあるまい。

はたして、これがちゃんとした「シメサバ」であるのかどうかは
判断しかねるが、パッケージを見る限りでは
ややサイズは小さいものの、ちゃんとした「シメサバ」のようである。
とりあえず1つ買ってみることにして、カゴの中に放り込んだ。

翌朝、この「シメサバ」をパッケージから取り出して
まな板の上に置いた。
パッケージの中では、薄い発泡スチロールの板に
貼り付けられるようにして入れられていたが、
この発泡スチロールの板ごとまな板の上にのせて、
包丁でひとくちサイズに切り分けていった。
実際にパッケージから取り出してみると、
思った以上に、身に厚みが無い。
テレビなどで見るサバはまるまると太り、
その半身は、丸く盛り上がったカマボコ型をしているものだが、
この「シメサバ」の身は非常に薄っぺらで、
サバというよりは、サワラの身でも見ているような感じである。
薄っぺらではあるものの、しっかりと酢に浸かり身が締まっていて、
包丁を入れるのも、それほど難しくない。
半身を全て一口大に切り分けた後、これを丼飯の上にのせて、
彩りに大葉の細切りを添えた。
しっかりと酢の効いた「シメサバ」は食欲をそそり、
あっという間に丼飯を平らげてしまった。

「シメサバ」は、サバの身を酢締めにしたものである。
サバだけでなく、魚を酢締めにしたものを
一般的には「きずし(生寿司)」と呼ぶので、
この「シメサバ」も、「きずし」の一種である。
「きずし」に使われる魚としては、ここで取り上げたサバの他にも
サワラ、アジ、タイなどがある。
地域的な呼び方に留意するのであれば、
概ね西日本では「きずし」、
東日本では「シメサバ」と呼ぶことが多いようだ。
それだけ、東日本ではサバを多く食べていた、ということだろうか?
これらの味付けに関しては、
西日本の「きずし」は、東日本の「シメサバ」よりも浸かりが深く、
何も調味料を用いず、そのまま食べるのが一般的なのだが、
東日本の「シメサバ」は、ワサビ醤油や生姜醤油などで
食べられることが多い。
そういう意味では、西日本の味付けが、
東日本の「それ」よりも濃いという、味付けの逆転現象が起きている。
酢締めのサバを使った寿司にしても、
西日本の「バッテラ」では、そのまま食し、
東日本の「サバ寿司」では、醤油をつけて食べることが
一般的になっている。

加工方法としては、サバの頭と内蔵を取り除いて3枚に下ろし、
身に塩をふってしばらく放置、一晩程度漬け込んだ後、
塩を洗い流して酢に浸け直す。
酢に漬け込む行程は、人によってまちまちで、
短いものだと30分、長いものだと丸2日というのもある。
もちろん、長く漬け込めば漬け込むほど、身肉は白く変色し、
酸味の効いた味わいになる。
逆に短い漬け込み時間だと、変色するのは外側だけで、
身肉の中心部分には、鮮やかな赤い色を残しているものもある。
ただ、スーパーなどで加工品として販売されている
「シメサバ」の多くは、保存性を高める意味からも
しっかりと長時間酢に漬け込まれていることが多く、
どちらかといえば、関西風の味付けになっているものが多い。
中心部に酢の沁みていない赤い部分を残している
「シメサバ」を食べたい場合、店で加工品を買って来るよりは、
自分でサバを買って来て、酢で締めるのがいいだろう。
サバにしっかりと脂ののっているような場合、
あまり長時間、酢に漬けすぎてしまうと
酢の酸味によって、脂の旨味を殺してしまうことにもなりかねない。

この「シメサバ」が、いつごろから作り始められていたのか?
ということに関しては、どうもハッキリとしたことが分かっていない。
酢で締めたサバで「サバ寿司」を作る、といえば、
京都のそれが有名であり、日本海から京都まで、
サバを輸送したルートはサバ街道などと呼ばれる。
これは現在の福井県小浜市から、京都まで続く若狭街道の別名で、
実に今から1300年ほども昔から、京都へサバを運んでいたらしい。
小浜市で水揚げされたサバは、即座に塩で締められ、
72kmほどのサバ街道を、1日かけて陸送された。
(2〜3日かかっていた、という話もある。
 冬場辺りは魚が傷みにくい反面、雪などで道中も捗らず、
 余計に時間がかかったとも考えられる)
もちろん、全てを行商人が背負い、徒歩で運ぶのであるから、
かなりキツい道中だったのではないかと、考えられる。
サバの輸送は、ほぼ1年中行なわれていたようだが、
冬場には雪の積もる峠を越えねばならず、
命を落とす者もいたというから、過酷な仕事であった。
行商人によって運ばれるうちに、
塩加減がちょうど良くなるため、京都の庶民を中心に重宝された。

京都で現在のような「サバ寿司」が作られ始めたのは、
江戸時代のことであり、家庭や地域での
ハレの日の特別な食べ物であった。
これが業者によって専門的に作られ始めたのが天明元年(1781年)、
江戸時代の後期に入ってからである。
このことを考えると、京都でサバ寿司が作られ始めたのは、
おおよそ江戸中期ごろのことと考えられ、
サバを酢で締めた「シメサバ」も、
同じころに作られ始めたのではないだろうか。

さて、こうなると、自分でもサバを締めてみたい、
と思う人がいるかも知れない。
しかし、1つだけ気をつけておかなければならないことがある。
寄生虫である。
サバには、アニサキスと呼ばれる寄生虫がついていることがあり、
これが生きたまま体内に入ると、
胃や腸の壁を食い破り穴を開けてしまうことがある。
もちろん、ひどい痛みを伴うのは言うまでもない。
このアニサキス、いる可能性自体はそれほど高くないのだが、
厄介なのは、酢で締めても死なない、という所である。
つまり、新鮮な生のサバで「シメサバ」を作った場合、
それにアニサキスがいた場合、これを殺すことが出来ず、
そのまま腹の中にいれてしまうことになる。
確率は低いし、食べる際に良く噛めば問題ないともいうのだが、
もし万全を期したい、というのであれば、
一度しっかりと冷凍されているサバを買って来て、
これを解凍して作るのがいい。
(アニサキスは、−20度で24時間冷凍しておけば、死んでしまう)

もちろん、より美味しい「シメサバ」を作るために、
生のサバで「シメサバ」を、という気持ちも分からないではないが、
そこはあくまでも自己責任でやってもらいたい。

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