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柚子

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この季節、自転車で走っていると、
各所に植えられている柑橘類の木に、たわわに果実が実っている。

細かい種類までは、はっきりとしないが、
オレンジ色のソフトボール大のもの、野球ボール大のもの、
黄色いソフトボール大のもの、野球ボール大のもの、
これらの果実が1本の木に、これでもか、というほど
大量に実をつけている。

うちの近所の畑の隅でも、何本かの木が植え付けられていて、
現在、それらの木にも果実が大量に実っている。
実っているのはいいのだが、どうも、これらの前を通ってみても、
一向に収穫している気配がない。
いつも木には大量の実がぶら下がっているし、
木の下には、収穫されぬまま落下した実が転がっている。
なんとも、もったいない話である。

と、いっても、木の持ち主の気持ちも、分からないではない。
この手の柑橘類の木は、毎年、恐ろしいほどの数の実をつける。
最初のうちこそ、豊作を喜んでせっせと収穫していても、
同じ種類の柑橘類が、1日10個も収穫があるということになったら、
とてもとても、食べきれるものではない。
最初のうちこそ、近所の人や親戚に配って喜ばれるかも知れないが、
あまりに繰り返して配っていると、こちらの方にも飽きがやってくる。
実がどんどん生産されるものの、
それを食べる人間の消費力は、生産力に全く及ばない。
そうなると、どういうことになるか?
当然、わざわざ収穫するのを止めよう、ということになる。
何、木にぶら下がっている実を放っておいても、
時期がくれば地面に落ちて、土に帰っていくだけで、
とりたてて、問題が起こるわけでもない。
もし、自分たちが食べたくなったら、
大量にぶら下がっている実の中から、
一番出来の良いものを持ち帰って、食べればいいのである。
考えてみれば、これはかなり贅沢な収穫の仕方だが、
それをやった所で、誰に文句を言われる筋合いも無い。

さて、そんな柑橘類の木の中で、この季節、
とりわけ黄色い実をつけている木がある。
今回のテーマである「柚子」の木である。

「柚子」は、ミカン科ミカン属に属する常緑樹である。
その科や属を見ても分かるように、ミカンに近しい種である。
一定以上の古い百科事典で「柚子」を調べてみると、
そこには「→ミカン」と書かれている。
少なくとも数十年前までは、
「柚子」というのは一個の独立した品種ではなく、
あくまでもミカンというものの中の一種として、
認識されていたようである。
本来「柚子」というのは、ホンユズを指している言葉なのだが、
この他にも、小型で早熟性の花ユズというのも存在しており、
一般的には混同され、どちらも「ユズ」と呼ばれている。
ミカン類の中では、もっとも寒さに強い品種で、
東北地方でも栽培が可能である。
実生(接ぎ木をしない育て方)だと、
実をつけ始めるまでに15年ほどかかってしまう。
(接ぎ木をすれば、数年で収穫が可能になる)
その代わり、というわけでもないのだろうが、
木としての寿命は長く、病気にも強い。
「桃栗3年、柿8年、柚子の大バカ18年」という言葉があるように、
かつては実をつけるまでに、20年近い時間がかかっていたようだ。

原産地は中国・揚子江上流域で、日本に持ち込まれたのは、
奈良時代(もしくは飛鳥時代)のこととされている。
当時は薬用として栽培されていたと、古い記録に残っている。
ただ、先に書いたように、これはあくまでもホンユズのことであり、
これと混同されている花ユズは、もともと日本原産であったとされる。
恐らく、野生の「柚子」を使う文化は古来からあったものの、
実の大きなホンユズが中国より持ち込まれ、
次第に栽培種であるこちらの方に、シフトしていったものと思われる。

「柚子」は、平安時代には「ユ」と呼ばれており、
「ユズ」と呼ばれるようになったのは、江戸時代以降のことになる。
「ユ」は、中国語の「柚(ユウ)」に由来し、
「ユズ」も、中国語「柚子(ユウズィ・ユウツ)」に由来している。
「柚」に「子」のついた「柚子」は、
「柚(ユ)の実(ズ)」という意味で、
植物そのものが「ユ」、その果実を「ユズ」というのが、
本来の形となる。
現在では、「ユズ」の呼称で統一されているため、
「柚」と書いて「ユズ」と読ませることもある。
「柚子」から酢を採ることが、古くから行なわれており、
1603年に記された「日葡辞書」にも、
「ユノス(「柚の酢」の意味)」があるため、
「ユズ」の「ス」を「酢」と解釈することもあるが、
韓国でも「柚子(ユジャ)」と言うことから、
「酢」と関連づけるのは、難しいと考えられている。

「柚子」の果汁は、日本料理において、調味料の一種として
香味・酸味を加えるために用いられる。
また、果肉部分だけでなく、皮もまた、香辛料として使われており、
七味唐辛子の中にも加えられている。
皮のみを使った場合、香味と酸味の他に、独特の苦みが加わる。
果汁・皮ともに、完熟した黄色いものの他に、
未熟な青い状態のものも用いられる。
この「柚子」の皮に、トウガラシと塩を混ぜて作られるのが、
九州地方の調味料「柚子胡椒」である。
名前は「胡椒」ということになっているが、
実際に用いられているのはトウガラシで、
未熟な青い皮には青唐辛子、
完熟した黄色い皮には赤唐辛子が用いられる。
さらに「柚子」の実を、砂糖に漬け込んだものを
「柚子茶(ユズチャ)」という。
どうしてこれが「茶」なのかというと、
これをお湯、または水に溶かして飲むためで、
韓国では一般的な飲み物である。
日本で販売されている「柚子茶」の中には、
「柚子」の実を、砂糖、ハチミツなどで煮込んで
作られているものがあるが、
これは本来的には「ジャム」にあたるもので、
「柚子茶」とは別物ということになる。
(ただ、外見的にはどちらも「ジャム」のように見えるし、
 実際に「柚子茶」を「ジャム」のようにパンに塗ったり、
 ヨーグルトなどに加えて食べている人もいる)
もともと日本では、「柚子」が薬として
使われていたことからも分かるように、
この「柚子茶」にも、血行を促進させ、新陳代謝を高める効果があり、
身体を温め、免疫力を向上させる効果がある。

実は最近、知り合いから、この「柚子」をもらった。
ピンポン玉大のものが2つ、サイズが小さいので、
ホンユズではなく、花ユズなのかもしれない。
それでも、手に取ってみると、爽やかな香りが漂ってくる。
もらったはいいのだが、さて、これを一体、
どうやって使ったものかと考え込んでしまった。
ピンポン玉サイズが2つでは、
ジャムなどに加工することは不可能だし、
「柚子」の中身をくりぬいて、
中に味噌や餅米を入れて作る「ゆべし」も、
このサイズでは、作れないだろう。
鍋料理のポン酢作りにでも使えればいいのだが、
ここの所の野菜高騰で、気軽に鍋も作れない。
こうなってくると、いよいよ果汁を搾って、そこに砂糖を加え、
お湯を入れた「ホット柚子」でも作ろうかと思っていたのだが、
ちょうど、畑で穫れたばかりの大根が目についた。
そういえば、スーパーの漬け物コーナーには、
「大根」を「柚子」風味の漬け汁に漬け込んだ、
「ゆず大根」という商品がある。
野菜高騰の最中、大根だけは有り余っているので、
この「ゆず大根」を自作してみることにした。
ネットでレシピを検索してみると、存外、簡単に作れそうである。

まず、大根を拍子木型に切って、塩揉みにしてしばらく置いておく。
その間に、「柚子」の皮を細切りに、実を絞って果汁を採る。
酢と砂糖を合わせ、鍋で加熱してキレイにこれを溶かし合わせたら、
そこに「柚子」の果汁を合わせる。
大根を絞って水気を切り、ビンの中に入れ、
そこに先ほどの酢と、細切りにした「柚子」の皮を入れて
混ぜ合わせる。
このまま、時々かき混ぜながら、1時間ほど漬け込めば、
食べられるようになる。

出来上がった「ゆず大根」は、大根の辛み、柚子風味の甘酢、
柚子皮のかすかな苦みが一体となった、
なかなかの出来上がりであった。
思わず、「柚子」を庭に植えて、
毎年「ゆず大根」をつくれるようにするか、と思ったのだが、
考えてみれば、今から「柚子」を植えてみた所で、
収穫できるようになるのは、どれくらい先のことなのか、
想像もつかない。

さすがに18年も待とうとは思わない。

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