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免許返納

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ここの所、高齢者ドライバーの交通事故が注目されている。

11月20日、福岡県で77歳の女性が運転する軽乗用車が、
病院の正面玄関に突っ込み、ガラス扉の10m奥の
病院ロビーにまで侵入した。
どうやら女性が、アクセルとブレーキを踏み間違えたらしい。
突っ込み方から考えると、
相当強くアクセルを踏んでいたと思われるが、
病院の正面玄関で、そこまで強くブレーキを踏むという状況自体、
かなり特異な状況だったのでは無いだろうか?
普通、病院の駐車場や玄関前では、徐行するものである。
いきなり玄関を突き破って乗用車が突っ込んできたのだから、
病院のロビーにいた人たちは、度肝を抜かれたところだろう。
介護施設に異常者が侵入し、患者を殺害して回った事件や、
病院の点滴に異物が混入され、患者が死亡した事件など、
病院や介護施設で起こった不穏な事件が多かった今年、
そういう異常者が突っ込んできたのか?と、
病院関係者はキモを冷やしただろう。
ケガ人が出なかったことは、本当に幸いであった。

11月21日、東京・八王子市で、
75歳の男性が運転していた車が、前の車に追突し、
車3台が絡む事故が発生した。
この事故では、子供4人を含む、計12人が病院に運ばれた。
先の事故とは違い、こちらの事故では12人ものケガ人が出ている。

11月22日、愛媛県今治市で、交差点を歩いていた72歳の女性が
軽乗用車にはねられて死亡する事故が起きた。
女性をはねた軽乗用車を運転していたのも、
81歳の男性で、被害者も加害者も高齢者ということになる。
現場の交差点には、信号機や横断歩道はなかったものの、
見通しの良い道路で、加害者の男性は
「前を良く見ていなかった」と、話しているという。
いわゆる、脇見運転での事故だと思われる。
今年、スマートフォン用のゲーム「ポケモンGO」が配信され、
これをプレイしながら自転車や、車を運転するドライバーが現れ、
大きな話題になった。
これらの危険なドライバーは、
死亡者の出る交通事故も引き起こしており、
世間の非難が「ポケモンGO」に集まったが、
実際の話、危険なのは運転中の携帯操作であり、
「ポケモンGO」というのは、その中の1つに過ぎない。
この事故を引き起こした81歳男性が、
携帯を操作しながら運転していたのかどうかはわからないが、
この事故や八王子の事故などは、
前方不注意が事故の原因になっており、
高齢者ドライバーでなくても、起こりうる事故だといえる。
(実際、「ポケモンGO」プレイ中の事故は、
 若いドライバーが引き起こしていた)

11月24日、福井県おおい町の舞鶴若狭自動車道で、
軽トラックが対向車線を逆走して、大型トラックと正面衝突した。
この事故では、軽トラックを運転していた
79歳の男性が死亡している。
これと同じ、高速道路での逆走は20日、
兵庫県の中国自動車道でも起こっており、
70代の男性の運転する車が、20kmにわたって逆走し、
衝突事故こそ起こらなかったものの、上り線の一部区間が
通行止めになる騒ぎとなった。
男性は「逆走しているとは、思っていなかった」と話している。
どちらのケースでも、自動車専用道路で逆走が起こっており、
侵入口の間違いが、その原因ではないかと考えられる。
舞鶴若狭自動車道は、片側1車線の自動車道なので、
常識的に考えて、右側車線を走るという事自体、
あり得ない話なのだが、そのあり得ない事態が起こり、
死亡事故が発生している。
片側1車線の一方通行の道を逆走してこられては、
さすがにこれを避けるのは難しい。
逆走した男性も怖かったかも知れないが、
大型トラックの運転手も、かなり怖い思いをしたと思われる。
ただ、この逆走に関しても、高齢者ドライバーの事故は多いものの、
20代のドライバーも同じような事故を起こしており、
一概に年齢だけが原因といえない面もある。
高速道路が増え、その出入り口が増えるにつれ、
複雑な構造を持つジャンクションも多くなっており、
うっかりと出口に入っていく、なんていうことも多くなっている。
これを防ぐための、効果的な防止策の考案が待たれる。

こういった、高齢者ドライバーによる
交通事故が多発してくるようになると、
声高に叫ばれるのが、運転免許証の返納である。
早い話、運転免許を自主的に放棄して、
車に乗らないようにするということである。
ことに高齢者ドライバーの事故が重なると、
一定の年齢、あるいは厳しい認知症検査を行ない、
これにひっかかった高齢者ドライバーに、
強制的に免許を返納させよ、という意見も出はじめる。
警察署などでも、高齢者ドライバーに
自主的な免許返納を促しているが、
思うように返納は進んでいない、というのが本当のところである。

どうして、免許の返納は思うように進まないのか?

ひとつは、車を生活の「足」として常用している場合、
これが無くなってしまえば、
それからの生活に大きな影響があるからだ。
例えば、我がたつの市にしても、
交通インフラは、基本的に自家用車で移動することを前提に
整備されており、車で移動する分には充分なのだが、
いざ、バスや電車を利用するということになると、
非常な不便をしいられることになる。
普段の足として利用するには、
電車はあまりに限定的な場所にしか通っておらず、
さらに15分から30分近い待ち時間を要求される。
バスとなると、1週間のうち、
3日が日に5本、4日が日に1本である。
時刻表を見る限りでは、1本乗り遅れれば、
次が来るまでに6時間待ちである。
これを利用する、ということになったら、
それこそ、バスの時間を中心にして、
全ての計画を立てなければならなくなる。
(価格だけは、1回乗車で100円と良心的だが……)

さらに免許を返納してくれ、といわれることによって生じる
精神的な葛藤だ。
この運転免許証の返納を求められる、というのは、
暗に「お前はもうボケちゃって、まともに運転できないだろう」
といわれているのと同意である。
この要請に従って免許を返納するということは、
これを認めてしまう、という風に受け取ることも出来る。
例え、自分の運転がやや危なっかしいと感じていても、
それを認めたくない人間は、自分がまだ大丈夫だ、ということに
固執するため、意地になって免許にこだわるということがある。
本来的にいえば、そういう人こそ「運転してほしくない」人であり、
逆に自主的に免許返納の判断が出来る人の方が、
まだまだ「運転してもらっても大丈夫」な人なのだが、
現実には「運転してほしくない人」が免許に固執し、
「運転してもらっても大丈夫」な人が、免許を返納している。
なんとも、ままならないものである。

現在の日本、特に郊外に住んでいる人は、
移動ということになると、車に頼り切ってしまっている。
そういう生活を続けてきて、いきなり免許が無くなってしまえば、
それは、自分の生活圏の極端な縮小を意味してしまう。
本来なら、車が無くなったとしても、
自転車などに乗り換えたりすることによって、
ある程度の生活圏を維持することが出来るはずなのだが、
車に頼り切っていた人間は、体力も落ち切ってしまい、
そういう乗り換えによって、生活圏の維持をすることが出来なくなり、
途端に引きこもりに近い状態になってしまったりする。
そうなってしまえば、ますます体力は落ち、
さらに家から出なくなり…という、負のスパイラルに陥ってしまう。
そうならないためには、普段から車に頼り切るのではなく、
市内の買い物程度なら自転車などを使うようにして、
免許返納後への備えと、体力の維持に努めておく必要がある。
(逆に言えば、そうやって体力を維持できていれば、
 車の運転にも余裕ができ、返納を遅らせることも出来るだろう)

これからも高齢化が進んでいく以上、
高齢者ドライバーによる交通事故は、
ますます深刻な問題になっていくだろう。
そうなると、そう遠くない将来、年齢による免許の取り消しや、
高齢者ドライバーには、半年もしくは1年ごとの、
厳しい免許更新審査の実施などが、行なわれることになるはずだ。
そうなった場合、車を取り上げられた高齢者たちは
逼塞して生きていくことを余儀なくされてしまう。
そうなった場合、少しでもより良い生活を維持するためには、
その時になってからジタバタしても、出来ることはほとんど無い。

あらかじめ、そういう社会が来ることへ備え、
個々での対策を考えておくことが、
老後の生活を大きく変えていくことになるだろう。

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