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食べ物

うどん

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近年、麺類は固くなる傾向にある。

「コシ」というものを重要視するあまり、えらく固い麺がもてはやされている。

これは特にラーメンとうどんにおいて、顕著であるようだ。

ラーメン屋では、麺の茹で加減によって、様々な固さの麺を提供している。

うどんの場合には、そういうことはなく、ただひたすらに固い麺を目指し、

出来上がった固いうどんを、提供している。

今回は、この「うどん」について書いていく。

子供のころ、地区のイベントがあると、そこに屋台が出ることがあった。

その屋台の定番が、「うどん」であった。

うどんの上には甘辛く煮付けた「揚げ」が一枚のっていた。

いわゆる「きつねうどん」である。

これに備え付けの七味唐辛子をふりかけ、必死になってすすり込んだものだ。

地区イベントの屋台なので、作っているのは素人である。

地元の人間が、ほぼボランティアでうどんを作っていた。

もちろん、粉を練ってうどんを打ったりはしない。

スーパーなどで、ひと玉30円ほどのうどんを買ってきて温め、

ヒガシマルのうどんスープの中に、入れただけのものである。

屋台の中でも、うどんは廉価で、おおよそ1杯100円であった。

これを子供が買って、ずるずるとすする。

足りなければ、他のものを買って食べるか、うどんをもう1杯食べる。

「コシ」とか、ツユのコクなどと考えたりもせず、ただ一心にすすり込んだ。

こういううどんは、本当にウマかった記憶がある。

うどんが、いつごろから食べられていたのかは、はっきりしない。

一説によると、仁治2年(1241年)、中国から帰国した聖一国師が、

製粉の技術を持ち帰り、うどん・そば・饅頭などの粉食文化を、

広めたといわれている。

また、聖一国師がひらいた福岡市の「承天寺」には、

「饂飩・蕎麦発祥之地」と記された石碑が建っている。

これ以外にも、奈良時代、遣唐使達によって持ち帰られた

「唐菓子」の「索餅(さくべい)」や「餛飩(こんとん)」が、

うどんになったとする説もある。

「索餅」の場合、後の平安時代に「麦縄」と呼ばれる麺になり、

さらにそこから、うどんへと変化していったとされる。

「餛飩」の場合、もともとはワンタンに相当するものであったが、

後に「饂飩(うどん)」へと変化していったというものだ。

しかしこちらの場合は、ワンタンからうどんへの形態変化の行程が、

全く判明していない。

ただ「唐菓子」の中に、麺に似たものがあったことは、事実のようだ。

それが麺へと変化していったというのは、説得力がある。

南北朝時代になると、「庭訓往来」や「節用集」に「饂飩(うどん)」の

記述が見られるようになる。

このころには、うどんが存在していたようである。

このころのうどんが、どのような食べられ方をしていたのかは、不明である。

恐らくは、醤油の前身である「醤(ひしお)」などで味付けしたツユか、タレで

食べていたのではないかと、考えられる。

基本的に、蕎麦は関東、うどんは関西、という風にいわれるが、

江戸初期においては、現在の蕎麦(蕎麦切り)がなく、麺類といえば、

関東、関西ともにうどんであった。

その名残というわけでもないだろうが、関東・関西は関係なく、

日本全国に、それぞれの名物うどんが存在している。

名古屋のきしめんのように、その形状に独特の形を持つものも、多い。

うどんに使われるダシは、関東はカツオだし、

関西はカツオだしとコンブだしが使われている。

これは、関東では水が硬水のため、

コンブからダシをとるのに、適していなかったためである。

そのため、関東のダシではグルタミン酸の割合が少なくなり、

それを補うために、大量の醤油を使うようになった。

醤油に含まれる、グルタミン酸を求めてのことであるらしい。

そのため、関東のうどんつゆは、関西のものと比べても醤油の色が濃い。

当然、塩分濃度も高くなる。

関西のうどんつゆの塩分濃度が、

関東と代わらないというのは、明らかな間違いである。

実際には関東のうどんつゆは、関西のうどんつゆより塩分濃度は高い。

最近は、讃岐うどんの影響か、やたらうどんのコシが重要視される。

うどんのみならず、蕎麦もラーメンも「コシ」である。

うどんと蕎麦については、提供される店単位で「コシ」が統一されているが、

ラーメンはどういうわけか、ひとつの店の中で数種類の固さが用意されている。

大体は麺の茹で時間によって、固さを調節しているらしいのだが、

世界中を探してみても、こんなわけのわからないことをしているのは

ラーメンだけである。

それ以外の所では、麺には最高の茹で加減は一種類しかない、というスタンスだ。

もちろん、うどんもそのスタンスをとっており、

「コシ」の強いうどんを食べたければ、「コシ」の強いうどんを打つしかなく、

「コシ」の弱いうどんを食べたければ、「コシ」の弱いうどんを打つしかない。

「コシ」の弱いうどんの茹で時間を短くしても、「コシ」は強くならず、

ただ、半生の「コシ」の弱いうどんになるだけである。

うどんの「コシ」は、うどん粉をこねる段階で、

すでに決まっているということだ。

そういう「コシ」がやたら重視される現在だが、

自分は「コシ」の強いうどんは、それほど好きではない。

箸でつかんだだけで、ぶちぶちと切れてしまうようなものは論外だが、

そうでなければ、なるべく口当たりの滑らかな、ふんわりとしたうどんが好みだ。

関西風のダシのきいた優しいうどんつゆの中に、

ふんわりと滑らかで柔らかいうどん。

その上には、甘辛く煮付けた油揚げが1枚。

うどんという食べ物の、ひとつの完成形だと思う。

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