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動物 釣り

オイカワ

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川で釣りをするということになると、
まず、その対象の第一はアユということになる。

初夏ごろから、川の中に入って、
7~8mはあるような竿を操り、アユを釣っている人を見かける。
自分の住んでいる、たつの市の揖保川でも、
その季節になれば、何人もの釣り人の姿を見ることができ、
一種の夏の風物詩のようになっている。

しかし、アユを釣ることの出来る川というのは、
結構、限定的である。
西播地方に流れている川で考えてみると、
揖保川と千種川でアユ釣りが出来るぐらいで、
それ以外の川では、まず、アユを釣ることは出来ない。
揖保川と千種川にしてみても、毎年大量の稚魚を放流しており、
釣り人の多くが釣っているのは、これが成長したものである。
仮に、この稚魚放流が行なわれなかったとしたら、
揖保川にしても、千種川にしても、
まともにアユを釣るというのは、不可能ではないかと思われる。
揖保川にも千種川にも、
元々生息している天然のアユがいるのだが、
それだけを釣らせていては、
あっという間に資源が枯渇してしまう。
またそんな状況では、余程、釣りの腕が良くない限り、
まともな釣果をあげることは難しいだろう。
そういう意味では、揖保川も千種川も、
川という閉ざされた自然環境の中に放流したアユを釣らせている
巨大な「釣り堀」である、という風に捉えることが出来る。

これと同じことは、渓流魚などでも行なわれている。
こちらはニジマスやヤマメを放流し、釣り人にこれを釣らせている。
アユと渓流魚という違いがあるだけで、
やっていることは、どちらも巨大な「釣り堀」である。

こういった「放流された魚」を釣る場合には、
かなり厳しく、漁業権を主張される。
魚にカネがかかっているのだから、これはある意味で当然だ。
漁協にしてみても、慈善事業で稚魚の放流をやっているのではなく、
あちこちから集まってくる釣り客に、
入漁券や囮アユなどを販売することによって、
金を稼ぐためにやっているのだから、
これらの釣り人、漁業者に関しては、
かなり厳しく入漁券のチェックを行なっている。
入漁券を購入せずに、これらの魚を釣っていた場合、
その場で入漁券を購入させられるか、
悪くすれば、「密猟」ということで警察沙汰になることもある。

ただ、漁協にしても全ての魚に、
これほどの強烈な監視体制を敷いているわけではない。
漁協の放流していない魚、漁業の対象となっていない魚については、
釣りをしていても、特に何かをいわれることは少ない。
(ただし、勝手な放流や、立ち入り禁止区域への侵入、
 禁漁区での釣り、ゴミのポイ捨てに関してはその限りではない)
子供が釣り竿を持って、小魚などを釣っている分には、
まず、これについては何もいわれることはない。
釣りをする子供は、後に釣りをする大人になる可能性が高い。
そうなると、アユ釣りや渓流釣りを
するようになる可能性もあるわけで、
そういう意味では、彼らは将来の大切なお客さんともいえるわけだ。

そんな子供たちがやる川釣りの中で、
もっとも簡単なものが、五目釣りだ。
特に狙うべき魚種を定めず、
ミミズなどを餌としてウキ釣り仕掛けを川に流す。
そうすると、それこそありとあらゆる魚がかかってくる。
フナ、コイ、ブラックバス、ブルーギル、ナマズ等々。
しかしそんな中で、もっとも良く釣れるのが「オイカワ」だろう。
10~15㎝程度のほっそりと細長い身体は、
いかにも「川魚」といった雰囲気に溢れている。
ミミズでも釣れ、赤虫でも釣れ、練り餌でも釣れる。
夏場などは、毛針仕掛けを使っても、釣り上げることが出来る。
よく、「釣りはフナに始まり、フナに終わる」といわれるが、
川などの、流れのある場所で釣りをする場合は、
この「フナ」の部分を、
「オイカワ」に置き変えても問題ないだろう。
それほどに「オイカワ」は、川釣りの対象魚としては、
基本的なものなのである。

オイカワは、コイ目コイ科ハス属に属する淡水魚の一種だ。
先にも書いたように10~15㎝ほどの大きさで、
ほっそりと細長く、いかにも「川魚」といった風情がある。
体色は銀白色であるが、身体の側面には
淡いピンク色の横班が何本か入っている。
身体のヒレの中でも、特に尻ビレ(尾ビレではない)が
大きく発達しており、オイカワの大きな特徴となっている。
5~8月が繁殖期であり、この時期になると雄は婚姻色となり、
体側に赤や青緑色の模様が浮き出し、ヒレの一部が赤く変色する。
頭部には「追い星」と呼ばれる突起が現れ、
結構、グロテスクな顔になる。
この時期のオイカワの雄は、日本に生息している魚の中でも、
随一といって良いほどの、ド派手な容姿になるが、
当然、繁殖期を過ぎてしまえば、体色は元に戻ってしまう。
釣り上げたオイカワをバケツに入れておくと、
飛び跳ねて、外に飛び出してしまう。
釣りをする際には、バケツの上に板のようなもので
フタをしておいた方が良い。
これは水槽などで飼育する場合にもいえることで、
水槽の上にフタをしておくことは必須である。
また、ある程度の大きさの水槽で飼育しないと、
驚いたオイカワが水槽の壁にぶつかり、怪我をすることもある。
この点と、水温を上げすぎないように気をつけておけば、
飼育については容易な魚である。

正式な名前は「オイカワ」であるが、
これ以外にも地方によって様々な名前が付けられている。
一例を挙げてみると、ハス、ハエ、ヤマベ、ジンケン、シラハエ、
ハイジャコ、ハヨ、アカムト、アカモトなどである。
「オイカワ」というのは、
もともと滋賀県での婚姻色の表れたオスの呼び方であり、
その名前の由来については、複数の説がある。
「追い上げて捕るから」、「尾で追い合って戦うから」、
「京都の大堰川(おおいがわ)に由来する」などといわれるが、
本当の所については、明らかではない。
学名は、「Zakko(ざっこ)」であり、
これを初めてヨーロッパに紹介したのは、
長崎に赴任したドイツ人医師・シーボルトである。
この「Zakko」というのは、日本語の「雑魚」からきており、
その当時のオイカワが、どういう扱いであったが伺える。

天ぷらや塩焼きなどにして、普通に食べることが出来るが、
どうも夏はマズく、冬になると美味しくなるらしい。
内蔵に苦みがあるので、
調理する際にはこれをきれいに取り除く必要がある。

かつて、自分も子供のころには、
川でオイカワを釣っていた。
釣ってはいたものの、持ち帰って食べていたわけではないので、
なるべく魚にダメージを与えないように、
釣り針の「カエシ」を
ラジオペンチなどで潰して釣っていたのだが、
これのおかげで、フッキングさせてから取り込みまでの手際が
恐ろしいほどに良くなった。
一連の動作を、素早く、正確、丁寧に行なわないと、
「カエシ」のない針ではあっという間に、魚はバレてしまう。

また、川の流れの中で、
微妙に水の流れと違う、「ウキ」の動きを読み取る釣りは、
かなり高度な、ウキ読みの技術を自分に与えてくれた。
ウキの周りを流れている、小さな泡やゴミなどの動きと
ウキの動きを見比べ、違和感があればアワセをする。
これが自分のウキ釣りの技術の根本にある。
(そのため、余りに分かりやすいアタリばかりだと、
 返って、すぐ飽きてしまうようになったが……)

「オイカワ」は自分にとって、釣りの技術を教えてくれた、
まさに教師ともいえる魚なのである。

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