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動物 雑感、考察

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自分が子供だったころ、実家の庭には池があり、
そこに鯉や金魚が泳いでいた。

これは父親が趣味で作ったもので、
2畳分ほどの広さを1mほど掘り下げ、
それをコンクリートで固めた簡易的なものであった。
毎年、水をきれいに保つため、という理由で
ホテイアオイをひとつ浮かべておくのだが、
いつの間にか、この小さなホテイアオイが池一面に増殖し、
大変なことになっていた。
家庭から出る排水を、
濾過槽で濾過したものが流れ込んでいたので、
水がかなり、富栄養化していたのだと思われる。
その豊かな栄養を使って、
ホテイアオイは異様なほどに増殖し、
水面を埋め尽くしていた。
数ヶ月に1度、池の水を完全に抜いて、
池の中を掃除していたのだが、
その度に、池の底には分厚いヘドロの層が形成されており、
これをジョレンやスコップを使い、
きっちりと浚うのが、なかなかの重労働であった。
もちろん、ホテイアオイは1年中茂っているわけではなく、
秋口辺りになると枯れてしまう。
そうなると、枯れたホテイアオイを池の中から引き上げ、
それから春先くらいまでは、
全く池の中には水草のない状況になる。
もっとも、池の中に流れ込む水は変わらないので、
秋・冬の時期であっても、
池の中には植物プランクトンなどが発生し、いつも濁っていた。

子供時代、そんな池の周りを
駆け回るようにして遊んでいたのだが、
何度かうっかりとして、
池に落ちてしまうことがあった。
そんなに深くもなく、広くもない池なので、
溺れたりすることはなかったのだが、
何せ、底にヘドロがたまっているような池なので、
まるでドブに飛び込んだようなことになる。
池から這い上がってきた姿は、
ドブからカッパが這い上がって来たように見えただろう。
母親はとりあえず自分の服を全部脱がさせ、
庭に水を撒くためのホースで、身体を洗った。
洗った、といえば聞こえは良いが、
実際は、凄い勢いで自分の身体に水をぶっかけるだけである。
やっていることは、トラクターの水洗いと変わらない。
そしてそのまま、洗車用のブラシで身体をこする。
車を洗うときは、わりと丁寧にブラシを使うのだが、
汚い池に落ちた子供を洗うのに、そんな丁寧さはない。
極めて乱雑に、ゴシゴシと洗われた後、
身体の水滴をタオルで拭いて、そのまま風呂場に直行である。

どういうわけか、うちの3兄弟の中でも、
池に落ちたことがあるのは自分だけで、
妹も弟も、この池に落ちた所を見たことがない。
母親が、池の傍で遊ばないように厳しく言っていたのか、
あるいは自分が粗忽だったのかはわからないが、
この小さな池に落ちたことのある人間は、
後にも先にも自分だけである。
……。
「人間は」と書いた。
つまり、人間以外のものも、
この池に落ちたことがある、ということになる。
自分以外に、この池に落ちた粗忽者が、
「雉(きじ)」であった。

現在では、実家の周りはきっちりと区画整理された
住宅地になっているが、
自分が子供のころは、山を削り取った
だだっ広い荒野であった。
そこには、いくつか作られた畑の他は、
ただ鬱蒼と雑草が生い茂っていた。
その雑草の中に、雉が住み着いており、
時折姿を見せては、トコトコとうちの近くをうろついていた。
その雉が、どこをどう間違えたのか、うちの庭の池に落ちた。
庭からバシャバシャと激しい水音がし、
何事かと庭に出てみると、池の中で雉が溺れていた。
足で地面が蹴れないと、飛ぶことも出来ないのか、
ひたすら水の上でバシャバシャともがいていた。
そのまま放っておくと、溺死してしまいそうだったので、
網ですくい上げて、放してやった。
雉はそのまま、草むらの中へと消えていった。
昔話だと、雉が恩返しにくる所だが、
あれから数十年経った今でも、
恩返しらしいことは何も起こっていない。

「雉」はキジ目キジ科キジ属に属する鳥である。
オスは鮮やかな羽根色をしており、顔の肉腫が赤い。
メスはオスに比べると全身の色合いは地味だが、
これはオスがその派手な色で、メスの興味を引くためである。
顔の肉腫については、ニワトリのトサカと同じものであり、
この肉腫が大きいほど、メスに強くアピールすることが出来る。
ニワトリも、キジ目キジ科の鳥であり、
雉とは比較的近い間柄の鳥である。
両者ともに飛ぶのが苦手で、
ほとんどの時間は地面の上を歩いている。
日本の「国鳥」に指定されている他、
全国の市町村においても、雉をシンボルとしている自治体は多い。
また、狩猟対象としても重要な鳥であるが、
「国鳥」を狩猟対象にしているのは、日本だけである。
「国鳥」に選定された理由として、
・メスは母性愛が強く、雛をつれて歩く様子が
 家族の和を象徴している
・狩猟対象として最適であり、肉が美味
というものが挙げられている。
「万葉集」「古事記」にも、「雉」の記載があることから、
古代より日本に存在していたことは間違いないが、
「食肉」として、「雉」について書かれているのは、
平安時代の料理書「四条流包丁書」である。
これには「鳥といえば、雉のことなり」と記されており、
この言葉を信じるのであれば、
当時、鶏肉や鴨肉よりも、雉の肉の方が一般的であったか、
あるいは美味だとされていたようである。

「雉」は、奈良時代から
「きじ」「きぎす」「きぎし」の名前で呼ばれており、
これらは全て「兆し(きざし)」が変じたものである。
昔から雉は、地震の前にこれを予兆し、
鳴いて知らせることが知られており、
ここから「きざし」の名前がついたものと考えられる。
最近の研究では、「雉」が地震の初期微動を
感知していることがわかっており、
人間より数秒早く、
地震を感じとることができるとされている。

日本では、北海道と対馬を除く、
本州、四国、九州に生息しているが、
現在では北海道と対馬にも「コウライキジ」が、
狩猟用に放鳥され、野生化している。
以前、カラスについて書いたときは、
「肉」として利用されている分が、あまりに限定的だったので、
それについては全く触れなかったのだが、
「雉肉」はネットなどを使えば、
比較的購入しやすい。
ただ、ちょっと縁のある肉屋のホームページで確認した所、
「雉肉」は「珍獣肉」というカテゴリーに入っていた。
イノシシ肉や馬肉、鴨肉などが
個別にカテゴリーが作られている所を見ると、
いかに「雉肉」が珍しいのかということがわかる。
ちなみに「珍獣肉」の中には、「雉肉」の他に
「ワニ肉」「トド肉」「ヤモリ」「カンガルー肉」
「らくだ肉」「ダチョウ肉」などが並んでいる。

さて、例の「雉溺れ事件」から数十年。
うちの池は埋め立てられ、
うちのまわりの荒野は住宅地になった。
必然的に、そこに住んでいた雉はいなくなり、
うちの周りをうろつくようなこともなくなってしまった。
こう書くと、自然破壊が〜なんていう風に
言っているようにも聞こえるが、
たつの市自体は数十年前と変わらず田舎のままなので、
そこら辺に、まだまだ雉が生息している。

うちの池から逃げられなかったことを考えると、
中に水を張った落とし穴でも作れば、
雉を捕まえることが出来るのかも知れない。

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