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植村直己

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前回、兵庫県の生んだレジェンド、加藤文太郎について書いた。

今回はもう1人の、兵庫県の生み出したレジェンドについて書く。

今回の人物は登山家の枠をはみ出している。

そしてどちらかと言えば、そのはみ出している部分で有名だ。

今回は冒険家、植村直己について書く。

加藤文太郎と植村直己は、ともに兵庫県北部の出身であり

加藤文太郎は新温泉町、植村直己は豊岡市の出身だ。

そして植村直己が登山を始めたのは、多分に加藤文太郎に影響されてのことだ。

加藤文太郎と違う所は、最初から海外に飛び出したことである。

そこでアルバイト生活をしながら、登山費用を稼ぐ。

途中、不法就労で捕まったりして、かなりの苦労があった。

そして1966年、モンブランに登頂、五大陸最高峰の最初のひとつとなる。

同年、アフリカ大陸最高峰、キリマンジャロ登頂。

1968年、南米大陸最高峰、アコンカグア登頂。

1970年、世界最高峰エベレスト登頂。

これは日本人として、初めてのエベレスト登頂だった。

同年に北米大陸最高峰、マッキンリー登頂。

これで五大陸最高峰を制覇する。

もちろんこれは世界初であった。

ここから植村直己の挑戦は、縦方向から水平方向へとシフトしていく。

つまり極地探検に代表される、冒険行である。

主に北極圏にその活躍の場を移し、犬ぞり単独行を次々と成功させる。

1978年、犬ぞり単独行で北極点到達。

これも単独では世界初のことだった。

加藤文太郎と違い、世界を舞台に活躍を続けた植村直己。

もちろん時代の違いもあるので、単純に2人を比べることはできない。

そして1984年、彼の冒険人生は終わりを告げる。

北米大陸最高峰マッキンリーに、冬期単独初登頂を成功させた後、遭難。

無線による連絡が途絶え、植村直己は冬のマッキンリーに消えた。

植村直己の経歴だけを追ってみた。

加藤文太郎のときと同じく、これだけを見ると植村直己もまた超人に見える。

しかし植村直己もまた、1人の人間だった。

植村直己の冒険は、まず挫折から始まっている。

彼は就職試験に失敗し、ヨーロッパの氷河を見るために海外に飛び出した。

植村直己については、加藤文太郎に比べれば残している文章の量も多いし

対談などの記録も残っている。

講演会も行われており、彼自身の言葉で語っている。

それによれば、植村直己は始終、劣等感を抱き続けていた感がある。

大学の山岳部時代も、よく転んだために周りから馬鹿にされていたし、

本人自身、臆病であることを認めている。

人前で話すことも苦手で、講演会ではかなり緊張していたようだ。

こうして見ると、性格的に見て加藤文太郎と植村直己には、

どこか共通する所があるようだ。

特に人前で話すことが苦手であった点などは、それを感じさせる。

また両人とも、人並みを外れた体力の持ち主であったことも、共通項だ。

そして何より2人とも単独行である。

実際、植村直己が成し遂げた五大陸最高峰制覇のときでさえ、

エベレスト以外は単独行で成し遂げている。

北極で犬ぞり冒険をしたときも、単独行であった。

しかし彼はけっして、人そのものに背を向けて生きてきたわけではない。

彼は極地という状況に身体を慣らすため、アラスカのエスキモーの集落で

彼らとともに生活している。

そのエスキモーとの生活で、彼は完全にエスキモーの中にとけ込んだ。

日本人の生活とは大きく違うエスキモーの生活に、彼は普通になじんだ。

そして彼らから学び取った技術で、植村直己は北極圏の冒険に挑んだ。

これが彼の冒険スタイルであった。

彼は最先端の道具をほとんど使わず、現地の人々の技術と道具、

そして彼自身が考案した技術で冒険した。

この点もまた、加藤文太郎に通ずるものがある。

奇しくも、同じ兵庫県から出た2人の伝説的登山家と冒険家は、

ともに「単独行」というスタイルをとった。

たった2つの例から結論を出すのは早計であるが、

この「単独行」というのは、兵庫県民の県民性に繋がるのではないだろうか?

全ての責任と己の命を背負い、たった1人で山に、極地に挑む。

孤独も不安も、劣等感も悲しみも飲み込んで、ただ1人で歩いていく。

自分の弱さを認め、それでも自分の力で進んでいく。

そういう強さを秘めた、県民性なのだとしたら、それは誇らしいことだと思う。

加藤文太郎は言った。

「単独行者よ強くあれ」と。

植村直己はその言葉の通りに、強くあった。

そして植村直己の残した言葉がある。

「冒険は死んではいけない、生きて返ってくるのが絶対、

 何よりの前提である」

彼自身、この言葉を全うできなかったことは、どれほど無念だっただろうか?

彼らの後に続く「単独行者」は、

強く、そして必ず生きて返ってこなければならない。

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