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お気に入りの餅、安倍川餅

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餅の食べ方は、大きく分けて2つある。
甘くするか、辛くするかだ。
餅を、何の味付けもせずに、
ただひたすらに、飲み込んでいくという食べ方もあるが、
これは全体で見ても、極めて少数派だろう。

辛くするのであれば、
醤油を使ったり、ダシ汁に入れたり、
最近ではチーズを使ったり、バター醤油を使ったりする。
また、餅を加工し、乾燥させた餅を焼いたり
油で揚げたりする場合も、塩や醤油で味付けする。

甘くする場合は、
アンコを中に入れたり、アンコをまぶしたり、
アンコを溶かした汁の中に入れたりする。
もちろん、アンコばかりではない。
ただ砂糖をふりかけて食べることもあるし、
砂糖醤油にして、甘辛くすることもある。
枝豆をつぶして、砂糖で味付けしたもので包む、
「ずんだ餅」というものもある。

辛くしても、甘くしても、餅は美味しく食べられるが、
基本的に辛くして食べる場合は食事、
甘くして食べる場合はお菓子という
スタンスであることが多い。

そんな様々な食べ方がある中で、
最近、自分がはまっているのが「きな粉餅」だ。
これは「安倍川餅」とも呼ばれ、
どちらかといえば、こちらの方が正式な名前である。
パック入りのお徳用切り餅があれば、
それこそ2~3分で出来上がる、お手軽さが嬉しい。

今回はこの「安倍川餅」について書いていく。

安倍川餅は、焼き餅を湯に浸し、
これにきな粉と砂糖をまぶしたものである。
もちろん、焼き餅に限らず、生餅でも何でも構わない。
生餅であれば、湯に浸したりしなくても、
そのままきな粉と砂糖をまぶすことが出来るし、
固くなった餅にしても、茹でて柔らかくすれば、
湯を別に用意する必要もない。
逆に湯がなければ、肝心のきな粉が引っ付かない。
静岡県の安倍川近くで、作られていたことから、
「安倍川餅」という名前がついた。
この「安倍川餅」の名前の由来には、
徳川家康が関わっている。

江戸時代の初期、徳川家康が安倍川岸の茶店に
立ち寄った際、搗きたての餅に
きな粉と砂糖をまぶしたものが出た。
そのときは、きな粉を安倍川上流でとれる砂金に見立て、
「金な粉(きなこ)餅」という名前だった。
もともときな粉というのは「黄色なる粉」が、
「黄な粉」に変じたものであるから、
これは一種の駄洒落である。
が、家康はこれをたいそう喜び、
安倍川にちなんだ「安倍川餅」と名付けたという。

江戸時代初期、家康は大御所となり
駿府で隠居していた。
家康の征夷大将軍としての期間はわずか2年と短く、
すぐに息子・秀忠に将軍の座を譲った。
以降は、駿府城にて終生暮らしたのだが、
この話はそのころのことのようだ。
この当時は、砂糖が国内では生産できず、
中国からの輸入に頼っている状況であったため、
それなりに高価なものであったはずだ。
「東海道中膝栗毛」には、
「安倍川餅」が「五文どり」として紹介されている。
これは安倍川餅が五文であったということだろう。
「東海道中膝栗毛」が発行されたのは、
1802年ごろのことだといわれている。
このころにはすでに、砂糖が国産化されており、
安倍川餅も一般庶民の手の届く価格になっていたようだ。

この話から、江戸時代の最初期にはすでに、
きな粉と砂糖をまぶした餅が食べられていたのは
間違いがない。
ただ、このきな粉と砂糖を餅にまぶすという食べ方が、
いつごろから始まったかというのは明らかではない。
餅は古代から作られていたし、
きな粉は奈良時代には、薬として僧侶たちが服用していた。
砂糖も同じく、奈良時代に僧侶によって
日本に持ち込まれたので、
材料はこの時点で揃っていたことになる。
さらに、砂糖もきな粉と同じように
薬として扱われていたため、
きな粉と砂糖を混ぜ合わせることも、あったかもしれない。
さすがに薬を餅にまぶすことはなかっただろうが、
湯に溶いて飲むくらいのことは、していたかもしれない。

ただ、世間にきな粉と砂糖の組み合わせが
広がっていくきっかけになったのは、
やはり、この「安倍川餅」であった。
江戸時代、参勤交代の武士たちや、
東海道を旅する庶民たちによって、
「安倍川餅」は全国に広まっていった。
餅、きな粉、砂糖は、江戸時代には全国で
手に入れることが出来たはずである。
しかも、材料さえ揃えば、簡単に再現することが出来る。
おそらく、駿府で「安倍川餅」を食べた人たちは、
それぞれの国で、これを再現したに違いない。
特に武士階級にしてみれば、
「安倍川餅」は徳川家康公ゆかりの餅である。
その辺りの蘊蓄を捏ねながら、
国の家族に「安倍川餅」を食べさせたのではないだろうか?

さて、我が家のきな粉餅である。

個別包装された切り餅を、ひとつ取り出し、
包丁で半分に切る。
そのまま小さな器に入れて、餅が浸るくらいに水を入れる。
これを電子レンジの中に放り込み、1分半ほど加熱する。
そうすると、餅も暖まり、
柔らかさもちょうど良くなる。
これをかねて用意しておいた、
きな粉と砂糖を混ぜ合わせたものに放り込み、
まんべんなくきな粉をまぶす。
そのまま、別の器に餅を移せば、きな粉餅の完成だ。
小さな、一口サイズのきな粉餅が2つできる。
きな粉と砂糖を混ぜ合わせたものは、
大きめの器に入れておいて、ラップをかけ、
冷凍庫にでも放り込んでおけば、
いつでもきな粉餅を作ることが出来る。

きな粉は炭水化物、タンパク質、脂質が、
3分の1ずつほど含まれている。
かつて「栄養バランス」の回に書いたが、
理想的な栄養バランスでは、
炭水化物・タンパク質・脂質の割合が、
80・10・10くらいの量になる。
小さめの、たっぷりときな粉のかかったきな粉餅は、
これに極めて近い、栄養バランスを持つことになる。
さらに、粉状になっているきな粉は消化しやすく、
同じく、米を搗きつぶしている餅も消化しやすい。
そう考えれば、
きな粉餅は極めて理想的な「間食」になるのである。

もちろん、人間は栄養のことを考えて、
オヤツを食べるわけではない。
だが、香ばしく、ほのかに甘く、結構粉っぽいソレは、
お茶だけではなく、コーヒーや紅茶にも良く合う。
モニュモニュと口の中で餅を咀嚼し、
口の中がきな粉で粉っぽくなった所で、
お茶を一杯。

まさに、日本のティータイムだ。

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