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シュークリームには、穴が空いているか。

更新日:

シュークリームには、穴があいている。

このことに気がついたのは、結構、大人になってからのことだった。

冷静に考えてみれば、中にカスタードクリームを入れたまま、

シュー皮を焼けるはずもないので、これは当然のことだ。

最近のシュークリームの中には、穴を開けず、

シューを半分に切り、そこからカスタードクリームを入れているものもある。

当然、この手のシュークリームには、穴はあいていない。

シューの切れ目から、中のクリームが露出していて、

これがなんとも、見ている人間を興奮させる。

しかし、このタイプのシュークリームは、食べ方をひとつ間違えると、

手も、口周りも、クリームでべたべたになってしまう。

しかしそんな風に、べたべたになりながら食べるシュークリームは、

本当にウマい。

今回は、この「シュークリーム」について書いていく。

シュークリームの「シュー」が、

フランス語のキャベツの意味であることは、よく知られている。

フランス語では、「シュー・ア・ラ・クリーム」と呼ばれ、

直訳すれば「クリーム入りのキャベツ」という意味になる。

シュークリームのどこが「キャベツ」に似ているのかといえば、

あの皮の部分が、である。

え、キャベツってあんなに小さくないし、色も全然違うし、

何よりキャベツはあんなにデコボコしていないでしょ、といいたくなる。

確かにキャベツは、つるりとしたきれいな形をしている。

ボコボコと膨れ上がったシューの形とは、全然イメージが違う。

フランスのキャベツは、日本のそれとは、形が違っているのだろうか?

そう思って、「フランス」「キャベツ」というキーワードで検索してみたが、

画面に出てきたのは普通の丸い、つるりとしたキャベツだけであった。

ただ、キャベツについて調べてみると、キャベツの一種として、

カリフラワーやブロッコリーなどが紹介されていた。

こちらの方は、シュークリームのように、デコボコとした形をしている。

ひょっとしたら、シュークリームの「シュー」は、

ブロッコリーやカリフラワーなどをさしているのかもしれない。

シュークリームの命ともいえる、シュー皮だが、

その特徴は、中が空洞になっている所である。

これは、生地の中に含まれている水分が、水蒸気になることで膨張し、

その膨らみを小麦粉の中に含まれているグルテンが受け止め、

膨らんだ状態のまま、生地に含まれている卵が焼けて固まることで作り出される。

生地はもったりとした状態であり、もともとはこれを油の中に落とし、

揚げることによって作られる、揚げ菓子のひとつであった。

当然、原初のシュークリームには「クリーム」が入っていない。

つまり、ただの「シュー」であったワケだ。

16世紀の初め、フランスのアンリ2世に嫁いだ、

カトリーヌ・ド・メディチ付きの料理人であったポプランが、

この生地を半焼状態にし、中身を繰り出し、詰め物をすることを始めた。

この後、1760年にジャン・アビスが、

シューの中にカスタードクリームを入れた「シュークリーム」を完成させた。

このジャン・アビスは、「シュークリーム」の他にも、

「マドレーヌ」を作った人物としても知られている。

フランスの名店「バイイ」のシェフ・パティシエで、

かのアントナン・カレームにも影響を与えた人物である。

カレームは後に、「シュークリーム」をもとにして「エクレア」を作っている。

日本に伝わったのは幕末のころで、横浜に洋菓子店を開いた

サミュエル・ピエールがシュークリームの販売を始めたとされている。

実は、はっきりとした確証のない話であるが、

洋菓子店を開いたのだから、

きっとシュークリームも扱っていたに違いない、ということらしい。

かなりいい加減な論拠のように思えるが、

それだけ当時の洋菓子店においては、シュークリームは外すことのできない、

いわば看板商品だったのではないだろうか?

日本人の手によるものとしては、

明治7年、開新堂と米津凮月堂が販売を開始している。

このころのシュークリームは、外国人や上流階級向けの高級洋菓子であり、

一般庶民の口に入るものではなかった。

日本の文献上に、はっきりと「シュークリーム」の文字が現れるのは、

明治37年、村井弦斎の「食道楽」内においてである。

この中には、家庭でも作れるシュークリームのレシピが掲載されていた。

日本にシュークリームが持ち込まれて40年近く、

このころには、知名度も相当に上がり、

家庭によっては、自作する所もあったようだ。

ただ、カスタードクリームという生ものを使っている以上、

その販売には、冷蔵ケースが必要不可欠である。

爆発的にシュークリームが広まっていくのは、

冷蔵設備が整った、昭和30年代ごろからである。

現在、シュークリームは洋菓子店のみならず、

スーパーやコンビニなどでも販売されている。

ありがたい時代になったものである。

さすがにいい歳した男が、不二家などに足を運び、

シュークリームを購入するのは、なかなか恥ずかしい。

その点、スーパーなどで買うのなら、しれっとカゴの中に放り込んでおけばいい。

そのまま素知らぬ顔で持ち帰り、家の中でこっそりと食べる。

そういう風にして食べるシュークリームは、特にウマい。

どことなく頼りないシュー皮の中に、

ぽってりと詰め込まれているカスタードクリーム。

おもむろにかぶりつくと、中に詰め込まれているクリームが溢れ出す。

この「溢れ出す」という所が、人を幸せにしてくれる。

シュークリームを持っている手に、こぼれるカスタードクリーム。

これをぺろぺろと舐めてから、

さらに、シュークリームからこぼれそうになっているカスタードを舐める。

クリーム崩落の心配が無くなった所で、残りを口の中に放り込む。

しんなりとしたシュー皮を噛むと、残っていたカスタードクリームが、

口の中に溢れ出す。

なんとも幸せなひとときだ。

ただ、シュークリームを食べ終わった後は、鏡によるチェックは必須である。

口の周りに、シュークリームを食べた「証拠」が、

残っていることがあるからだ。

「証拠」が残っていた場合、速やかに処分しよう。

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