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スーパー台風

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先日、パソコンでヤフーのトップ画面を見ていると、
ニュースの中に、
「台風1号、なぜスーパー台風に?」というものがあった。

昔、「DRAGON BALL」に夢中になった身としては、
「そりゃあ、激しい怒りによって、だろう」と、
アホなツッコミをしたのだが、
もちろん、そんなアホな理由によって、
「台風」が「スーパー台風」になったりはしない。
いや、それ以前に、そもそも「スーパー台風」とは何なのか?

TVのニュースを見ていると、何年かに1回くらいの割合で、
アメリカの超巨大ハリケーンのニュースが流れる。
航空写真で見てみると、日本がまるまる入ってしまいそうなほど
巨大な台風がアメリカを蹂躙している。
まさにアメリカらしいキングサイズの「台風」である。
あー、なるほど、これなら「スーパー台風」を名乗っても
無理のないデカさだなーと、思ってしまうが、
厳密にいえば、
あの超巨大ハリケーン=「スーパー台風」というわけではない。

話は、「台風」の定義から始まる。
以前「台風」について取り上げたとき、「台風」とは、
熱帯低気圧の風速が、毎秒17.2mを超えたものだと書いた。
この風速が、毎秒33mを超えると「強い台風」となり、
毎秒44mを超えると「非常に強い台風」と表現されるようになる。
さらにこれが毎秒54m以上になると、
「猛烈な台風」と表現されるようになり、
日本の気象庁では、これ以上の強い表現というのは存在していない。
では、このうち、どれくらいの風速が出れば、
気象庁が「スーパー台風」とするのか?ということになるが、
実はどんなに強い風が吹いていたとしても、
日本の気象庁が、それを「スーパー台風」とすることはない。
なぜなら、「スーパー台風」というのは、
日本で生み出された定義ではないからである。

では「スーパー台風」というのが、どこの国の定義なのかといえば、
先ほど超巨大ハリケーンの所で出てきた、アメリカの定義である。
アメリカでは、風速が毎秒32.7m以上のものを
「ハリケーン」と呼ぶ。
これを日本の基準にあてはめてみると、
「強い台風」にかなり近いということになる。
もっとも、アメリカの風速の求め方は、1分間の平均風速であり、
日本のそれは10分間の平均風速になるので、
実は、同じ秒速でもアメリカの数字の方が高くなる。
そのアメリカの基準では、風速が秒速67mを超えると、
「スーパー台風(スーパータイフーン)」ということになる。
もちろん、これもアメリカ基準の数字になるので、
これを日本基準の数字に計算し直すと、
大体、秒速54mということになり、
日本基準の「猛烈な台風」と、ほぼ同じということになる。

今回のニュースを見る限りでは、
今年発生した「台風1号」が、
「スーパー台風」になったということなので、
日本基準でいえば、「猛烈な台風」になったと
言い換えることも出来る。
ニュース記事によれば、
「台風1号は、フィリピンの東で中心気圧900hPaに達し、
 米国ではスーパー台風(super tyhoon)に
 分類される勢力にまで、急速に発達した」
とあるので、まるで気圧が900hPaにまで下がれば、
「スーパー台風」であるような書き方をされているが、
実際には、そこまで気圧が下がったことにより、
「台風1号」の風速が、
秒速54mにまで強まったということだろう。

この「スーパー台風」ともいえる「猛烈な台風」であるが、
日本のある北西太平洋地域では、
ここ39年間で83個発生している。
(もちろん、当該地域で発生したというだけのことで、
 日本へ上陸した数ではない)
おおよそ1年間で2.1個の「スーパー台風」が
発生している計算になる。
この83個の「スーパー台風」の中心気圧を調べてみると、
おおよそ930hPaから870hPaの範囲で分布している。
これらを考えると、
「台風」の中心気圧が930hPaを下回った場合、
その「台風」が「スーパー台風」になる可能性が出てくる、
ということだろうか。
日本に上陸した「台風」のうち、
もっとも風速の強かったものは、
昭和40年に上陸した「台風23号」で、
何と秒速69.8mを記録している。
堂々たる「スーパー台風」である。
また、死者行方不明者5000人以上を出した
あの「伊勢湾台風」も「スーパー台風」であった。

さて今回、「スーパー台風」へと発達した「台風1号」だが、
このニュースを聞いて、おや?と、思った人も
いたのではないだろうか。
「スーパー台風」へと発達した、ということではなく、
「台風1号」という所である。
詰まる所、これは北西太平洋地域において、
今年初めて発生した「台風」であるということだ。
発生したのが、7月に入ってからのことになるので、
1月から6月までの6ヶ月間、
まったく「台風」が発生しなかったことになる。
早くに「台風」が発生する年では、
1月に「台風1号」が発生したこともあるくらいなのだが、
平均的なことをいえば、5月までに発生するというのが、
大体の目安となっている。
それからしてみれば、7月に入ってから
「台風1号」が発生するというのは、
明らかにそのタイミングが遅い。
どうして、このようなことになったのか?

実はその原因は、2014年の夏に太平洋の東部で発生した、
「エルニーニョ現象」だと考えられている。
え?3年も前の?と、思われるかも知れないが、
この海面水温の上昇する自然現象は、
ひとたび発生すれば、数ヶ月から数十ヶ月続くことがある。
2014年の夏に発生した「エルニーニョ現象」は、
今年、終息すると見られている。
この現象が終息すると、
インド洋の海面水温が上昇して低気圧となり、
赤道に沿って、インドネシア付近にまで伸びて来ることになる。
さらにフィリピン東方から、インドネシアの低気圧に向かって
北東風が吹くことで、「台風」の発生場所となっている
フィリピン付近に高気圧が張り出し、
「台風」が発生しにくい状況になるという。
ここ数十年の間で、台風発生の遅かった年を挙げると、
1998年の7月9日、1973年の7月2日、
1983年の6月25日などがあるが、
これらの年も「エルニーニョ現象」の終息の年だったらしい。
今年の「台風」の発生も、これに匹敵する遅さである。
気象台によると、今年6月から7月までは
太平洋高気圧の張り出しが強く、
フィリピン付近での積乱雲の発生が少なくなり、
「台風」の発生しにくい状況が続くが、
8月になるとだんだん例年並みの高気圧配置に近づくという。

学者の中には、近年、地球温暖化の影響により海水温が上昇し、
強烈な「台風」が発生しやすい状況に
なりつつあるという人もいる。
ひょっとしたら、これからだんだん今回の様な
「スーパー台風」が頻繁に発生し、
それが日本にやって来る回数も、増えて来るのかも知れない。

日本は昔から、数多くの「台風」の被害を受けて来たせいで、
その対策が進んでいる国ではあるが、
「スーパー台風」が頻繁にやって来るようになるとするならば、
今一度、台風対策について考え直す必要があるのかも知れない。

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