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シカの解体〜その3

更新日:

無事にシカの解体が終わった。

かつて参加した「狩猟体験会」では、
熟練の猟師が、1体15分ほどで解体していたが、
今回の解体では、1時間30分ほど時間がかかった。
全くの素人である自分(魚は捌いたことがある)と、
まだまだ経験の浅い猟師である友人との2人では、
熟練と比べて、6倍ほど時間がかかってしまった。
(もっとも、経験が浅いとはいえ、
 解体経験のある友人1人でやれば、
 もっと早く終わっていたかも知れない。
 さらにいえば、解体現場の後片付けもしたので
 解体だけでいえば、もうちょっと早く終わっていたのだが)

とりあえず帰宅すると、そのまままな板と出刃包丁を用意し、
早速の精肉作業に取りかかる。
目立っている「筋」部分を切り離し、
食べよい大きさに切り分けていく。

まず「背ロース」に関しては、
5ミリほどの厚さにスライスしていき、
それを刻んだタマネギ、市販の「焼き肉のタレ」と和える。
それをそのまま夜まで置いておき、
これをフライパンで焼いて「焼き肉」とする。
「背ロース」は元々軟らかい部位ではあるが、
さらに刻んだタマネギと和えることによって、
肉質を軟らかくしようとしたわけである。
この部位に関しては、他の箇所のように
「筋」というものが全く無く、実に加工しやすい。
作業は驚くほどあっさりと終わった。

さて、残りの部分である。
残りの部分といっても、
皆、適当な大きさに切り分けているので、
正直、どの肉塊がどの部分なのか、さっぱりわからない。
もっとも「背ロース」以外では、
シカの足に付随していた部分しかないわけだから、
いわゆる「モモ」の部分と、「肩」の部分、
あとは「スネ」ということになるのだろうか。
「スネ」というのは、非常に細い筋肉の集合体で、
牛の「スネ肉」と同じように、非常に固そうである。
どうすればいいのかわからないが、とりあえず
「スネ」と思われる部分だけを、肉塊の山の中から取り出し、
ひとまとめにしていく。

肉塊を1つみてみると、ちょっと大きな赤味の箇所があった。
いくつか筋らしきものもついているが、
それを取り除いて尚、充分な大きさの塊が残る。
恐らくは、そこが「モモ」なのではないかと当たりをつけた。
そこの部分は、大きく厚めに切り分けて、
ステーキ、ソテー、カツなどに加工できるようにした。
シカ肉のステーキ、シカ肉のソテーなどは、
字面の上だけでいえば、高級フランス料理のように見える。

しかし、なんとか当たりをつけられたのは、
先に書いた「スネ」と「モモ」の部分だけで、
後は、どこがどうなっているのか、さっぱりとわからない。
とりあえず、目立つ「筋」を苦労しながら取り外していく。
ある程度の大きさのある肉塊なら、「筋」を取り除いても
充分な可食部分が残るが、
小さな肉塊だと「筋」を取ってしまえば、
後にはほとんど何も残らないようなこともある。
やがて手も包丁も肉の脂(脂身は全く無いのだが、
赤味の部分を触っていても、ヌルヌルとはしてくるのである)で
ベトベトになってしまった。
いくら苦労しても、全く見返りのない作業というのは心が折れる。
「筋」を全て取り除くことは諦め、
なるべく「筋」部分が細かくバラバラになるように、
肉の塊を切り分けていった。

その結果。
市販のカレー肉のようなブロック状の肉と、
焼き肉などに使われるような、やや厚めのスライス肉を、
そこそこの量、切り分けることに成功した。

これで肉の山が無くなってくれていたのなら、
何の問題も無かったのだが、まだまだ筋の多そうな部分と、
いかにも固そうな「スネ」の部分が、同量以上に残っていた。
今回のシカ肉を手に入れた際、
どうしても1人では消費しきれない上に、
冷蔵庫でもそれほど長期間の保存は不可能なことは、
わかっていた。
いつも使っている冷蔵庫には、冷凍スペースもついているのだが、
そのスペースは余りに小さく、ほとんど冷えないので、
長期の冷凍保存というのも、出来るかどうか怪しい。
そうなると、誰かに肉をあげるしかない。
そこで弟と友人の1人に連絡を取り、
シカ肉を貰ってくれるように頼み込んだ。
さすがに人に貰ってもらうのだから、おかしな部分はやれない。
「背ロース」だけは、自分の腹に収めるつもりだが、
この友人に渡す分には、先ほどの「ステーキ用」と
「ブロック状」の部分、「スライス肉」をあてることにした。
つまりかなり「イイ」部分が無くなり、
「筋」が多くて、固そうな部分だけが手元に残ることになった。

とりあえず、「スネ」の部分を1口大のブロック状に切り分け、
残りの部分も全て、「筋」のことは考えず、ブロック状にした。
何せ、「筋」が多すぎて、そのことを考えれば、
全く料理する気をなくしてしまいそうな肉なのだ。
ひととおり、肉を1口大にした所で、これを冷蔵庫にしまい、
タマネギと焼き肉のタレにつけ込んでおいた肉を、
フライパンで焼いた。
これはかなりウマかった。
元々軟らかい肉に、しっかりと味がついており、
あっという間に平らげてしまった。
難をいうならば、肉自体に脂が少ないため、
コッテリ感が少なかったことだろうか?
まあ、これがシカ肉だと思えば、それまでのことだが。

翌日、ブロック状に切り分けた肉を全てシチューにするべく、
ビーフシチューの即席ルゥを買いに、スーパーへ出かけた。
安いものだと100円そこそこ、高いものでも300円ほどだ。
肉が、かなり固そうな部分を使うので、
失敗することも考えて、安いルゥにしておいた。
赤ワインなどで煮込む、本格的なやり方も考えたのだが、
全く脂っ気のない肉を、これまたサッパリとワインで煮込んだら、
余りに味気ないものが出来そうだったので、
脂っ気の多い、即席ルゥを使うことにした。
ルゥと、ニンジン、ジャガイモを買って帰り、
昨日、買っておいたタマネギと合わせて調理を始める。

まずは鍋にタップリと油を入れて、
これを充分にからめるようにして、シカ肉を炒める。
肉はたっぷりあるものを、全て炒めた。
肉に火が通ると、これを一旦取り出し、
刻んだ野菜類を同じ鍋で炒める。
野菜に火が通ったら、そこに肉を戻し、水を適量、
ブイヨンがないので、和風ダシの素を入れて煮立たせる。
シカ肉のせいか、恐ろしいほど出てくるアクを全てすくうと、
一旦火を止めて、即席ビーフシチュールゥを割り入れる。
ルゥをきれいに溶かした後、火をつけて一度煮立たせ、
鍋ごと毛布で包んでしまう。
後はそのまま、何時間か放置しておけばいい。
実質的な調理時間は、20分くらいだろうか。

数時間後、毛布の中から鍋を取り出し、
鍋の中をかきまわしてみて、笑ってしまった。
肉が9割、野菜が1割である。
肉だけが、やたらゴロゴロと存在感がある。
こんなに肉の多い、ビーフシチューは初めてだ。(シカ肉だが)
早速、皿に盛りつけて食べてみる。
ウマい。
心配していた肉の「筋」は全く無くなっており、
「スネ」肉もサクサクと噛み切れる軟らかさだ。
一生懸命、「筋」を取ろうとしたのがバカみたいだ。
シカ肉独特のクセは、濃い味のビーフシチュールゥにつつまれ、
全く気にならなくなっている。
しかも肉に脂っ気がないのを、コッテリと脂っぽい
即席ルゥが補っていて、なかなかの出来上がりである。
思わずおかわりまでして、シカシチューを堪能した。
マジメな話、ちょろっとシカ肉が入っているだけの
シカコロッケやシカカレーよりよっぽどいい。

いずれまた、シカを解体する機会があれば作ってみたいが、
そんな機会は、そうそうあるものではない。

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