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大衆演劇

更新日:

By: yoppy

故あって、何度か大衆演劇を観に行ったことがある。

興味がないのか?と聞かれて
全くない、と答えるほど、
大衆演劇には興味がなかった。
と、いうよりは、それまでの自分の人生の中に、
「大衆演劇を観る」という発想自体が無かったのだ。
興味の有る無し以前の状態だったといっていい。

そういう所へ「大衆演劇を観に行かないか?」という
お誘いである。
途端に好奇心がうずきだした。
それまでの自分の人生に、
全く無かったことだというのが、良かった。
一体、どんなものを観れるのか、
全く想像できないという所が決定的だった。

と、いっても「大衆演劇」について、わずかな知識はある。
何十年も生きていれば、TVや何かで
「大衆演劇」を演じている所を目にする機会もある。
ニュース番組などで取り上げられることもあるし、
ドラマやマンガの中などに出てくることもある。
逆に言えば、そういうものに出てくる
非常に断片的な知識だけが、
それまでの自分の持っている、大衆演劇の全てであった。
カツラを着け、顔を塗りたくり、派手な衣装を着た役者が、
舞台の上で見栄を切る。
断片的な知識というのは、これで全てだ。
それ以外については、何も知らない。
恐らく、「観に行かないか?」という話が無かったら、
この先も一生、観に行くことは無かっただろう。
そういう意味では、貴重なお誘いだったわけである。

詳しく話を聞いてみれば、大阪の高槻まで行くという。
思わず、え?そんな遠くに?と聞き返していた。
精々、姫路かそこら辺りだろうと思っていたのだが、
姫路近辺には、大衆演劇をやっている小屋が無いという。
詳しく聞いてみれば、大衆演劇を上演している芝居小屋は
大阪に多く、兵庫県内には少ないという。
さらに聞いてみれば、贔屓している役者が、
ゲストとして出演しているので、それを応援に行くのだという。
なるほど、そういう事情があるのであれば、
適当な芝居小屋へ、というわけにもいかない。
かくして車を走らせ、
大阪高槻市の芝居小屋へ向かうこととなった。

高槻市の芝居小屋は、商店街の中にあった。
イメージからすると、
かなりボロボロのものを想像していたのだが、
かなり新しい建物で、同じフロアで
カラオケ店なども営業しているようだ。
決して大きな場所ではないものの、
座席数も100席以上はある。
入り口で入場料を払う。
価格は1500円〜2000円ほど。
映画を見るのと同じ程度の値段である。
これで3〜4時間、楽しめるわけだから
コストパフォーマンスは良い。
開演前に小屋の中に入る。
ほぼ最前列に近い席に座ることが出来た。
熱心なファンと思われるオバちゃんが、近くに座っている。
周りを見回してみると、同じ年代のオバちゃんばかりだ。
ちょうど自分の母親と同じくらいの歳のオバちゃんばかりで、
はっきりいって自分たちは、浮きまくっている。
平日だったためか、客の入りは3〜4割といったところ。
時間が来ると、座長挨拶があり、
舞台構成が説明される。
この後も、何回か大衆演劇を見たが、そのどれもが
前半がお芝居、後半が歌と踊りという構成になっていた。

そして本番、いよいよお芝居が始まる。
こういう芝居一座というのは、
ほとんどが家族によって構成されている。
つまりお父さんにお母さん、子供たちに、爺さん、婆さん
という面子が揃っている。
これに伯父さんや叔母さんなどが加わり、
さらにこの家族と関係のない劇団員が1〜2人いる。
総勢10人程度というのが、平均的な所らしい。
芝居はほとんどが「任侠もの」である。
○○の親分やら、無宿人の○○なんていうのが出てくる
江戸時代のやくざ者たちのストーリーだ。
シナリオは劇団オリジナルのもので、
そのほとんどが「任侠もの」らしい。
芝居の時間は結構長く、1時間半から2時間ほどだ。
随所にお客を飽きさせないための、ギャグが配されている。
照明なども凝っていて、見ていて飽きることは無い。

芝居が終わると、わずかな休憩時間を挟んで
歌と踊りのショーが始まる。
劇団員が1〜3人ずつ舞台に出てきて、踊りや歌を披露する。
ここで驚くべきことが起こる。
それまで客席でおとなしく劇を見ていたオバちゃんたちが、
舞台下まで行き、お気に入りの役者の衣装の襟元に
クリップで現金を挟むのである。
いわゆる「おひねり」であろうが、
その挟む金額が振るっている。
1万円札を扇のように広げ、和服の襟に挟んでいく。
少ないもので2〜3万、自分の見た最高のものでは
10万円ほどが襟元に挟み込まれていた。
これを、何人ものオバちゃんがやるのである。
たちまち役者の衣装が、カネまみれになる。
しかも1人の役者には、出番が3〜4回もある。
オバちゃんたちはその度に、襟にお金を挟みにいくのだ。
凄まじい光景である。
昨今、某アイドルグループの握手会の入場券を手に入れるため、
同じCDを何百枚も買うファンが話題になっているが、
これは「それ」よりも随分と直接的である。
このオバちゃんたちと、アイドルグループのファンの行動は、
基本的に同じものだと考えていいだろう。

歌と踊りのショーが終われば、座長挨拶の後、
その回の舞台が終わる。
観客たちが席を立ち、小屋を出て行くと、
小屋の外では、役者たちが総出でお見送りをしてくれる。
握手や写真なども気軽に応じてくれて、
非常にサービスが良い。
オバちゃんたちも大喜びだ。

こういう大衆演劇の一座は、ひと月ごとに小屋を変え、
日本全国を回っている。
子供たちはひと月ごとに転校を繰り返すのだから、
かなりハードな仕事には違いない。
上演は昼の部、夜の部と1日2回。
同じ芝居をしていては、観客に飽きられてしまうので、
毎日違う演目を上演している。
その全ての芝居の台詞を覚えているのだから、
役者というのは本当に凄い。
以前、情報番組で、最近若い女性で、
大衆演劇にはまる人が増えていると言っていたが、
値段の安さと、溢れるサービスを見れば
そういうことも起こるか、という気にさせてくれる。
(もっとも自分が何回か観に行った限りでは、
 若い女性の観客など1人もいなかったのだが……)

芝居小屋自体がかなり少ないため、
なかなか大衆演劇を観る機会は無いかも知れないが、
一度、観てみる価値はある。

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