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タンポポ

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「コーヒー」は、コーヒーノキという植物の種子を
焙煎して挽き、湯または水で成分を抽出したものである。
「茶」は、チャノキという植物の葉を乾燥させ、
あるいは発酵させてから乾燥させたものを、
湯または水で抽出したものである。

どちらにしても、それぞれ全く別の植物の
「種子」と「葉」を加工し、湯または水で抽出した飲み物で、
どちらも全世界的に愛飲されている。

だが、世の中には、
「コーヒー」も「茶」も作れる植物がある。
……。
いやいやいや、ちょっと待てや、
という突っ込みが聞こえてきそうだ。
「コーヒー」にしても、「茶」にしても、
決まった植物の、決まった部位からしか作れないものである。
極端な話、「コーヒー」の葉を加工しても「茶」にはならないし、
「茶」の種子を焙煎しても「コーヒー」にはならない。
(似たようなものには、なるかも知れないが……)
たったひとつの植物から、この両方を作るというのは、
常識で考えても、あり得ない話である。

だが実際に、我々のすぐ身の回りに存在している
「ある植物」を加工することによって、
「コーヒー」と「茶」を作り出すことが出来る。
そして、その「ある植物」というのが、タンポポなのである。
え?タンポポ?
タンポポって、そこら辺の道端に生えている、あのタンポポ?
と、驚かれるだろう。
間違いなく、そこら辺の道端に生えているあのタンポポである。
あのタンポポから「コーヒー」と「茶」を
作ることが出来るのである。
その名を「タンポポコーヒー」と「タンポポ茶」。
……。
そのまんまやないかいっ!という突っ込みが聞こえてきそうだ。

タンポポの根を掘り出し、水にさらしてアクを抜き、
さらにそれを細かく砕いて焙煎する。
これを普通のコーヒーを入れるのと同じように、
湯や水で抽出すれば、
「タンポポコーヒー」の出来上がりである。
元々は19世紀のアメリカで考案されたもので、
第2次世界大戦中にコーヒー豆が不足した際には、
コーヒーの代用品として飲まれていたこともある。
本家のコーヒーとは違い、カフェインを全く含んでいないので、
子供や妊婦なども、普通に飲むことが出来る。
普通のコーヒーが簡単に手に入るようになった現在でも、
このノンカフェインという所をウリにして、生き残っている。
単純な「コーヒーの代用品」ではないということである。

「タンポポコーヒー」が、
タンポポの「根」のみを焙煎して使うのに対し、
「タンポポ茶」では、
「根」の他に「葉」や「茎」なども使われる。
「タンポポコーヒー」との違いは、
これらを焙煎していないことだろう。
もちろん、この「タンポポ茶」もカフェインを含んでいないので、
子供や妊婦でも、飲むことが出来る。
それどころか「タンポポ茶」には、
母乳の出や質を良くしたり、
不妊治療をサポートするといった効果が認められているため、
妊婦の強い味方であるともいえる。
こちらもまた、単純な「茶の代用品」ではないのである。

タンポポはキク科タンポポ属に属する
多年生草本の総称である。
多くの種では「黄色」の花をつけ、
綿毛(冠毛)のついた種子をつくる。
葉は独特のギザギザとした形をしており、
タンポポの英語名である「ダンディライオン」は、
そのギザギザの形が「ライオンの歯」に似ている所からきている。
現在、国内で見られるタンポポの大部分が、
明治時代に北アメリカから移入されたセイヨウタンポポである。
長らく、外来種であるセイヨウタンポポは、
在来種のタンポポを駆逐していると思われており、
事実、環境省指定の「要注意外来生物」に指定されてる。
また「日本の侵略的外来種ワースト100」にも選ばれており、
一部地域では積極的に駆除されている。
ただ、実際には在来種と外来種では、
しっかりと住み分けが出来ているという話もある。
しかし現在では、在来種と外来種の交雑による、
雑種のタンポポも現れており、
これもまた、新しい問題になっている。
在来種と外来種の見分け方については、
花の裏を見たときに、
花の真下がペリッとめくれているのが外来種、
同じ場所がめくれていなければ在来種である。
近年では在来種と外来種の交雑が進み、
ちょっとおかしな感じにめくれていたりするものもあるが、
在来種と外来種を見分けるひとつの目安である。

「タンポポ」という名前の由来には諸説があり、
種子の冠毛が丸く集まっている様子が
「たんぽ」(綿を丸めて布なので包んだもの)に
似ているためという説や、
元々「タンポポ」は、茎の両端を細かく裂くと、
反り返って鼓のような形になることから
「鼓草(つづみぐさ)」と呼ばれており、
「タンポポ」というのは、鼓を叩くときの
「タン、ポンポン」という音からきているという説がある。
かたや「冠毛」由来であり、
かたや「茎」由来である。
どちらも「花」に由来していない所が面白い。
「タンポポ」を漢字で書くと「蒲公英」となるが、
これは「タンポポ」の漢名からきているので、
ただの宛て字にすぎない。

さて、「根」をコーヒー、「葉・茎・根」を茶に
加工できることからもわかるように、
タンポポは食べることが出来る。
若い「葉」は水にさらした後、
サラダとして生食することが出来る。
さらに「花」は天ぷらにして食べることが出来る。
詰まる所、タンポポは花から根に至るまで、
全草が食用になる、ということである。
そこら辺に、ごく当たり前に生えているので、
なかなかそれを採取して「食べる」ということには
考えが至らないが、
興味があるのであれば、食用にしてみるのも良いだろう。
先に書いた「タンポポコーヒー」にしても、
「タンポポ茶」にしても、
家庭で普通に加工することが出来る。
もちろん、インターネットで検索してみれば
「タンポポコーヒー」も「タンポポ茶」も、
販売している所はたくさんある。
ただ、調べてみた所、「コーヒー」にしても「茶」にしても、
ちょっと割高な感じは否めない。

むしろそこら辺から採集して来て、
自分で加工した方が、面白いかも知れない。

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