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オリーブオイル

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かつて、日本で「オリーブオイル」といえば、
イタリア料理とか、小豆島とか、健康食品とか、
そういうイメージであった。
早い話、「オリーブオイル」=「○○」という、
決まりきったイメージを持っていなかったのである。

ところがここ数年で、それが変わった。
現在、「オリーブオイル」といえば、
あるイケメンタレントが浮かんでくる。
というのも、そのイケメンタレントが担当していた
朝の情報番組内での料理コーナーで、
彼が「これでもか」というほどに
オリーブオイルを使ったからである。
料理の下拵えにオリーブオイルを使い、
フライパンにひくのはもちろんオリーブオイル。
サラダのドレッシングにもオリーブオイル。
揚げ物にもオリーブオイル。
挙げ句の果てには、
料理の仕上げにもオリーブオイルを振りかける。
まさに、隙あらばオリーブオイルを使っていくという、
徹底したポリシーが貫かれていた。
そのイケメンタレントのオリーブオイルへの、
尋常ならざる思い入れを、
ひしひしと感じざるを得なかったのである。

件の料理コーナーはたちまち大人気となり、
その情報番組内でも飛び抜けた人気と、
視聴率を獲得するに至った。
うちの甥っ子も、このコーナーの大ファンで、
ままごとで料理を作る真似をしながら、やたらと
「ここで、オリーブオイルを~」と
料理に振りかけるポーズをとっていたのである。

日本人の使用する食用油の中では、
「オリーブオイル」はまだまだ少数派である。
大豆油、菜種油などという、
古くからの食用油と比べてみると、
まだまだマイナーな油であり、知名度も低い。
それが、件のイケメンタレントに使われることによって、
にわかにその名前が注目された。
「オリーブオイル」とは、一体どんな油なのだろうか?

何のことはない、
「オリーブオイル」は、そのまま読んで字の如し、
オリーブの果実から採取される食用油である。
オリーブはモクセイ科の常緑樹で、
地中海地方が原産地とされる。
果実は暗い黄緑色をしていて、
この色は「オリーブ色」ともいわれる。
オリーブの果実は、その果肉、種子ともに
大量の油分を含んでおり、
一般的に我々のいう「オリーブオイル」は、
この果肉から採取された油のことをいう。
オリーブオイルは加熱処理や溶剤抽出をしなくても、
常温のまま果汁を絞り出し、
放置しておくだけで採取することが出来る。
時間とともに果汁の中の油分が分離して、
その表面に浮かんでくるのである。
もっとも、実際には果実をすりつぶし、
それを遠心分離機にかけることによって
油分のみを抽出している。
オレイン酸を豊富に含んでいるため、酸化しにくく、
固まりにくい性質を持つ「不乾性油」である。

スーパーの食用油売り場に並んでいる
オリーブオイルを見てみると、
いくつかの種類があることに気がつく。
例を挙げてみると、
「ヴァージン・オリーブオイル」
「エキストラ・ヴァージン・オリーブオイル」
「ピュア・オリーブオイル」
などである。
先に書いたとおり、オリーブの果汁を遠心分離機にかけ、
そこから油だけを取り出したものを、
「ヴァージン・オリーブオイル」という。
この「ヴァージン・オリーブオイル」の中でも、
特に酸度が低く、専門家による官能検査にパスした
高品質なものだけが
「エキストラ・ヴァージン・オリーブオイル」を
名乗ることが出来るのである。
(国際オリーブオイル協会の規定によると、
 さらに油を搾る段階で、化学的溶剤を使わず、
 機械的な方法のみで、摂氏27度以下で
 抽出しなければならない、とある)
さらに品質の劣るオリーブオイルを精製したものを、
「精製オリーブオイル」、
さらにこの「精製オリーブオイル」に、
そこそこの品質のオイルをブレンドし、
酸度を1.0%以下にしたものを
「ピュア・オリーブオイル」と呼んでいる。
また、オイルを絞った搾りかすから化学溶剤を使い、
さらに油を抽出したものを
「ポマース・オイル」と呼ぶ。
この「ポマース・オイル」は、
成分がオリーブオイルとは異なっているため、
「オリーブ・オイル」を名乗ることは出来ない。
基本的に食用には回されず、工業用などに使われるが、
この「ポマース・オイル」を精製し、
食用にしたものもあり、
格安のオリーブオイルなどは、
この手のものであることが多い。
その場合、「ポマース」と表示することが
義務づけられており、
オリーブオイルの品質を見る、ひとつの目安になる。
 
オリーブオイルは、
かなり古い時代から使われていた油であり、
一説では7000年前から、
地中海地方でオリーブが栽培されていたという。
利用法は多岐に渡り、食用油としての他にも、
スキンローション、ランプ用の燃料など、
人の暮らしに密接に関わっていた。
さらに交易品としても、重要な位置を占めており、
古代フェニキア人たちは、これを船で遠隔地まで運び、
オリーブオイルを広めていった。
古代フェニキア人がオリーブオイルの運搬に使った
「アンフォラ」と呼ばれる特徴的な形状をした容器が、
地中海全域で見つかっていることから、
彼らの活躍は、地中海地方全域に及んでいたことがわかる。

日本にオリーブオイルが伝えられたのは安土桃山時代で、
ポルトガル人の宣教師が持ち込んだといわれている。
ただ、これはあくまでも「油」として持ち込まれたもので、
栽培のためのオリーブ(木)が持ち込まれたのは、
ずっと時代が下り、
明治41年(1908年)のことである。
魚の油漬け加工用のオリーブオイルを
自給するために、アメリカより持ち込まれ、
三重県、鹿児島県、香川県で試験的に植えられたが、
順調に育ったのは
香川県の小豆島に植えられたものだけであった。
恐らくは瀬戸内海に浮かぶ小豆島が、
オリーブの原産地である地中海と
似た立地、気候をだったためだろう。
現在でも小豆島では
あちこちにオリーブが植え付けられており、
島内を回ると、それらのオリーブを見ることが出来る。

そのような経緯もあり、現在、小豆島では
オリーブとオリーブオイルを使った
様々な特産品が作られている。
食用のオリーブオイルを始め、
オリーブオイルを使ったサラダドレッシングや調味料、
オリーブの実を使った塩漬けやピクルス、
さらには各種化粧品や石鹸などが、
島内の土産物屋で販売されている。
変わったものして、
オリーブオイルで小麦粉を捏ねたオリーブそうめん、
オリーブラーメン、オリーブパスタ、
さらにオリーブ茶、オリーブコーラ、
オリーブサイダーなどのドリンク類、
オリーブグラッセ、オリーブチョコなどのスイーツ、
オリーブカレーやオリーブ茶海苔(佃煮)など、
もはや、やりたい放題といっても良いだろう。
あのイケメンタレントが、
料理にオリーブオイルを多用するのが可愛く思えるほどだ。
ちょっとした悪ふざけのようにも思える。
だが、小豆島産の質の良いオリーブを使っているためか、
どれもそれなりにウマく仕上がっている。
(試食で確かめた感じでは)
どれを購入してみても、
そうそう後悔するようなことはないだろう。

かつて、友人と小豆島を1周する自転車旅行に
出かけたことがある。
そのさい、小豆島を走ってみてわかったのは、
あちこちに植え付けられているオリーブの木と、
島中の土産物屋で販売されている「オリーブ土産」だ。
小豆島の並々ならぬ「オリーブ」へのこだわりが
ひしひしと伝わってきた。

この自転車旅行をした時は、まだ、
イケメンタレントがオリーブオイルに狂う前だったのだが、
「オリーブオイル」狂いの彼にとって、
この島はきっとパラダイスに違いない。

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