雑学、雑感、切れ味鋭く、思いのままに。

Falx blog 2

雑感、考察 食べ物

ダムカレー

投稿日:

By: Dirty

先日、図書館から「ダム大百科」なる本を借りてきて読んでいると、
ちょうどその中に、こんな記事があった。

「ダムに行ったら、ダムカレー」

ちょうど本の中程で、見開き2ページに渡る紙面に
おいしそうなカレーの写真が何枚も印刷されている。
全編通して、コンクリート率の高いこの本において、
この2ページだけは全く異質で、
完全に周りから浮いてしまっている。

……。
ここで、早くも頭が混乱している読者もいるだろう。
そう。
そもそも、その「ダムカレー」とは一体何なんだ?
ということである。

「ダムカレー」とは、ご飯をダム、カレーをダム湖に見立てて、
器に盛りつけたカレーライスのことだ。
もちろん、この「ダムカレー」を作るためには
普通の平皿などの深さのない器では難しい。
皿というよりは、丼といった方が良いような「深さ」のある器が
「ダムカレー」を作るのに向いている。
深さのある器の中央部辺りに、ご飯を固めて堤体を作ると、
ちょうど器の中は、このご飯の壁によって
2つの空間に分けられることになる。
この片方の空間に、カレールウを流し込めば
「ダムカレー」の完成となる。
見ようによっては、ご飯で出来た「ダム」が
カレールウをせき止めているように見える。
「ダムカレー」の中には、反対の何も入っていない空間に
福神漬けなどを配し、これをダムから流れ出る
水に見立てているものもある。

歴史的に言えば、昭和40年代に
黒部ダムの長野県側の入り口である扇沢駅の大食堂で、
「アーチカレー」が販売され始めたのが、
その始まりとされる。
(厳密に言えば、昭和38年に大町クラブハウスで
 「アーチカレー」が提供されていた。
 ただ、これは期間等も限定的なものだったらしく、
 これが本格的に販売され始めたのが、
 扇沢駅の大食堂だったようである)
ただ、この「アーチカレー」は、形状こそダムを模していたが、
「ダムカレー」という名前が使われるようになったのは、
グッと時代が下がって2007年、東京の飲食店で販売された
「アーチ式ダムカレー」がその最初となる。
ちょうどこのころ、工場やジャンクション、高架橋、送電鉄塔、
団地、水門などの大規模建造物や、廃墟などを
エンターテイメントとして楽しむ風潮が注目され始めており、
その中で「ダム」も注目を集め、ダムマニアと呼ばれる人々が
マスコミなどに取り上げられることも多くなり始めていた。
この「アーチ式ダムカレー」は、そういう風潮にのって、
マスコミなどにも紹介され、注目を集めることとなった。
2009年ごろから「ダムカレー」は全国的に増え始め、
近年では年間20~30種というハイペースで増殖していき、
2017年現在、国内で
105種類の「ダムカレー」が確認されている。

さて、この「ダムカレー」、
素人が見ると、一見、器の中でご飯を固めて壁を作り、
その片側の空間にカレーを入れれば良いだけの様に思える。
(実際に、それだけの「ダムカレー」というのも存在する)
だが、そんな形だけの「ダムカレー」で、
コアなダムマニアを満足させることは不可能である。
(もっとも「ダムカレー」自体、
 コアなダムマニアによって作られたものなのだが……)
ご飯を盛って作られるダムの型状も、
実際のダムの型状を模して、「アーチ式」「重力式」
「フィル式」と作り分けられているのだ。
「アーチ式」のご飯は、丸くカーブを描くようにして固められており、
カレー圧(水圧)を地盤(器)に逃がす構造になっている。
「重力式」では、ご飯の重さによってカレー圧を受け止め、
「フィル式」では、広い底面から積み上げられたご飯によって
カレー圧を受け止める構造になっている。
正直、素人が見れば「重力式」と「フィル式」の違いなど、
全く見分けがつかないかも知れない。
さらに最近の「ダムカレー」の中には、
ご飯で出来た堤体にウインナーソーセージで出来たバルブを取り付け、
カレーを放流できる(?)ものもある。
そこまでやるのか?と、呆れてしまうくらいのこだわりである。
当然、カレールウ自体は「水」を模しているため、
なるべく具材を排したルウのみが使われることが多いのだが、
ちょうど、ルウの入っている反対側の空間が空いているため、
ここにサラダやフライものを入れる「ダムカレー」も多い。
(ダムらしさを重視する場合は、何も入れないらしい)

現在では、日本中ほとんどの都道府県で
この「ダムカレー」が販売されている。
それらの写真を眺めていると、一体、これのどこがダムなの?
と、ツッコミを入れたくなるものもいくつかあるのだが、
そういう場合は、ダムの特徴的な部分のみを
デフォルメしている場合もあり、
よくよく調べてみると、その近隣のダム(大体「ダムカレー」は
「ダム」近辺の食堂などで提供されている)の特徴を
しっかりと捉えていた、なんていうこともある。
もし「ダムカレー」を食べに、地方へ足を伸ばす場合、
忘れずに、そのモデルとなった「ダム」も見学するようにしたい。
(もっとも、本来的には「ダム」見学がメインで、
 「ダムカレー」は、あくまでもそのオマケというのが、
 一般的であるようだ)

ここまで、日本各地で販売されている「ダムカレー」に的を絞って
色々と話を書いてきたのだが、
この「ダムカレー」、わざわざ食べに行かずとも、
ひょっとして家で簡単に作れるのでは?と考えた人もいるだろう。
まあ、実際に、ちょっと深めのカレー皿などがあれば、
そこにご飯を入れてチョイチョイと細工することで、
わりと簡単に自宅でも再現することが出来る。
堤体を薄くカーブを付けて作る「アーチ式」以外であれば、
要は、カレー皿の中にご飯の壁を作れば良いだけなので、
シャモジを使ってペタペタやっていると、
それらしきものは、すぐに出来上がる。
後は、そのサイドの空間にカレールウを流し込むだけである。
本物のダムの様に、「水」を入れるということになれば、
ご飯製の「ダム」では、あっという間に決壊してしまうだろうが、
粘度の高い、ドロリとしたカレーを入れるのであれば、
少々作りが甘くても、しっかりとこれを受け止めることが出来る。
(逆に言えば、粘度の低い「スープカレー」のようなカレーで
 「ダムカレー」を作ろうとすれば、難易度は跳ね上がるだろう。
 もっとも、より「水」に近い状態の「スープカレー」を使った方が、
 「ダムカレー」としての完成度は高くなるだろうが……)

そんなワケで、スーパーでレトルトカレーを買ってきて、
実際に「ダムカレー」を作ってみた。
ポイントは、用意するご飯の量と、
ダムに入れるカレールウの量である。
ご飯が少なければ、
ちゃんとしたサイズの「ダム」が作れないだろうし、
カレールウが少なければ、
全く渇水状態の「ダムカレー」が出来上がってしまう。
ご飯については1号ほど炊き、
レトルトカレーは300グラムほど入っている大盛りサイズを用意した。
大きめのカレー皿の中央に、ご飯で壁を作っていく。
1号といっても麦飯なので、それなりにボリュームがある。
結局、堤体の底部が大きく広がっている
「ロックフィル式」のようなダムが出来上がった。
ご飯粒の中に、大きい麦の粒が混じっているので、
見た目はかなり「ロックフィルダム」っぽい。
そしてそこへ、温めておいたレトルトカレーを静かに流し込んでいく。
300グラムの大盛りサイズを買ってきたのは正解だったようで、
ちゃんとダムの上部の辺りまでカレールウで満たされ、
仕上がりはかなりの完成度となった。

完成した「ダムカレー」は、堤体の堪水側から食べ進めていったのだが、
やはり堤体が大きすぎたのか、常時、カレールウが不足しないよう、
慎重に食べ勧める必要があった。
そのため、我が「ダムカレー」は食べている途中で
決壊してしまうようなことはなく、
最後まで下流に水(カレールウ)を流す事なく食べ終わってしまった。

きっと下流の住人たちは、水不足に苦しみ、
ただライスのみを食べるハメになったに違いない。

Related Articles:

にほんブログ村 その他生活ブログ 雑学・豆知識へ
にほんブログ村

スポンサーリンク
スポンサーリンク

-雑感、考察, 食べ物

Copyright© Falx blog 2 , 2019 All Rights Reserved Powered by STINGER.