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富士山とトイレ〜その1

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今までの記事で、「山」について
いろいろ書いてきたことからもわかるように、
自分は山が好きだ。

これは昔からではなく、
ある程度、歳をとってからのことなので、
実際に今までに登ったことのある「有名な山」というのは、
かなり少ない。
自分が主に登っているのは、
自分の住んでいる播磨地方を中心とした山が主で、
日本アルプスとか、立山連峰なんていうのは、
自分には全く関わりのない、「山の世界」である。
今までに森林限界を超えたのは、
鳥取の伯耆大山と、四国の剣山くらいのもので、
それ以外の山登りは、
終始、鬱蒼とした森の中を歩くのが、当たり前なのである。
いわば、いつもの山登りというのは、
いわゆる「里山歩き」に近い、
というよりは「里山歩き」そのものなのだ。

ただ、普段そういう山登りをしているだけに、
森林限界を超えているような高山には、強い憧れがある。
槍ヶ岳やら穂高岳なんていう、超メジャーな山には
是非、足を運んでみたいと思っている。
そういう憧れのある山の中で、
もっとも「それ」が強いのが、富士山である。
いわずと知れた、日本一の高峰だ。
兵庫県に住んでいる自分には、
普段の生活で、富士山を「生」で見る機会というのはない。
富士山の姿を見るだけでも、
100km単位で移動する必要がある。
関東方面へ出かけたときに、
ついでに見てくればいいのだが、
これまで2回ほど関東へ行ったことがあるのだが、
ついぞ富士山の姿を見ることは適わなかったのだ。

最初は大学時代、
就職試験のついでに甲府市の友人宅に泊まり、
富士山を生で見るチャンスに恵まれた。
が、残念なことに富士山は厚い雲に覆われ、
友人の車で裾野まで行ってみたものの、
ついぞ山体を見ることは出来なかった。
はるか左右の向こうに、
富士山の稜線の一部が見えただけである。
代わりに見えたのが、
あの悪名高い「オウム真理教」のサティアンであった。
当時すでに、事件の起こった後で、
施設の前には警察官が立っていた。
こちらには雲も霧もかかることなく、
くっきりしっかりと見えていた。

2度目は、自転車でえっちらおっちらと
東京まで行ったときである。
このときは東海道、つまり国道1号線を走り、
富士山を南から回り込むようにして、
東京へと向かったのだが、
このときも終始、富士山は厚い雲に覆われており、
前回と同じように、裾野の一部しか見えなかった。
しかも残念なことに、行き、帰りと
富士山の付近を2度通過したのだが、
そのどちらも、全く同じ状況であった。

調べてみると、冬の寒い時期で、
空気が澄んでいるときでないと
綺麗に富士山が見えることは少なく、
それ以外では、モヤや雲が
かかっていることが多いらしい。

そういうわけで、富士山については
それなりの憧れがあるのだが、
富士山に登った人の体験談を聞いていると、
わりとこういう意見を聞くのである。

「臭い」

……。
随分とひどい言われようであるが、
この「臭い」というのは、
かなりの人がそう言っている。
それも、火山性ガスなどの臭いではなく、
いわゆる人の排泄物の「それ」であるらしい。
え?あの富士山がウンコの香りなの?
全く、夢も希望もなくなるような感想である。
実は、富士山にはいくつもの山小屋や、
環境省が設置した公衆トイレがあるのだが、
そこからし尿が山肌へと垂れ流されていたのだ。
これらのトイレから垂れ流されたし尿は、
トイレットヘーパーなどと一緒に山肌を流れ、
「白い川」となって、こびりつく。
……。
言葉をなくしてしまいそうな事実である。
そりゃあ「臭い」という感想も出るだろう。

2005年まで、富士山にあるトイレでは
夏の登山シーズンにし尿をためておき、
シーズンオフになったときに山へこれをぶちまけ、
その後、雨や雪が降って、
次のシーズンの開始時には、
これが見た目にはわからなくなるという方式だった。
これが仮に、もっと低位置の、
木や草がたくさん生えているような場所であれば、
様々な微生物がこれらを分解するということは
あるかもしれない。
しかし、富士山の登山口より上は
すでに森林限界を超えており、
草や木は全くといっていいほど存在しない。
そんなところにし尿をぶちまけた所で、
マトモに分解されることなく、
雨や雪の水分で幾分薄まり、
山肌に広がっていくだけである。
高度が高く、気温が低い分だけ
微生物も少ない富士山では、
し尿はほとんど分解されないのである。
当然、トイレットペーパーなど分解されることもなく、
これが垂れ流れて、「白い川」を作り上げるのである。
当然、臭いも強く、霧に包まれて迷ったときには、
「臭い」のする方に向かえば山小屋があるなんて、
笑えない冗談が囁かれたりもしたのである。

さすがにこれはマズい、ということで、
杉チップとバクテリアを併用した、
「バイオトイレ」の設置が進められ、
2011年には、42ある全ての山小屋に
この「バイオトイレ」が設置された。
この「バイオトイレ」は、
普通の水洗式トイレと同じように使え、
杉チップの消臭作用と、バクテリアの分解作用によって、
し尿を炭酸ガスと水に分解してしまう、
自己完結型の循環式トイレだ。
ああ、これで富士山のトイレ問題は無事に解決、
したはずであったのだが……。

ところがどっこい、この富士山の「臭い」問題は、
しばらくの時をおいて、再び蘇ってくるのである。

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