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雑感、考察

ヤッホー

投稿日:

先日、早朝に、山に登っていたときのことである。
山頂まで後4〜500mという辺りを歩いていると、
突然、山頂の方から「ヤッホー」というかけ声が聞こえてきた。

この時期の朝、辺りが明るくなってくるのは早い。
その日などは、空が曇ってはいたものの、
午前4時半ごろにはもう、充分に灯りなしで歩けるようになっていた。
ちょうどそのくらいの時間に家を出て、
山に登り始めたのが、午前5時くらいだろうか。
さすがに、この時間から山に登っている人間というのは誰もおらず、
全く無人の山を、一番乗りのつもりで登ってきただけに、
自分より先に山頂を踏んでいる人間がいると分かり、
正直、驚いた。
いや、それよりも、この山(相生市の天下台山)で、
「ヤッホー」と叫ぶ人というのは、結構珍しい。
自分もこれまでに、相当の回数、天下台山に登っているが、
それでも「ヤッホー」のかけ声を聞いたのは、1〜2回である。
もともと地元の人間がたくさん登ってくるだけに、
大きな声で「ヤッホー」を叫ぶと、
ちょっと恥ずかしいというのが、あるのかも知れない。

まあ、それだけならば、なんということもない話だ。
自分と同じように、朝一番で
誰もいない山に登っているという気持ちが、
ついつい心を大きくさせて、「ヤッホー」と叫ばせたというのは、
あり得ることだろう。
自分も、誰か叫んでいるなという気持ちは持っただろうが、
そのまま気にも止めなかったはずだ。
3回、4回と「ヤッホー」が続けて聞こえ、
そしてそのまま声は止んでしまった。

自分はそのまま山道を登り続け、先ほどの地点から
1〜200mほど進んだとき、再び「ヤッホー」の声が聞こえてきた。
どうやら、誰もいない山頂で思いっきり声を張り上げるのは、
相当に楽しいようである。
再び始まった「ヤッホー」の連呼を聞いていると、
ついには調子がおかしくなり、「ヤッホーホッホッホ……!」
と、ミョーな感じで語尾に調子がついた。
まるでインディアンの雄叫びか、ヨーデルの出来損ないである。
どうやら大きな声を張り上げ続けているうちに、
どんどんとテンションもおかしな上がり方をし、
このような奇妙なかけ声をあげさせたらしい。
ひょっとすると、まさか誰かに聞かれているとは、
思わなかったのかも知れない。
このおかしな変形「ヤッホー」がしばらく続いた後、
再び辺りは静寂に包まれた。
山頂まで後、数百m。
自分が山頂に着くまでの間に、声の主が下りてくるかも知れないし、
自分が山頂に着いたとき、未だそこに留まっているかも知れない。
はたして、高らかに「ヤッホー」を叫びまくっていたのは、
一体どんな人物なのだろうか。

それからものの10分もしないうちに、最後のつづら折りの坂を登り、
自分は山頂に立っていた。
そこから辺りをグルリと見回してみると、いた。
自分の立っていた山頂の辺りから、少し南に下がった辺りに
1人のオッサンが海の方を眺めて立っている。
辺りを見回してみたが、どうやらこのオッサン以外には、
山頂にいる人間はいないらしい。
と、なると、散々「ヤッホー」を叫んでいたのは、
このオッサンだったのだろう。
さすがに自分が山頂にいる間は、
「ヤッホー」を叫ぶことはなかったが、
自分が一足先に下山を開始して、数百mほど下った所で、
再び山頂の方から「ヤッホー」の連呼が聞こえてきた。
……。
何がそこまで、オッサンを「ヤッホー」に
駆り立てるのかは分からないが、
恐らくは、自分がずっと下まで下っていった後も、
あのオッサンは山頂で「ヤッホー」を連呼していたのに違いない。
下山の途中では、何人もの早朝登山の人たちとすれ違ったので、
ひょっとしたらあの人たちの中にも、
山頂付近でオッサンの「ヤッホー」を聞いた人がいるかも知れない。

今回のオッサンに限らないのだが、山に登る人の中には
山頂で「ヤッホー」と叫ぶ人がいる。
テレビドラマやマンガなどでは、お馴染みといっていい光景なのだが、
実際に山に登ってみると、「ヤッホー」と叫んでいる人は
意外に少ない。
やはり、他の登山者がいるような場合は、
その前で大声を張り上げるというのには、抵抗があるのだろう。
しかし、そもそもの話、何故、山で叫ぶのは
「ヤッホー」という言葉なのだろうか?
いや、それ以前に、どうして山の上で大声を上げて叫ぶのだろうか?

山の上で「ヤッホー」などの大声を挙げる理由の1つが、
「やまびこ」や「こだま」と呼ばれる、
声の反射を聞きたいという場合だ。
山の上で大きな声、もしくは音をたてると、
その音が遠くの山の方から返ってくることがある。
これは、音が山の斜面などで反響し、返ってきているのである。
音の進む速度は、秒速300mほどのなので、
自分の発した声と、返ってくる音には一定の時差が生まれる。
近くに距離の違う複数の山がある場合、
声の返ってくる時間に差があるため、
あちこちの方向から少しずつ時間をずらして、
音が返ってくることになる。
現在では、この現象は科学的なものだと認知されているが、
それ以前の時代では、妖怪や精霊の声マネだと信じられていた。
「やまびこ(山彦)」も「こだま(木霊)」も、現在では
音が反響する現象のことを指しているが、
もともとこれらは、これらの現象を起こしている
(と、信じられている)妖怪や精霊の名前であった。
今回取り上げている「ヤッホー」というかけ声は、
昭和初期に海外から伝わったものだとされているから、
恐らくは「ヤッホー」以前にも、山で何らかの大声を張り上げて、
その声の反響を聞くこともあったのだろう。

さて、先に書いたように「ヤッホー」というかけ声が、
昭和初期に海外からもたらされたのは、確かなようなのだが、
では、この「ヤッホー」が、どういう由来で始まったのか?
ということになると、諸説が入り混じってハッキリしない。

その諸説の中で、もっとも有力とされているのが、
ドイツ語の山でのかけ声「ヨッホー」が変化し、
「ヤッホー」になった、という説である。
どうしてドイツのかけ声が日本に入ってきたのかは分からないのだが、
本当に昭和初期に「ヤッホー」が入ってきたとすれば、
第1次世界大戦の際に、捕虜として日本へ連れて来られた
ドイツ人によって伝えられた可能性もある。
(同じようなルートで、ソーセージバウムクーヘン
 日本へと伝えられている)

さらに別の説として、「ヤッホー」はヨーロッパアルプスで
ヨーデルで人に呼びかけるときの音の表現法に由来している、
というものがある。
もともと「ヨーデル」というもの自体、アルプスの牧童たちが
山と麓の村とで連絡を取るために使っていた裏声が
その始まりとされているので、
自分の声が山に反響して返ってくるのを楽しむ「ヤッホー」と、
構造的に似ている所があるのも面白い。

さらに変わった説として、山頂の景色に感動したドイツ人宣教師が
思わず「ヤハウェ!(神よ!)」と叫んだのが、
広まったとされるものがある。
もし、この宣教師が英語圏の人間であれば、
「オーマイガッ!」と叫んでいたのかも知れない。

こだまを表す英語「Echo(エッコー)」から
来ているとする説もある。
面白い説ではあるが、「ヤッホー」と「エッコー」では、
変化したにしてもちょっと無理があるような気がする。

ただ、これらの説をまとめてみると、
どこということはハッキリとはしないが、
ヨーロッパの方で使われていたかけ声が、日本に持ち込まれ、
それが変化したというのが、事実の様である。

さて、ここで思い返してみてほしい。
自分が山頂に到着した際、問題のオッサンは海の方角、
すなわち南側を向いて立っていた。
地図で見れば分かるが、天下台山の山頂から見て
ほぼ同程度の高さのある山は、この方向にしか存在していない。
(無論、とんでもなく距離があるというのであれば別だが……)
つまり、「ヤッホー」を叫んで、山彦の返ってくる方向を
向いていたということになるわけだ。
恐らくは、何気に叫んだ「ヤッホー」が、
しっかりとした山彦として返ってきたのが面白く、
思わず何度も何度も叫ぶことになったのだろう。

当然、自分がその方向に向けて「ヤッホー」を叫んでも、
山彦が返ってくるはずであるが、
さすがに自分には、それをやってみるだけの度胸はない。

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