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ドングリ不作

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先日、ネットのニュースサイトを見ていたら、
このような見出しの記事があった。

「ドングリ不作、ツキノワグマ出没に注意 滋賀県」

要は、今年は山のドングリが不作なので、これらをエサにしている
ツキノワグマがエサ不足に陥り、人里に降りてくる可能性が高いので
皆さん、注意してくださいね、ということだ。
ドングリが不作で、クマの出没事件が増えるというのは、よく聞く話である。
と、いうよりは、ほとんど毎年聞いているような気がする。

ここでちょっと思い当たった。
ひょっとして、ドングリって、毎年不作なのではないか?

そう考えた自分は、ネット検索で「ドングリ 不作 2018」と入力し、
検索をかけてみた。
検索結果の1つに、先述にネットニュースが表示される。
別に、そのニュースが必要だったわけではない。
次に検索ワードを少し変えて「ドングリ 不作 2017」と入力した。
そのまま検索をかけてみると、その検索結果に
同じようにドングリが不作だという2017年のニュースが表示されていた。
そのまま数字のみを、2016、2015、2014と
変化させていったのだが、件数の変化はあるものの
どの年の検索結果にも「今年はドングリが不作だ」というものがあった。
(何年も前になるとニュース記事がヒットせず、
 個人のブログ記事などで確認することが多くなったのだが……)
この結果だけを見れば、たしかに毎年、ドングリが不作のように思える。

しかしこれだけでは、ネット検索による調査としては片手落ちだ。
次に自分は「ドングリ 豊作 2018」と入力して検索してみた。
その結果、「今年はドングリが豊作だった」という結果はないものの
(まあ、この時期だから当たり前ではあるが……)
「今年はドングリが豊作のようだ」と、記してある結果が出てきた。
同じように数字を2017、2016、2015、2014と
変えていったのだが、やはりどの年の検索結果にも、
「今年はドングリが豊作だった」という結果が出てくることになった。

もちろん、これらの情報には偏りがある。
ドングリ不作のヒット数が多かった年もあれば、
ドングリ豊作のヒット数が多かった年もある。
ただ、どちらかだけに偏っていたということはなく、
どこかにドングリ不作の情報があれば、
どこかにドングリ豊作の情報もあった。
これらの情報を信ずるのであれば、日本全国、
一律にドングリが不作になるというような例は少なく、
全体的に不作が多くでも、どこかで豊作になっていたり、
またはその逆の現象が起こっているということになる。
ただ、この不作・豊作にはある程度の地域的な偏りがあるのと、
あくまでもこの不作・豊作は山野に自生しているもののことのようで、
公園の中など、人の介在する場所に植えられているものでは
山野のものほどには不作・豊作が出ないらしい。

ドングリの不作・豊作について、色々と調べてみると、
これについては様々な意見が見られた。
その中で、もっとも多かったのが、ドングリは不作と豊作が
交互にやってくるという意見であった。
つまり、豊作になった次の年は不作となり、
不作となった次の年は豊作になるというわけである。

もちろん、自然というのは、そんなに単純なものではない。
世の中には、ドングリの「豊凶指数」というものがある。
これは、何年かのドングリの生産数のデータを集め、
そのデータの中で、もっとも生産数の多かった年の生産数を100として、
他の年の生産数を数字化したものだ。
それをみれば、ドングリの不作(凶作)・豊作が
キッチリと数字化されるわけなのだが、
これによれば、ドングリの不作・豊作というのは、
決して単純なウラ・オモテの現象でないことが分かる。

北海道のある地域のデータを見れば、
21年の間に、80を超える数字が出たのはたった2年だけだ。
40〜60の数字が出たのは5年。
20〜40の数字が出たのは7年、
20以下の数字が出たのも7年である。
しかも20以下の数字が出た年のうち5にも満たない、
ほぼ0といっていい年が5年あった。
(ちなみに60〜80の間となった年はなかった)
このデータから、豊作になる確率は21分の2とするのは早計だろう。
恐らくは、40〜60のラインが通常の「豊作」にあたり、
80以上の2年は「大豊作」といっていいデータだと思われる。
だとすれば数字的に20〜40が平年並み、
20以下は不作ということになり、豊作(大豊作含む)、平年並み、
不作はそれぞれ7年づつということになる。

ただ、このデータの数字は、なかなか驚きである。
平均的な豊作の数字を50として、不作の数字の中に
5以下が5年もあるということは、
ドングリの生産数には、単純計算で10倍もの開きがあるということになる。
(大豊作を100とすれば、20倍以上の開きがある)
これでは山の動物たちのエサが不足するというのも
全くもって無理のない話だ。
人間だって、流通する食料が10分の1になれば、
それこそとんでもない大パニックが起こることは、容易に想像できる。
山では、それだけの食料危機(あくまでもドングリに限った話だが)が
3年に1度の頻度で発生しているわけである。

しかし、何故、ドングリはここまで極端に不作と豊作を繰り返すのか?

調べてみると、これについての考察も進められていた。
その中でもっとも良く見られたのは、ドングリの出来に
不作と豊作のリズムをつけることによって、
子孫を残す可能性を上げているというものである。
毎年、同じくらいのドングリを生産した場合、
それに見合っただけの数のドングリ捕食者が増え、
生産されたドングリをキッチリと食べ切ってしまう。
他の木の実などと違いドングリは、
食べられた後にキッチリと消化されるため、糞の中に種子が残ったりはしない。
つまり、生産したドングリをキッチリ食べられてしまったら、
もうそれっきりで、子孫を残すことが出来なくなってしまう。
本来的にドングリは食べられてはダメなのだ。
そう、要はドングリの生産量に大きなリズムを作ることにより、
大量の食べ残しを発生させ、その食べ残されたドングリたちが発芽し、
次世代へと命をつないでいくわけなのだ。
つまりドングリの極端な不作と豊作の波は、
気候条件とかなどという理由以前に、ドングリ自身が子孫を残すための
必死の生存戦略だったのである。

「ドングリが不作で、熊が人里に降りてくる可能性がある」
などというニュースを聞けば、我々はつい、
エサがなくてひもじい思いをする熊たちを考えてしまうが、
そこにはドングリを生産するブナ科の木々たちの
生存と繁栄がかかっていることも、忘れてはいけないようだ。

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