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チャボ

更新日:

うちの母親は、生き物が好きではなかったため、
ペットを飼うということには、基本的に消極的だったのだが、
それでもいくつかの動物を、飼ったことがある。

まず、池の中で鯉や金魚を飼った。
生き物の嫌いな母親も、水の中から出てこない魚類については、
それほどの嫌悪感を抱かなかったようである。
同じように、水槽で金魚を飼ったことがあったが、
こちらの方にしても特に嫌悪感を表すこともなく、
普通にエサをやっていた。

ネコを飼ったときは、結構、嫌悪感を表していたが、
いざ子猫を飼いだしてみると、わりとすぐに慣れた。
最初は、飼い主である妹が世話をしていたのだが、
すぐにその世話係が、母親や自分に変わった。
自分もそれまでは、あまりネコや犬が
好きではなかったのだが、
いざ、これを飼い始めてみると、あっという間に
その可愛さにノックダウンされてしまい、
それこそ「ネコ可愛がり」で、ネコを甘やかした。
そのネコもすでに亡くなってしまったが、
今ではすっかり、「ネコ好き」を自称するにいたっている。

鯉や金魚、ネコといった愛玩動物の他に、
わずかばかりの実用性を目的にして飼った動物がいる。
それが「チャボ」である。
もともと祭りの屋台で買ってきた
「ひよこ」を育てていたのだが、
これを野良犬に食べられてしまい、
「ひよこ」(と、いってもすでにちゃんとした鶏に
なっていたのだが……)を飼っていた飼育小屋が
空いてしまった。
そこで、「ひよこ」の代わりにつれてこられたのが、
オス・メス一対の「チャボ」たちであった。
この「チャボ」に関していえば、
母親もそれほど嫌悪感を持たなかったようである。
なんといっても普段は小屋の中に入っているし、
(たまに外に出して遊ばせていた)
何よりも卵という、実益が得られたからである。
この「チャボ」の卵は、我が家では「チャボ玉」と呼ばれ、
当時、まだ幼稚園に通っていた弟の、
卵かけご飯用の卵として愛用されていた。
「チャボ玉」は、スーパーで買ってくる普通の卵よりも
ひと回り小さく、幼稚園児用の卵かけご飯に
ピッタリの大きさだったのである。

チャボは、ニワトリの品種の1つである。
漢字で書けば「矮鶏」となる。
「矮」という字には、背が低いという意味がある。
つまり「矮鶏」とは「背の低いニワトリ」ということになる。
実際、チャボは採卵用のニワトリに比べると
3分の1ほどの大きさしかない。
他のニワトリに比べ「小さい」というのが、
チャボの一番の特徴といえる。
足の長さも、短い方が美しいとされる。
つまり短足がかっこいいとされるわけで、
ここの所は、人間とは全く評価が逆だ。
普通のニワトリに比べ、尾羽の量が豊富で、
さらにそれらが直立しているのも、大きな特徴の1つである。
古くから観賞用として飼育され、
現在では、天然記念物に指定されている。
先にチャボの卵について書いたが、
チャボは年間50〜100個ほどの卵を産む。
それも年中卵を産むわけではなく、
春と秋に卵を産むことが多い。
チャボの大きさが、ニワトリの3分の1しかないように、
チャボの卵も、普通の鶏卵の3分の1ほどの大きさしかない。
ただ、普通の鶏卵に比べると、
黄身の占める割合が多く、味も良いとされる。
もっとも、味に関しては、
多くのチャボは、採卵用のニワトリと違い
ゲージの中などに閉じ込められることなく、
ペットとして、自然養鶏に近い形で育てられているので、
その環境の違いが、味の違いとなっている可能性は高い。
仮にチャボをゲージに閉じ込めて、
採卵目的に飼育するようなことをすれば、
卵の味も落ちるものと思われる。
ただ、先にも書いた通り、チャボの卵は普通の鶏卵に比べ、
黄身の割合が多いので、それだけ濃厚な味わいになっていると
考えることもできる。

ニワトリが日本に持ち込まれたのは、
はるか弥生時代のことになるが、
チャボという種が日本に持ち込まれたのは、
それに比べると、ずっと後の時代のことになる。
細かい年代ははっきりとしないが、
江戸時代の初期から中期にかけて、
東南アジアや中国から持ち込まれたとされる。
原産地は、当時ベトナムの近隣にあった「チャムバ国」で、
「チャボ」という名前は、ここからきている。
もともと肉や卵を目的とした飼育ではなく、
愛玩用として、姿や鳴き声を目的に育てられた。
足が短い方が姿が良いとされていたように、
よりサイズの小さいものが求められていたようだ。
かなり高価な鳥であったらしく、
1羽あたり25両〜30両もすることがあったという。
これを飼育することが出来たのは、
一部の富裕層のみだけであった。
昭和16年に天然記念物に指定されたため、
基本的に食べることが出来ない。
(飼育していたチャボの卵を食べていたのが、
 セーフなのかアウトなのかは、わからない。
 ただ調べてみた所、チャボを飼っている人の多くは、
 その卵を食べている。
 さすがにチャボそのものを食べている人は、
 見当たらなかった)
雛を孵す能力が高く、実際にうちで飼育していたときにも、
いくつかの卵を孵化させていた。
母性が強いのか?と思いきや、
別に卵ならば何でも良いらしく、
アヒルの卵やキジの卵を与えても、これを温めて孵化させる。
この性質を利用して、
抱卵しにくい鳥の卵を、かわりに温めさせることも
行なわれていた。

かつての我が家では、
チャボの卵をいくつか孵化させることに成功し、
そのまま、チャボの数を増やしていくことが出来るのか?
と考えたものだが、残念ながらそう上手くはいかなかった。
理由は簡単で、当時の我が家の周りには、
野良犬、野良猫をはじめ、イタチや狸、ヘビなど、
チャボや卵を狙う外敵が、溢れていたからだ。
1羽、また1羽と、チャボたちはその数を減らしていき、
ついに我が家のチャボは全滅してしまったのである。

あれから数十年。
うちの周りからは野良犬も野良猫もいなくなった。
あの当時と比べれば、
チャボを狙う外敵たちは、グッとその数を減らした。
しかし、その代わりに、うちの周りには人家が建ち並び、
すっかり周りは住宅街になってしまった。
再びチャボを飼ってみたいと思うのだが、
今度はご近所から、鳴き声についてのクレームが出そうで、
二の足を踏んでしまう。

なんとも、うまくいかないものである。

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