子供は苺が大好きだ。
不思議なことに、これはあまり例外がない。
どんな子供に聞いてみても、たいがい苺は好きだという。
苺を使ったお菓子も、子供は大好きだ。
苺のショートケーキ、苺味のチョコ、苺大福、イチゴジャム。
子供だけでなく、女性も苺は大好きだ。
今回は、そんな苺について書いていく。
苺はバラ科の多年草だ。
多年草、というのは個体として複数年に渡って、生存する植物のことだ。
しかし、実際に栽培している農家では、毎年新しい苗を植えている所が多い。
露地栽培で苺を栽培している所では、
毎年、2~3月になると畑に黒いビニールシートを敷く。
これをマルチといい、地面の温度を上げる効果と、
苺が地面に触れて汚れるのを、防ぐ役目がある。
春先の畑で、黒いマルチが地面を覆っていれば、そこは苺畑だと思って
ほぼ間違いない。
やがて、5~6月になると、苺の苗は大きく育ち、実を付け始める。
この時、畑をネット等で覆っておかないと、せっかくできた苺を、
カラスなどの鳥に、全部食べられてしまう。
苺やスイカが、果物なのか野菜なのか、と意見が分かれることがある。
正確には、苺は草本性の植物になるので、野菜というのが正しい。
が、実際には果物として扱われていることの方が多い。
これはスイカやメロンと同じだ。
苺は、古くは平安時代から食べられていた。
「枕草子」の中にも、その名前が見られるし、
「本草和名」(918年)の中に「以知古」と書かれている。
さらに古くは「日本書紀」の中に「伊致寐姑(いちびこ)」と書かれており、
これが古形であるらしい。
名前の由来については諸説あり、はっきりとしない。
「血」の様に赤いから「伊血彦」で、苺になったという説が、
よく知られているが、いまいちしっくりとこない。
どうもその名前の由来には、まだ我々の知らない真実がありそうだ。
が、ここに書かれている「イチゴ」というのは、現在でいうところの
「キイチゴ」のことである。
現在、我々が「苺」と呼んでいるオランダ苺は、江戸時代末期に伝えられた。
その後、栽培技術の進歩とともに、優秀な品種が作られ、
世界的にも知られるようになっていった。
ハウス栽培が一般的になってから、1年中、食べることができるが、
やはりその旬は春先から初夏にかけてである。
この時期になると、スーパーなどの店頭に苺のパックが並ぶ。
そのまま生で食べたり、あるいはコンデンスミルクをかけたり、
ミルクの中につけて食べる食べ方が、一般的である。
苺ジャムをはじめ、ジュース、アイスクリームなどに加工されることも多いが、
一般家庭で作られるのは、ジャムがせいぜいで、多くは生食である。
一方、菓子の世界では、洋菓子のみならず、苺大福のように
和菓子の材料として使われることも増えてきている。
とくに12月のクリスマスケーキの飾り付けに、大量の苺が使われるため、
年末のこの時期は、1年のうち1番の出荷量がある。
もちろん、この時に出荷されるのは、露地栽培の苺ではなく
ハウス栽培による苺だ。
1年中、苺を味わえるのはよいが、季節感が無くなってしまった感は否めない。
苺は、その果実の実に90%が水分である。
残りの10%の中に糖質、タンパク質が含まれている。
栄養素としては、キシリトールとビタミンCが、豊富に含まれている。
特にビタミンCの含有割合は、レモンのそれを越えている。
……もっとも越えたからどうだ、ということもないのだが。
子供のころの話になるが、実は苺はそれほど好きではなかった。
珍しい子供だったといえる。
というのも、祖母が畑で苺栽培をしており、
初夏になると、毎日山のように苺を食べさせられたからだ。
3人兄弟だったのだが、それぞれどんぶり鉢に山盛り一杯の苺を、
それこそ苺の季節中、毎日食べさせられたのだ。
デザートとして。
どうも祖母の世代には、子供=苺大好きという公式があるらしい。
苺というのは、傷むのが早いため、とれたその日のうちに、
食べてしまわなければならない。
食べなければ、翌日、どんぶり鉢2杯分の苺を食べないといけなくなる。
こういう経験をしていて、苺が好きなままでいられるはずがない。
嫌い、というほどにはならなかったが、苺を好んで
食べるようなことはなくなってしまった。
というより、おおよそ常人が一生のうちに食べる苺の、
何十倍もの量を食べてきたのだ。
おかげで、大人になっても、進んで苺を食べることは無くなっていた。
最近、ようやく苺を食べるのに、抵抗が無くなった。
それでも、自分で買ってきてまで食べようとは思わない。
子供のころの経験とは、こうも人生に影響を与えるのである。