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ギンナン

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最近、スーパーマーケットの中には、自前の野菜売り場の他に、
地元の農家の作った農作物を並べるコーナーを作っている所がある。

価格でいえば、スーパーのものよりも
やや高かったりする場合があるのだが、
スーパーの野菜売り場とは違って、そこに並んでいる野菜は
「旬」のものが多くなっており、栽培された場所や
栽培した人の名前が書かれていることも多く、
出所の詳しい情報が得られるのも、大きな魅力の1つである。
また、稀にではあるが、そういう売り場には
スーパーの野菜売り場にはあまり置かれていない、
珍しい作物が並んでいたりする。
まあ、最近はスーパーの品揃えも良くなっていて、
そういう珍しい野菜は、少なくなって来ているのだが、
その手の野菜は、スーパーで買うとかなり割高になってしまうのに対し、
この手の地元品コーナーでは、かなり安く手に入れることが出来る。

先日、地元のスーパーの「地元品コーナー」を見ていると、
ビニール袋に入った「ギンナン」が売られていた。
小さなビニール袋ではあるが、中にパンパンに「ギンナン」が
詰め込まれており、自分の握り拳よりもひと回りほど大きくなっている。
どこで生産されたものかは書かれていなかったが、
スーパーのつけたラベルには、生産者の名前が
カタカナで印字されている。
価格は、1袋で100円(税抜)
わりと安価であったため、1袋購入した。
恐らく、印刷されていた人物が栽培したものか、
あるいは、山かどこかで自生しているイチョウの木の下に行き、
落ちている実を集めて、果肉を取り除いたものだろう。
値段が安いことを考えると、
どこかで拾ってきたものという線が強そうだ。

さて、買って帰って、1つの事実を思い出した。
自分は今まで、自分の手で「ギンナン」を調理して食べたことがない。
昔、茶碗蒸しに入っているのを食べたことがあるだけで、
それだけを調理して食べたことは、果たしてあったのか、無かったのか?
しかし、つい先日、友人が自宅近くで拾った「ギンナン」を調理して
酒の肴にしている写真を送ってきており、
その「ギンナン」が、ウマそうに見えたため
わりと後先考えず(まあ、安かったせいでもある)、
購入してしまったのだ。
皿の上に乗った、ツヤツヤとした透明感のあるウグイス色は、
かなり強烈に、見ている者の食欲を掻き立てる。
見た所、皿の上には割った後のカラがいくつものっていたので、
恐らくはフライパンで乾煎りしたか、何かだろう。

「ギンナン」とは、イチョウの木の実の中にあるタネである。
この季節、イチョウの葉が黄変し出すころになると、
イチョウの木(雌株)は、サクランボのような果実をつける。
果実はサクランボのように食べることは出来ない。
と、いうよりは、かなり強烈な臭いを放っているので、
(実を集めて加工した人の中には、
 ウンコ臭いなどという表現をしている人もいた。
 「ギンナン」が、いかに悪臭を放っているかが伺える)
マトモな人なら、決してこれを食べようという気にはならないはずだ。
この悪臭を放つ果肉部分を、腐らせるなり何なりして取り除き、
中に入っている種子を取り出す。
タネの形はラグビーボールのような楕円形で、
ツヤはなく、薄いベージュ色をしている。
これを手に取って、その臭いを嗅いでみると、
わずかながらに、果実の悪臭の残滓が鼻に飛び込んでくる。
このベージュ色のカラを割ると、その中に薄皮に包まれた
可食部分が入っている。
先にも書いた通り、この薄皮の下には透明感のある鮮やかな
ウグイス色の実(正確には「仁」というそうだ)が入っている。
このウグイス色の実を調理したものを、松葉などに刺したものは、
懐石料理の前菜として、出て来ることがある。
生食も出来るようだが、一般的には焼いたり煮たりして、
加熱したものを食べる。
ちょっとモッチリとした感じもあり、
それと独特の香りもあって、結構美味しい。
から煎りしたものの殻をむき、塩をちょっとつけて食べると
これはなかなか後を引く味である。
それこそ、実がそれほど大きくないこともあり、
いくらでも際限なく食べられそうなのだが、
これはさすがに止めておいた方が良い。

実は「ギンナン」には有毒な成分を含んでおり、
これを食べ過ぎると、中毒症状を起こすことがある。
具体的な症状として、瀕脈、ふらつき、嘔吐、痙攣などがあり、
これらは食後1〜12時間を経て、症状が出てくる。
症状が出る目安としては、大人は40〜300粒、
子供は7〜150粒となっている。
子供、特に幼児は症状が出やすいようで、
ほんの10粒に満たない量であっても、中毒することがある。
稀に死亡するケースも存在するので、子供には
たとえ少量であったとしても食べさせない方がいいようだ。
もし、「ギンナン」を食べて中毒症状が出た場合、
なるべく速やかに病院に行き、
「ギンナン」を食べたことを医者に伝えよう。

そういう危険な中毒症状を引き起こす「ギンナン」であるが、
一方では栄養価が高く、古くから薬としても用いられていた。
含まれている栄養価としては、デンプン、カロテン、
ビタミンCなどがあり、カリウムをはじめとするミネラルも
ふんだんに含んでいる。
薬効として、咳、痰、頻尿などに効果があるとされており、
民間療法の1つとして、広く用いられていたようである。
もちろん、これらにしても食べ過ぎるとリスクも高まるため、
あくまでも適量を摂取することが、
「ギンナン」を食べる、一番のコツであるようだ。
そういう意味では、危険をおかして量を摂取し、
その栄養に期待するよりも、少量ずつ、定期的に味を楽しむ方が
健康的なのかも知れない。

さて、いざ買って来たはいいものの、
全く調理法を知らない「ギンナン」。
その調理法を調べてみて、意外に目についたのが封筒を使うものである。
ん?どうして「ギンナン」の調理に封筒?と思う人もいるだろう。
自分も思った。
で、よくよく調べてみると、封筒の中に10粒ほどの
「ギンナン」と塩を入れ、それをそのまま電子レンジにかけるのである。
(調べた中には、電子レンジにかける前にすりこぎなどで封筒を叩き、
 ある程度、「ギンナン」のカラを割っておく、というものもあった)
そうすると、袋の中でボンボンと破裂音がするらしい。
恐らく、加熱によって「ギンナン」のカラの中に水蒸気が発生し、
これがカラを割っているのだろう。
電子レンジにかける時間は、長くても1分ほど。
少なくとも、調べた限りでは、
封筒が破れて大惨事などということは無いようだ。
(中には、実がいくつかグチャグチャになった、という報告はあったが)
加熱が終わった後、封筒を取り出して振ると、
中に入っていた塩がいい具合に「ギンナン」の実にまぶされて、
塩味をつけることが出来るという。
結構簡単で、早速、試してみようと思ったのだが、
あいにく、周りには手頃な封筒が無い。

仕様がなしに、ペンチで「ギンナン」のカラにヒビを入れておいて、
そのまま皿に乗せて、電子レンジで1分ほど加熱してみた。
すると特に問題もなく、キチンと「ギンナン」は茹で(蒸し)上がった。
皿の片隅に塩を盛り、カラをむいた「ギンナン」に
これをつけて口の中に放り込む。
独特の香りと、モチモチとした食感。
正直言って、好みの別れる味だろうが、
自分にはあっていたようで、なかなか美味しく頂くことが出来た。
自分は酒をほとんど飲まないため、
実際に合わせてみることはしなかったが、
お酒のおつまみとしても、充分に楽しめそうである。

ただ、先にも書いた通り、食べ過ぎると中毒をする危険があること。
特に、子供の場合、それが顕著なので、
その点だけは充分に留意して、存分に「ギンナン」を味わってほしい。

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