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かて飯

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By: senov

以前、このブログで我が家の畑の大根が
収穫期を迎えたことを書いた。

我が家の畑は小さいとはいえども、4〜5mほどの畝が4本あり、
ここに、約30㎝間隔で2列ずつ、大根が植えられている。
実際に数えてみると、おおよそ100本近い大根が、
我が家の畑で育っていることになる。
これを、ちょうど11月15日から収穫を始め、
以降、これを毎日食べ続けてきた。
そろそろ12月の月末になろうかという時期なので、
ここまで1ヶ月半ほどの間、
自分の主食は大根だったといってもいい。

自分にとって幸いだったのは、栽培の途中で何割かが害虫にやられ、
個々の成長速度に、大きな開きが出来たことである。
サイズ的にいえば、もっとも良く育っているものは、
スーパーなどの青果売り場に並んでいるものと遜色が無く、
もっとも育ちの悪いものは、まだまだニンジン程度の大きさしかない。
うちの畑は、隣家との間にあるので、
場所によって陽当たりが大きく変わってくる。
それも個々の成長の格差を生み出している要因の1つである。
こういう状況であるため、
食べごろの大根が一気に出来上がることなく、
自分は、手持ちの大根が無くなると畑に入り、
もっとも大きく育っているものを1本収穫し、
これを食べるというパターンを繰り返している。
ただそれでも、そろそろまとまった数の大根が成長してきて、
食べごろを迎え、さて、これをどういう風にして消費していこうかと、
日々、頭を悩ませる毎日である。

大根の食べ方ということになると、
一体、何を思い浮かべるだろうか?
おでんの具材、という人もいるだろうし、
みそ汁の具材、という人もいるだろう。
ブリ大根やふろふき大根を思い浮かべる人もいるだろうし、
たくあんやベッタラ漬けなどの、漬け物を思い浮かべる人もいるだろう。
ひょっとすると、これを乾燥させた切り干し大根や、
割り干し大根などをイメージする人もいるかもしれない。
大根がメインでなくて良いということになると、
焼き魚に添えられている大根おろしや、
刺身の下に敷かれているツマなどもある。
こういう風に取り上げてみると、
大根を使ったレシピというのは、結構な数がある。
それだけ、大根というのは、
色々と扱いやすい野菜だということだろう。

自分もまた、これらのメニューを思い浮かべ、
これらのメニューを思う存分楽しもうと考えていた。
だが、我が家の畑で次々に大きくなっていく大根を前にして、
実は、これらのメニューは、大根を消費していく上で
決して効率の良いものではないことに気がついた。

例えば、メジャーなメニューで「おでん」を挙げてみると、
これを大きめの鍋一杯に作った場合、
消費する大根の量はせいぜい1本がいい所で、
大鍋に一杯の「おでん」を作ると、
これを食べ切るのに数日かかってしまう。
特に我が家のように、一人暮らしだとなおさらである。
「おでん」の場合、大きなネックとなるのは、
大根以外にも様々な具材が入っていることで、
必然的にそれらの具材も食べることになるため、
肝心の大根の消費スピードに、ブレーキがかかってしまうのだ。
「おでん」で大根をハイスピードで消費するには、
なるべく、大根以外の具材を入れずに作ることが重要となる。
だが当然、大根以外の具が、少なくなれば少なくなるほど、
「おでん」としての完成度は低くなっていき、
ただの「大根の煮物」になっていく。
「おでん」としての完成度をとるか、
大根の消費効率をとるか、ということになるのだが、
畑一杯に育っている大根は、
完成度の高い「おでん」を作ることを許してくれない。
そうなると、当然、行き着く先は
大根と何かを一緒に炊き合わせた「煮物」ということになる。
鳥肉と大根、肉団子と大根、ブリと大根、イカと大根。
組み合わせは色々あるのだが、
やがてこれらも、実はそれほど効率的に
大根を消費できていないということに気がつく。
そう。
それぞれダシをタップリと吸った大根はおいしいのだが、
大根そのもののボリューム、というものを考えたとき、
これらの料理法では、増えることはあっても減ることは無い。
ふっくらと煮上がった大根は、どうしても元の容量より
わずかに大きくなってしまっているため、
大根の消費効率自体は、悪化していると言えるのだ。

明けても暮れても大根、という生活を続けた結果、
自分は1つの結論に辿り着いた。
つまり、大根をもっとも効率よく消費していくのには、
「大根飯」を作って、これを食べるのが一番だ、ということである。
ここでいう「大根飯」とは、刻んだ大根や葉を塩で締め、
適度に水分を抜いた後、炊きたてのご飯に混ぜ込んだものである。
早い話が、大根の混ぜご飯だ。
このように、野菜や穀類、海藻などを白飯に混ぜ込んだり、
あるいは炊き込んだりしたものを、「かて飯」という。

「かて飯」とは、もともとは米の消費を抑えるべく、
白飯の中に様々な具材を増量剤として追加したものである。
以前、自分が紹介した「麦飯」なども、
この「かて飯」の一種ということになる。
米に加える食品を「かて」と呼び、「糅飯」「糧飯」などと書く。
米(ご飯)の量を増やすという意味では、
「糧飯」と書く方が、しっくり来るような気がする。
先に述べた通り、「かて」として白飯に混ぜ込まれるのは、
大根、蕪などの野菜、イモ、小豆、カボチャなどの穀類、
ワカメや海苔などの海藻類など様々である。
米の消費を抑えるために行なわれていた調理法なので、
恐らくは、稲作が始まって以降、富裕層以外では、
ほぼ原初から行なわれていたものだと考えられる。
これが、いつごろまで行なわれていたか?ということに関しては、
はっきりとここまで、と言い切れるものではないのだが、
おおよそ昭和30年代くらいまでは、
日本各地で、一般的に行なわれていたものらしい。
現在ではこの「かて飯」は、「炊き込みご飯」や「混ぜご飯」として、
いわゆるゴチソウ的な扱いを受けているが、
もともとは食生活の貧弱さを、
なんとかして補おうという態のものであった。

奇しくも、この「かて飯」が、大根の過生産を乗り切るために
我が家で歴史的な復活を遂げた。
(といっても、もともと自分は「麦飯」を常食していたので、
 「かて飯」自体は、「大根飯」以前から食べていたのだが……)

もともと我が家の「大根飯」は、大根を収穫した後に残る葉を、
上手く食べるための方法として、作り始めたものである。
1号の米に、50ccの押麦を混ぜて炊き、
炊きあがった所に、塩で揉んで水分を抜いた大根葉を加える。
これが、我が家の「大根飯」であった。
もともと「麦飯」という「かて飯」を食べていた所に、
さらに大根の葉という「かて」が加わったのである。
……。
そう、注意深い人なら気付いているだろうが、
我が家の「大根飯」であった、と、過去形で書いてある。
実は「大根飯」として消費しているため、
大根の葉はどんどん無くなっていくのだが、
その結果、大根の本体の方が余り始めるという事態に陥ったのである。
窮した自分は、1つの方法を思いついた。
それが、本体の方も刻んで「大根飯」に混ぜよう、
というものであった。

かくして現在、我が家の「大根飯」には、
麦、刻んだ大根の葉、刻んだ大根本体、と
かなりの量の「かて」が混ぜ込まれている。
米自体は1号しか炊いていないのに、
出来上がりは3号近くの「大根飯」になる。
これを朝、晩と食べているので、都合、1日あたり
6号ほどの「大根飯」を食べている計算になる。
思わず、胃もたれしそうな気になるが、
大根に消化を助ける酵素が入っているせいか、
今までに胃がもたれたことは、一度も無い。

ただ、自分が今「大根飯」を食べているのか、
「飯粒付きの大根」を食べているのか、
分からなくなるときが、たまにある。

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