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雑感、考察

夜登山〜金輪山

更新日:

さて前回、諸々の思惑を持って企画された「夜登山」だが、
それの第1弾である「金輪山」の話である。

実は、これまでに全く「夜登山」をやったことがない、
というわけではない。
毎年、元旦に行なわれている、的場山の「元旦登山」は、
山頂で日の出を拝むため、日の出1時間前には
登山口を出発しなくてはならない。
いくら早朝とはいえ、日の出1時間前ということになると、
辺りはまだまだ真っ暗で、深夜と何も変わらない。
そんな中を山頂目指し、山道を登って行くのである。
これも一種の「夜登山」ということが出来るだろう。

しかし、この「元旦登山」は、かなり特殊なものである。
夜、山に登るということもそうだが、
百人以上の人間が、一斉に山に登るという状況は、
的場山においては、この「元旦登山」以外ではあり得ない。
普段、これと全く同じコースを山頂まで登ってみても、
出会う登山者の数は多くて5~6人といった所で、
酷いときには、登り始めてから下りて来るまでの間、
全く誰にも出会わないことすらある。
つまり、的場山の「元旦登山」は、
1年に1度だけのお祭り登山だということである。
確かに辺りは暗いものの、前にも後ろにも人が歩いていて、
自分自身、この「元旦登山」は
2~3人ほどの仲間と一緒に山を登っている。
普段の登山は、9割方が単独行で、
残りの1割にしても、友人1人との
2人登山であることを考えると、
「元旦登山」は、1年に1度の
パーティー登山といえるのである。

だが、今回の企画「夜登山」は、自分1人の単独行である。
もちろん、時間帯が時間帯なので、山に他の登山客はいない。
1人で真っ暗な山の中に登って行き、
1人で真っ暗な山の中から下りて来るのである。
その、変わった企画の第1弾として選ばれたのが、
たつの市の「金輪山」である。
「金輪山」は、たつの市の中央部付近、
揖保川の東に位置する、標高227mの山だ。
山頂にはTVの電波塔が立っており、主な登山ルートは3つある。
1つ目は、山の南側から登るコース。
テレビ塔整備の車が登る道で、
しっかりとアスファルト舗装されている。
途中、パラグライダーの離陸場が設置されており、
スカイスポーツを楽しむ人は、ここから大空に飛び立って行く。
付近は樹木が刈り払われており、
ここから、たつの市の町並みを展望することが出来る。
2つ目は、山の西側から登るコース。
「金輪山」を西から眺めてみると、
つづら折りになった登山道が、
山頂へ向かって伸びているのが確認できる。
このつづら折りの道を登って行くのが、第2の登山道だ。
恐らく、山肌にショベルなどを使って無理矢理つけた登山道で、
そのコースの内のほとんどが、急傾斜のトラバースになっている。
3つ目は、山の北側から登るコース。
梛八幡神社がスタート地点になり、
複数の登山道が設定されている。
これらの登山道は、やがてひとまとまりになり、
南へと稜線を辿って行く登山コースになっている。

これら3つのコースの中から自分が選んだのは、
山の南側から登るコースである。
選んだ理由としては、道が全て舗装されていること、
パラグライダーの離陸場から、たつの市の夜景が眺められること、
他のコースよりは、安全と考えられること、などである。
何より道が舗装されているというのは大きく、
足下不明瞭な状況では、
少しでも歩きやすいコースを選ぶ必要がある。

午後7時半ごろ登山口に到着し、ライトを確認した後、
登山を開始する。
車でも登れる道なのだが、普段は車止めがしてあり、
車が登って来ることはない。
午後7時半だと、まだ日が暮れて間もないので、
空には明るさが残っている。
正直、ライトをつけなくても、普通に歩くことが出来る。
出来るだけ明るいうちに距離を稼いでおこうと、
ちょっとペースを早める。
頭上が開けている所は、足下もよく見えるのだが、
頭上が木々に覆われていると、途端に足下が不明瞭になる。
そういう場所になる度にライトを点けていたのだが、
やがて完全に空は暗くなり、
ライトを点けっぱなしにするようになった。
山の南側から登っているので、木々の間から街の灯が見える。
もちろん、それが足下を照らしてくれるわけではないのだが、
人家の灯りが見えるというのは、
何となく気分を落ち着けてくれる。
だが、はっきりいって、暗い山道というのは、かなり怖い。
特に何が怖い、というのではなく、
「暗い」ということが人間に与える、原始的な恐怖である。
「元旦登山」で、ある程度慣れているので、
普通に登れると思っていたが、周りに一切の人の気配のない
真っ暗な山道を歩いていると、背中にイヤな汗が流れるのを感じる。
やはり人間が近くにいるというのは、
それが赤の他人であったとしても、
ある程度の安心感を与えてくれるのだろう。
真っ暗な山道を歩いていても、近くに人の気配はないのだが、
ちょっと離れた街の方角からは、
車の走っている音などが混ざり合って、地鳴りのように響いてくる。

風が結構強く、木々のざわめきが常時聞こえているのだが、
それでも人間の生活音は、それに消される事なく響いている。
聞こえて来る一番大きな音は、自分の足音。
さらに木々のざわめきと、街の喧噪。
そんな中、突如として山の中に足音が響く。
ガサガサガサッと、落ち葉を乱暴に踏みしめる音が聞こえる。
恐らくはシカだろう。
「金輪山」には、数多くのシカが住み着いており、
昼、山に登ったときにも、その足音を聞くことがある。
そちらの方向にライトを向けてみるが、
シカの姿は捕えられない。
イノシシやクマでなければ、
そうそう襲って来ることもないだろうが、
真っ暗な中、近くでいきなり足音がすれば、さすがにビビる。
「金輪山」には、かなりの数のシカがいるらしく、
山頂に着くまでには、何回もその足音に驚かされた。

山頂近くになると、例のパラグライダーの離陸場がある。
一帯の木が、きれいに切り払われているので、
たつのの町の夜景が眼下に広がっている。
西播の田舎都市といえども、
夜8時過ぎでは、まだまだ街の灯りは明るい。
その夜景は充分に素晴らしいものであった。

そこを越えて、しばらく歩いて行くと、
電波塔に辿り着き、そこを折り返すように曲がって山頂広場に出た。
残念なことに、ここからは木が邪魔をして、
夜景をしっかりと眺めることが出来ない。
ベンチの上に腰を下ろし、水筒から水を飲んで一息入れると、
すぐに下山を開始した。
登山開始時には、まだちょっと明るかった空も真っ暗になり、
ライトなしでは歩けないような闇である。
パラグライダーの離陸場で再び夜景を満喫した後、
登ってきた道をそのまま引き返すように下山した。

無事に登山口に戻ってくると、時間は9時過ぎであった。
時間にしてみれば、2時間足らずという所だろうか。
その途中で眺めた、たつのの夜景は、
想像以上に素晴らしいものだった。
よくよく考えてみれば、
たつの市の夜景を俯瞰できる場所というのは少なく、
そのどれもが、「金輪山」よりも高度の低い場所ばかりである。

そう考えてみれば、今回見たたつの市の夜景は、
「夜登山」をしたものだけが見ることの出来る、
秘密の風景だといえるのかも知れない。

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