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火の鳥 鳳凰編

更新日:

手塚治虫というのは、本当に偉大な漫画家だ。

現在では、「クールジャパン」などと
おかしなキャッチフレーズをつけて、海外に売り出そうとしている
日本のマンガ・アニメ文化は、その基本的な部分を
全て手塚治虫が構築した、と言っても過言ではない。
そういう風に考えれば、手塚治虫を
「漫画家」という括りで語ることも無理があるような気がする。
現在、世界でもてはやされているジャパンアニメーション、
ジャパンコミックの基本的な部分を構築したということになれば、
一種のメディアクリエイター、アーティストとしても、
充分に通用する功績だろう。
彼はクリエイターとしてゴッホやピカソ、
ディズニーやルーカス、スピルバーグなどと同等に
語られるべき人間なのである。

自分が手塚治虫のマンガに夢中になったのは、
中学生のころである。
ちょうど講談社が出している「KCスペシャル」というシリーズが
月一で発行されており、
その「三つ目がとおる」を買ったのが最初だ。
これは手塚治虫の作品の中でも、かなり有名な作品だから、
その名前を知っている人も多いだろう。
この「三つ目がとおる」で、手塚マンガにハマってしまった自分は、
その後、同じ「KCスペシャル」で鉄腕アトム、
さらに中古のコミックスでブラックジャックなどを買い集めた。
そのころにはすでに、手塚治虫と言えばすでに
「昔」のマンガ家だった筈だが、
彼の作品は、全く古くささを感じさせないものであった。

そして、ちょうど自分が中学生のころに、
彼のマンガ「火の鳥 鳳凰編」が映画化され、
その関係で「火の鳥」シリーズが
ハードカバーでコミックス化された。
これは映画化された「鳳凰編」だけでなく、
「黎明編」や「未来編」など、それまでに発表されていた
「火の鳥」の各シリーズがまとめられ、
全10巻のセットで販売されたものであった。
(後に何冊か、シリーズの追加販売があったが……)
手塚治虫にハマっていた自分は、
ちょうど正月にもらったお年玉を使い、
この「ハードカバー火の鳥」の10巻セットを購入した。
ちょうど1万円ほどだったと思う。
中学生にしてみれば、1万円分マンガを購入するというのは、
なかなかに思い切ったカネの使い方である。
マジメな親なら大反対する所だろうが、
ちょっとした偶然が自分に味方した。
何のことはない、うちの母親が手塚治虫のマンガのファンで、
自分の買った「三つ目がとおる」や「鉄腕アトム」を
ちゃっかりと読んでいたのである。
だから、息子がお年玉の中から大枚をはたき、
「火の鳥」のセットを購入することを言ったとき、
母親としては、むしろウェルカムな状態であった。
息子の懐を使って、まだ読んだことのない手塚治虫の
有名シリーズ読めるというのだから、
むこうとしては、どう転んでも美味しい話であった。
かくして、「火の鳥」10巻セットは購入され、
我が家のマンガ好きどもは、手塚治虫のライフワークといわれた
「火の鳥」の世界にどっぷり浸かることになったのである。

さて、先に「火の鳥 鳳凰編」が映画化されたと書いた。
自分の購入した「火の鳥」10巻セットも、
それに便乗して販売されたわけだが、
もうひとつ、この映画化に便乗して発売された
「火の鳥」グッズが存在した。
それがファミリーコンピュータ用ソフト、
「火の鳥 鳳凰編~我王の冒険」である。
コナミから販売されたこのゲームソフトは、
映画化された「火の鳥 鳳凰編」をモチーフにしたゲームソフトで、
映画の上映に合わせるようにして、発売された。

手塚治虫の「火の鳥」は、「命」をテーマに、
過去・未来を繰り返しながら、
火の鳥と関わる人の生き様を描いた重厚な作品である。
これをゲーム化するという話に、
当然、そのころの自分は注目せざるを得なかった。
あの、重厚な作品を一体どのような形態でゲーム化するのか?
普通、「火の鳥」をゲーム化する、という話を聞いたなら、
まず思い浮かぶのはアドベンチャーゲームではあるまいか?
選択肢を選ぶことによって
物語が展開していくアドベンチャーゲームは、
重厚なストーリーを表現するのには、もってこいである。
わくわくしながらゲーム情報誌を読んでみると、
製作するメーカーはコナミだという。
少しイヤな予感がした。
コナミ自体は、面白いゲームを何本もリリースしている
非常に優秀なゲームメーカーだが、
そのラインナップを見てみると、ゴエモンシリーズ、
悪魔城ドラキュラ、グーニーズ、月風魔伝、
ツインビーシリーズ、メタルギア、グラディウスと、
アクションゲームと、シューティングゲームが圧倒的に多く、
アドベンチャーゲームは、全くといっていいほど出していない。
一体、どういう風に「火の鳥」をゲーム化するのかと、
さらに詳しく調べてみると、
なんと、「鳳凰編」の主人公である我王が、
奪われた火の鳥の彫刻を集めてまわる、アクションゲームだという。
……。
なんたることか、と思った。
原作の「火の鳥」とも、映画の「火の鳥」とも、
かけ離れすぎていて、元の面影がないではないか。
正直、かなりの拒否反応があったのだが、
「火の鳥」10巻セットを貸した友人の1人が、
このファミコンゲームを購入したという。
そういうことになると、良くも悪くも好奇心がかき立てられ、
その友人宅で、「火の鳥 鳳凰編~我王の冒険」を
プレイすることになった。

プレイしてみて思ったのは、この「火の鳥」のゲームには、
全く原作へのリスペクトが無い、と言うことであった。
主人公である我王は、ノミを投げて敵を倒し、
過去、未来と時代をワープして火の鳥の彫刻を集める。
敵は蛇や役人、盗賊など、
どことなく「火の鳥 鳳凰編」ぽいものから、
宇宙生物、エイリアン、プテラノドン、ティラノサウルスなど、
「火の鳥」っぽさの欠片のないものまで、さまざまである。
16のステージはワープゾーンで複雑に繋がっており、
これを使いこなして、全てのステージを探し出すことが、
クリアに繋がっていく、まさに時間を越えた冒険ゲームである。
これの一体どこに、「火の鳥」の要素があるというのか?

しかし、悔しいことに、これが面白いのである。
アクションゲームを作りなれているコナミが作っているためか、
ゲームのポイントを抑えて作られており、
鬼瓦で足場を作って、これを利用してゲームを進めていくなど、
このゲームのオリジナリティを打ち出している。
隠しアイテムを探したり、ワープゾーンの探索、
いかに早くクリア出来るかを競うタイムアタックなど、
色々な遊び方の出来る、
実に出来のいいアクションゲームなのである。
かくして自分も友人もこのゲームにどっぷりとハマり、
徹底的にやり込むことになるのである。

結局、原作「火の鳥」は、手塚治虫が亡くなったことにより、
未完の作品になってしまった。
彼の作ったプロットでいえば、
過去・未来を往復しながら物語は現代に近づいていき、
最後は現代において、手塚マンガのキャラクターたちが
総登場するようなプロットもあったという。
それをマンガで読めなかったことは、本当に残念だが、
元々「火の鳥」はそれぞれの話単体で完結している物語なので、
未完であることを知っていて読んでも、充分楽しむことが出来る。

そしてそんな原作を冒涜しているような、
ファミコンソフト「火の鳥 鳳凰編~我王の冒険」だが、
結構面白いので、原作とは別に、同じくらい楽しむことが出来る。
なんともおかしな話である。

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