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植物

ツツジとサツキ

更新日:

今までに何度か書いたが、
うちの庭には何本かの木が植わっている。

何種類もの木が生えていて、
それらの木が、季節ごとに葉を茂らせたり、散らせたり、
あるいは花をつけたりしている。
ちょうどこの季節、花をつけているのが「サツキ」である。
サザンカと南天の影に
隠れるようにして生えている「サツキ」は、
花を満開に咲かせている。
日陰に生えているからか、他所に生えている「サツキ」より
花の咲く時期が、やや遅いようである。

この「サツキ」は、家が建てられたのと
ほぼ同時に植えられたものなので、
樹齢は、最低でも30年以上ということになる。
この木を、どこから持って来たのかは
記憶が定かではないが、30年前と比べてみても、
ほとんど大きくなっていない。
30年間、ろくに手入れもしていないのに、
毎年、花を咲かせ続けているので、
意外とタフな植物なのか、
それとも、うちの庭がよほど過ごしやすい環境であるかの、
どちらかだろう。

さて、「サツキ」、「サツキ」と、書いて来たが、
実は、庭に生えているのが本当に「サツキ」なのかどうか、
いまいちはっきりとしていない。
今更、何いってんの?と思われるかも知れないが、
「サツキ」には、非常によく似ている木があり、
庭に生えているのが、本当に「サツキ」かどうか、
確信が持てないのである。
そして、その「サツキ」に非常によく似ている木というのが、
「ツツジ」である。
もし、インターネットで検索できる環境があるならば、
「ツツジ」と「サツキ」というキーワードで、
検索してみてほしい。
画面上に大量の「ツツジ」と「サツキ」の写真が表示されるが、
それを見ても、2つの違いがわからないだろう。
それほど「ツツジ」と「サツキ」は似ているのである。

「ツツジ」は、ツツジ目ツツジ科ツツジ属に属する、
植物の総称である。
一方の「サツキ」も、ツツジ目ツツジ科ツツジ属に属する、
植物である。
……。
どっちも変わらないじゃないか、と思ってしまいそうだが、
よくよく見てみれば「ツツジ」というのは、
「サツキ」に比べて、随分と示す範囲が広い。
具体的にいえば、「サツキ」は「ツツジ」の中の一種といえる。
「サツキ」は、別名「サツキツツジ」と
呼ばれていることからも、
そういう認識で、間違いはないようだ。
だが日本では、この「ツツジ」を
「ツツジ」、「サツキ」、「シャクナゲ」と、
細かく言い分ける習慣がある。
「サツキ」「シャクナゲ」を除いたツツジ属を、
ひとまとめにして「ツツジ」としている。
「アザレア」も同じツツジ属に属しているが、
「セイヨウツツジ」「オランダツツジ」などと
呼ばれていることからわかるように、
一度、アジアからヨーロッパへ伝わった「ツツジ」が、
園芸品種として改良され、
それが逆輸入されたものである。

しかし、ここに挙げたツツジ属の中でも、
「ツツジ」と「サツキ」は、非常に似通っている。
「ツツジ」と「サツキ」を
分類するためのポイントを挙げてみると、

・「ツツジ」の開花期は4〜5月
 「サツキ」の開花期は6月
 (ただし、天候や気候条件で変わってくる)
・「ツツジ」の雄しべの数は5本以上(10本)
 「サツキ」の雄しべの数はほとんど5本
 (ただし、例外もある)
・「ツツジ」の新芽は開花後に伸びる
 「サツキ」の新芽は開花期にすでに伸びている
 (ただし、かなり曖昧)
・「ツツジ」は冬に半落葉するが、
 「サツキ」はほとんど落葉しない
 (ただし、例外も多い)
・「ツツジ」は全ての花が一気に咲く
 「サツキ」は1週間くらいの間に、蕾が徐々に開いていく

となっている。
見てわかる通り、ほとんどの項目で例外が存在しており、
明確な分類ポイントというのが、存在しない。
つまり、目の前にあるのが「ツツジ」なのか「サツキ」なのか、
はっきりと見極めることは、難しいのである。

文献の上では、奈良時代に編纂された「万葉集」の中に
「ツツジ」を詠んだ歌が記されており、
これがもっとも古い記録となっている。
江戸時代の元禄5年(1692年)に、
伊藤伊兵衛によって書かれた「錦繍枕」が、
世界最古の「ツツジ・サツキ」の専門書である。
この本の中では、「ツツジ・サツキ」ともに
150品種以上に分類されており、
春に咲くものを「ツツジ」、
初夏に咲くものを「サツキ」と区別している。
しかし、「ツツジ」に似た「サツキ」や、
「サツキ」に似た「ツツジ」があることも記されていることから、
当時にしてみても、「ツツジ」と「サツキ」の判別は、
難しかったようだ。
ちなみに「ツツジ」は、世界レベルでは600種以上、
日本国内でも40数種が知られている。
伊藤伊兵衛の分類は、これをはるかに上回っていたわけである。

さて、うちの庭に生えている「サツキ」だが、
今回の見極め方を参考に、「ツツジ」か「サツキ」かを
調べてみた。
5月末の現在、花が満開になっているのだから、
「サツキ」か「ツツジ」か判別しにくい。
また、花が一気に咲いたか、徐々に咲いたかは不明である。
雄しべの数は一定ではないし、
新芽は生えているのか、いないのか、判別できないし、
葉も、微妙な数しか落ちてないので、
ここから判断することも不可能だ。

はたして今、庭で咲いているのは
「ツツジ」なのか「サツキ」なのか?
答えは誰にもわからない。

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