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アサリ

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小学校のころ、学校の行事の中に「潮干狩り」があった。

毎年、水の温むころになると、
学校でバスを仕立て、新舞子の海水浴場へ向かう。
揖保郡御津町新舞子(自分の小学生当時)には、
揖保川河口の西側に広がっている広大な干潟があり、
春から初夏にかけては潮干狩り、
夏は海水浴を楽しむことが出来た。

うちの小学校の全生徒、
プラス、多数の一般客が入場しても
のんびりと潮干狩りが出来たのだから、
新舞子の干潟のキャパシティの凄さを、
感じずにはいられない。
それでもさすがに、天然の貝だけでは、
その需要を支えることが出来ないので、
定期的に貝を運んできては、
干潟にバラまいていたらしい。

子供のころは、学校の行事として
「潮干狩り」を行なうのを、
当たり前のように思っていたのだが、
今になって考えてみると、
これはちょっと特殊だったのかもしれない。
学校の行事として「潮干狩り」を行なうためには、
少なくとも日帰りできる範囲に、
「潮干狩り」のできる環境がなければならない。
日本中の小学校の中で、
この条件を満たすことの出来る学校というのは、
それなりに限られてくるだろう。
自分の母校である揖西西小学校は、
この条件を満たしていた、ということになる。
自分と同じ小学校に通っていた子供は、
小学生の間に、少なくとも6回、
「潮干狩り」を体験できたということになる。
この「潮干狩り」で、採取される貝のうち、
もっとも一般的な貝が「アサリ」である。

アサリは、マルスダレガイ科に属する二枚貝である。
一般的に市販されている「アサリ」は、
アサリとヒメアサリの2種類に分けられる。
両方とも卵型をしているが、
アサリの方が大型で、丸い。
ヒメアサリはやや細長く、
殻の表面の肋脈も細く繊細である。
アサリは内湾の、淡水の影響を受ける
やや塩分濃度の低い所に棲み、
ヒメアサリは外洋の、塩分濃度の高い所に棲んでいる。
つまり、我々が「潮干狩り」で掘っている貝は、
ヒメアサリではなく、アサリということになる。
全長は4㎝ほどで、最大のものでも
6㎝ほどの大きさにしかならない。

アサリの同種である、マルスダレガイ科の二枚貝は、
世界中に分布しており、アサリ、ヒメアサリの他にも、
ヌノメアサリ、ヨーロッパアサリなど、様々な種類がある。
日本では、縄文時代から食されており、
貝塚からは多くの貝殻が出土している。
狩猟によって、日々の生活の糧を得ていた縄文時代には、
砂を掘るだけで手軽に採取することのできる
アサリなどの二枚貝は、重要な食料であった。
かつて、コメが日本で栽培されるようになるまでは、
「栗」が日本人の主食であった、と書いたことがあるが、
特に海辺に住んでいた縄文人たちにとっては、
1年中採取することの出来る「アサリ」も、
主食のひとつであったとも考えられる。

食材としては、タウリンやコハク酸など
貝類特有の旨味成分を持っており、
他にもビタミンB12、鉄、カルシウムなどの栄養素を
多く含んでいる。
先に書いたとおり、1年を通じて採ることが出来るが、
旬は4~5月と9~10月であると言われている。
これはアサリの産卵時期とも重なっており、
ここから外れる冬期は、身が痩せて味が落ちる。
調理法として、潮汁、酒蒸し、みそ汁、和え物、
しぐれ煮などの和風の調理法の他に、
バター炒め、スパゲッティボンゴレ、クラムチャウダーなど
洋風の調理法もある。

ただ、どのような調理法をとるにしても、
アサリを調理する場合、
重要になってくるのは「砂出し」である。
これは海底の砂、泥などの中に生息している
貝を食べるためには必須の作業で、
アサリが呼吸や食事の際に、
エサや水と一緒に飲み込んだ「砂」を吐かせることである。
もちろん、砂を吐かせるためには、
アサリは生かしておかなければならない。
市販のアサリの中には、
すでにこの「砂出し」を済ませているものもあるので、
そういうものでは「砂出し」をする必要はない。
そうでない場合は、当然、「砂出し」を行なう必要がある。
といっても「砂出し」には難しい技術は必要なく、
ただ、海水と同じ濃さの塩水に、
アサリを入れておくだけである。
そうすると、アサリが呼吸のために水を吐き出す際、
一緒に体内の砂を吐き出すのである。
アサリをザルの中などに入れておくと、
吐き出した砂を、他のアサリが吸い込むことが無くなり、
「砂出し」がスムーズに行なわれる。
さらに、アサリが水を吐き出す際、
バケツの外に飛び出す勢いで水を吐き出すので、
バケツの上にはフタ代わりに板をおいておくと、
周囲が水浸しになることを防げる。
また「砂出し」自体も、明るい場所より
暗い場所の方が、盛んに行なわれるようである。

さて、最初に小学校から、
全校生徒が潮干狩りに行ったと書いたが、
普通に考えれば、最上級生である6年生が
一番たくさんのアサリを採れる。
体力もあり、6回目の潮干狩りということで
技術も上達している6年生が、
一番たくさんのアサリを掘ることが出来るのである。
が、うちの小学校の場合、
6年生は採ったアサリを
そのまま持って帰ることが出来なかった。
もっとも収穫量の少ない1年生に
6年生が採った貝を分け与えていたからである。
不平等な気もするが、
自分も1年生のころは、
その恩恵にあずかっていたわけで、
今更、文句を言うわけにもいかない。
だが、自分が6年生だったときには、
ある裏技を使えたので、自分が掘ったアサリを
全て自宅に持って帰ることが出来た。

実はカラクリは単純で、自分が6年生だったとき、
弟が1年生だったため、
自分の掘ったアサリを、弟に分けただけの話であった
ちょうどいい年齢差の兄弟がいる時だけ出来る、
究極の裏技だ。
自分が、どれだけ気前よく弟にアサリを渡しても、
結局は同じ家庭へと持ち帰られるのだ。

現在の母校の潮干狩りでも、
このシステムが残っているのかはわからないが、
少子化の進んだ現在では、
こんな「ウラワザ」が使える家庭も少なそうである。

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