兵庫県の県知事選挙が始まった。
ついでにというわけでもないが、県議会議員の補欠選挙も始まった。
7月2日の日曜日が投票日となるので、
選挙期間は、後、残りわずかである。
知事選挙の方はともかく、補欠選挙の方に関しては
(たつの市及び揖保郡選挙区)と入っているので、
ひょっとしたら県内の他の地区では、
知事選挙のみなのかも知れない。
ちょうど、といってはアレだが、
東京都の都議会選挙も行なわれており、
TVをつけてみれば、連日、そちらの方ばかりが
大きく取り上げられており、我が兵庫県の選挙については
かなり扱いが小さい。
まあ、首都・東京の都議会選挙は、
後の国政を占う意味もあるということなので、
大きく注目されるのは当たり前なのだが、
あまりに派手な向こうの選挙と比べると、
やはりちょっと悲しい気分になってくる。
当然、選挙期間開始とともに、選挙カーがやかましく
回ってくるものだと思っていたのだが、
どういうわけか、今回の選挙では、ほとんど選挙カーは回って来ず、
選挙期間開始から10日ほどの間に、うちの近所に回ってきたのは、
ほんの1〜2回である。
まあ、さすがに知事選挙の選挙カーは、
広い県内を回らないといけないため、
そうそう目にすることはないだろうと思っていたのだが、
どういうわけか、県議会議員の補欠選挙の方も、
選挙カーが回って来ない。
たつの市と揖保郡、ということは、
要はたつの市と太子町ということである。
まあ、それなりに広い範囲ではあるが、
それにしたって10日間で1〜2回というのは少なすぎないだろうか?
国語の教科書に出ていた話ではないが、
「そうか、つまり君らはそういうやつなんだな」
と、言ってやりたい気分にもなる。
もちろん、知事選挙の方にしたって1回も回って来ないというのは、
さすがに地元を軽視されているようで、いい気分がするものではない。
市の「期日前投票に行きましょう」という放送は、
それこそ毎日のように流れているので、
こっちの方は、もうすっかり耳馴染みになってしまっているのだが、
肝心の候補者の声というのが、聞こえて来ない。
(まあ、あんまりうるさくてもアレなのだが……)
そんな、今回の選挙なのだが、
今回、知事選挙の方にちょっとしたサプライズがあった。
TVの情報番組などでコメンテーターとして活躍している
タレント(?)が、知事候補として立候補してきたのである。
いわゆるタレント候補だ。
昨今、TVなどで活躍していた人間が、
その知名度を活かして選挙に立候補するというのは、
そう珍しいことではない。
東京や大阪の知事などでは、この手のタレント候補が当選し、
実際に知事職を務めたことがあるし、
国会を見てみても、かつてTVで活躍していたタレントや俳優が、
国会議員となり、大臣の椅子に座るようなことも
決して珍しいことではなくなった。
しかし、いざ、自分の住んでいる自治体の知事選挙に
この手のタレント候補が現れたとなると、
いよいよ兵庫県も、そういう候補が出てくるようになったかと、
面映いような、嘆かしいような、何ともいえない気分になる。
兵庫県知事といえば、現職の知事が4期、
つまり16年ほどその座についている。
彼は当然、今回の選挙にも立候補しており、
5期連続での知事職を狙っているわけである。
県議会の方でいえば、ここ最近では、
あの号泣議員から始まった様々な不祥事が大きく取り上げられたが、
知事に関しては、その手の不祥事というのは特に無いようだ。
知事と議員の関係を考えてみても、
議員たちが起こした数々の不祥事について、
その監督責任を知事に求めるというのも無理があるので、
議員の不祥事の泥をかぶるようなこともなく、
無事に知事職を全うしたということらしい。
特に不祥事を起こさず、まずまず平穏に(議会は別として)
知事職を務めているわけだから、そういう意味での信頼感は大きい。
自民、民進、公明、社民の推薦も受けており、
普通に考えれば、5度目の当選も堅いと思われていたのだが、
今回の選挙に、このタレント候補が立候補したことで、
選挙戦にちょっとした不確定要素が入り込むことになった。
得てして、タレント候補というのは、
もともと高い知名度を持っているため、
選挙戦においては「台風の目」となり、
大番狂わせを起こすこともある。
このタレント候補が、現在の兵庫県の問題として取り上げているのが、
回復しない財政状況と、人口の流出である。
現職知事の長い在任期間においても、
これらの問題が解決されていないことを取り上げ、
さらに近い将来、天皇陛下の譲位や東京オリンピックが
開催されることにも触れて、この歴史的な節目のときに
古びた加齢臭のする表紙のままで良いのか?
このままでは兵庫県は、日本の中で恥ずかしい県になってしまう、と
主張しているわけである。
まあ、これにマジメに突っ込むのであれば、
回復しない財政状況も、人口の流出も、
日本全国で起こっている問題であり、
特に兵庫県のみが抱えているという課題でもない。
具体的な改善策を強く主張しているのならともかく、
どうにかする、というだけでは、さすがに支持を得るのは難しい。
また、天皇陛下の譲位も東京オリンピックも、
兵庫県とはほとんど関係の無い場所で行なわれるので、
これを主張されても、いまいちピンと来ないというのが本音だ。
このままでは兵庫県が、恥ずかしい県になってしまうというのも、
あの号泣議員の号泣シーンが、兵庫県の名前付きで
世界的に報道されたことを考えれば、
すでに恥ずかしい県であるともいえる。
まあ、ちょっと意地の悪いツッコミになったが、
取って代わるべき現職に、大きな失点がないというのは
攻める側からしてみたら、なんともやりにくいものだろう。
現職の知事に何かしらの瑕疵でもあれば、
そこを攻めどころにして、強く攻めていくことが出来るが、
それが見当たらないために、攻めどころがなく、
そのため、勢い自体が生まれてきていない。
それでも、従来のものとは違う斬新な政策や、
果断な改革を主張するのであれば、
それで勢いを付けることが出来るが、
その明確なビジョンがない限りは、
有権者に上手く熱意は伝わらない。
そうなってくると、これはもう、タレントとしての知名度で
徹底的にアピールしていく作戦しかなく、
実際、それがもっとも有効な選挙戦略だと思われる。
一概にタレント議員、タレント知事といっても、
決して政治の仕事ができないというわけでないことは、
これまでに登場した、様々なタレント政治家を見ていれば明らかだ。
中には、タレントであった自分の知名度を活かし、
積極的に自らが広告塔として立ち回り、
大きな成果を上げている知事もいる。
それだけ、「政治」という仕事は多面性があり、
特殊な仕事であるということなのだろう。
そう考えれば、今回のタレント候補にした所で、
いざ、知事になってみたら、
それまでの知事とは全く違ったベクトルで、
凄い活躍をするということも、あり得ない話ではない。
いずれにしても、このタレント候補の立候補のおかげで、
これまで以上に、県知事選挙に関心が高まっているのは事実だ。
この点では、知事にすらなっていない状況で、
大きな成果を上げているということもできる。
果たして4期勤め上げた現職が、横綱相撲で押し切るのか、
あるいはタレント候補が、その高い知名度で番狂わせを起こすのか?
それとも、この2人の陰に隠れている残りの2候補が、
奇跡の大逆転を見せるのか?
そういう意味で、今回の知事選挙は、
これまでにない盛り上がりを見せている。