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ポテチパン

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先日、スーパーのベーカリーコーナーを見ていると、
「ポテチパン」なるものが、並んでいた。

「ポテチパン」。
全く耳慣れない言葉である。
ドッグパンに、トンカツやフィッシュフライを挟んだ商品と
一緒に並んでおり、扱いとしては「総菜パン」ということらしい。
製品自体は透明なセロファンにくるまれており、
ちょうどパンの切れ目の部分に、シール類がべたべたと貼られていて、
何が挟んであるのか、ハッキリと見ることが出来ない。
シールの貼られていない端の方には、
細切りにされたキャベツが入っているのだが、
手に取ってよくよく見ても、それ以外のものが入っているようには見えない。

「あんパン」には「あんこ」、
「カレーパン」には「カレー」が入っているのだから、
その伝でいけば、「ポテチパン」には「ポテチ」が入っていることになる。
「ポテチ」。
「ポテチ」といえば、「ポテトチップス」の略称だがまさか……と思って、
ひょいと裏の原材料表示を見てみると、
そこにはしっかりと「スナック菓子」の文字が。
どうやら「ポテチパン」には間違いなく、
あの「ポテチ(ポテトチップス)」が入っているらしい。

ただ、驚いたのはその値段だ。
「ポテチパン」が、トンカツを挟んだ「トンカツドッグ」や
フィッフュフライを挟んだ「フィッシュフライドッグ」と一緒に
並べられていたというのは先に書いた通りだが、
「トンカツドッグ」「フィッシュフライドッグ」が1本100円なのに対し、
この「ポテチドッグ」は1本130円もする。
明らかにワンランク上の値段設定である。
パンに挟む具材として考えた場合、
「トンカツ」「フィッシュフライ」「ポテトチップス」と並べてみると、
やはりどう考えても「トンカツ」が最高ランクで、
「フィッシュフライ」はそれより1つ落ち、
「ポテトチップス」ということになれば、
さらにそこから2〜3ランク落ちているような気がするのだが、
どういうわけか、製品としては「トンカツドッグ」を超える
130円という堂々たる値札がつけられているのである。

この価値観の下克上とも言うべき事態に、しばし呆然とした後
改めて売り場を見回してみると、
この「ポテチパン」の大きなPOPが貼り出されていた。
それによると
「超B級グルメ ポテチパン
 日本列島 話題沸騰のポテチパン」
とデカデカと書かれている。
「超B級」となっているが、それはつまり「C級」ということだろうか?
たしかに「ポテトチップス」を砕き、
具材としてパンに挟むということになれば、
それはどちらかといえば、グルメというよりはジャンクフードだろう。
それも表通りのものではなく、個人がこっそりと隠れて楽しむ
かなり恥ずかしい系の食べ方のような気がする。
時折、ネットなどでは「ポテチを砕いてご飯にかける」なんていう食べ方を
紹介していることがあるが、扱いは極めてマイノリティである。
そんなマイノリティが、いつのまにやら「日本列島」で「話題沸騰」である。
ここで目にするまで、「ポテチパン」のことは全く知らなかったのだが、
自分の知らない所で、いつのまにやら「ポテチパン」ブームが巻き起こり、
世情を沸騰させていたということだろうか?

POPをよくよく読んでみると、
この「ポテチパン」は、砕いたポテトチップスと刻んだキャベツ
(ポテトチップスのコールスロー)をドッグパンに挟んだもので、
横須賀で有名なソウルフードらしい。
横須賀といえば神奈川県。
神奈川県といえば、甥っ子たちの住んでいる川崎市もある。
横須賀と川崎とは直線距離で30キロも離れていない。
ひょっとしたら甥っ子も、この「ポテチパン」を
食べたりしているのだろうか?

帰宅した後、改めて「ポテチパン」なるものについて調べてみた。

この「ポテチパン」が生まれたのは、今からおよそ半世紀前の
1970年ごろのことらしい。
横須賀市にあった菓子問屋が、余った「ポテトチップス」の扱いに困り、
パン屋に持ち込んで使い道を相談したのが、発端だそうだ。
一説によれば、その「ポテトチップス」は細かく砕けてしまっており、
商品にならなかったとも言う。
砕けた「ポテトチップス」の扱いに困って、
パン屋に持ち込むということ自体がすでに意味不明な気もするが、
菓子問屋とパン屋は近所だったというから、
実際には愚痴の混じった、ご近所との世間話程度のことだったのかも知れない。
パン屋は、この砕けた「ポテトチップス」を、刻んだキャベツと一緒に
マヨネーズで和えてパンに挟み込んだ。
パン屋の方も、他にやりようがなくて、やけくそだったのかも知れない。
だが、この手のやけくそは、時に思わぬ成果を生む。
なんと出来上がったパンがウマかったのだ。
すくなくとも、それから半世紀たっても商品として残っているくらいだから、
それなりに万人受けするウマさだったのだろう。
ただ、問題の菓子問屋は、市内複数のパン屋に
「ポテトチップス」を持ち込み、
パン組合の集まりでも情報交換が行なわれたらしい。
一体、お前はどれだけの量の「ポテトチップス」をダメにしたんだと、
菓子問屋に突っ込みたい所だ。
(この菓子問屋は、すでに廃業したらしい。
 このエピソードから察するに、相当な粗忽者の様なので
 廃業したらしいと聞いて、思わず納得してしまった)
まあ、いずれにしても、押し付けられたような形の
「ポテトチップス」を工夫して、一個の商品に仕上げたのだから、
横須賀のパン屋の創意工夫というか、逞しさには驚かされる。

その後、長らく横須賀近辺のみで知られる、ご当地パンだったらしいのだが、
近年、TV番組で紹介されて、にわかに注目が集まり始めた。
そしてそれが今回、横須賀から遠く離れた、
我がたつの市内のスーパーのベーカリーにまでやってきたというわけだ。

調べてみた所によると、同じような「ポテチパン」でも
これを作っているパン屋によって違いがあるようで、
キャベツの切り方や、他の野菜の有無、店によっては野菜を挟まず
「ポテトチップス」のみを挟んでいる所もあるそうだ。
もうそうなってくると、家で作った方が早くない?と突っ込みたくなるが、
からしバターやらオリジナルマヨネーズを使った味は、
それはそれでプロの味らしい。
やはり横須賀のパン屋はすごい。

さて、スーパーに並んでいた「ポテチパン」だが、
店先で散々悩んだ後、結局は買わずに帰ってきた。
正直、「ポテチ」を挟んであるだけのパンが、
「トンカツドッグ」や「フィッシュフライドッグ」よりも高いというのが
どうしても納得できなかったからであるし、
何より、作ろうと思えば、いつでも自分で作れるし……と、
思ってしまったからでもある。

作ろうと思うかどうかは、自分にも分からないのだが。

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