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鍋島焼

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「鍋島」という言葉を聞いて、何を思い浮かべるだろうか?

有名なものでは、「鍋島の化け猫騒動」というものがある。

さらに「薩長土『肥』」の回では、鍋島閑叟(直正)についてとりあげた。

おおむね、戦国時代から江戸時代にかけての、肥前佐賀藩に関係している。

今回取り上げる「鍋島焼」も、同じく肥前佐賀藩に関係している。

肥前佐賀には、有名な焼き物がある。

「有田焼」だ。

これは佐賀県有田市で焼かれていた、日本最初の磁器で、

同じく佐賀県伊万里市の港から出荷されていたため、「伊万里焼」とも呼ばれる。

「鍋島焼」を説明するためには、まずこの「有田焼」から、

説明していかなければならない。

日本で、磁器が焼かれ始めたのは、江戸時代初期の1616年のことである。

朝鮮出身の陶工、李参平が有田の泉山で白磁鉱を発見し、

有田の窯で磁器を焼き上げた。

これが、日本における磁器の第1号である。

ここから、日本の磁器の歴史が始まるのである。

こうして、肥前佐賀藩にて日本最初の磁器生産が始まった。

それまでの磁器は、すべて輸入に頼っていたため、非常に高価であった。

1630年代までは、色は白い器肌に青一色で模様が描かれていた。

1640年代になると、青一色であった模様が、複数の色によって

描かれるようになる。

この時期のものを、「初期色絵」と呼ぶ。

「鍋島焼」が作られはじめたのは、このころだとされる。

される、という曖昧な表現になっているのは、公式な記録に残っていないからだ。

もっとも早い説では、1628年に焼かれたという説もあるが、

あくまでも俗説にすぎない。

「鍋島焼」とは、肥前佐賀藩が、藩主用の品や、

将軍家・大名家への贈答するための品として作らせた、特別な高級品である。

「鍋島焼」専用の窯が作られ、そこで焼成された。

この「鍋島焼」最大の特徴は、そのクオリティの高さである。

その洗練された絵付けのデザインセンスは、国内の他の焼き物と比べても

最高レベルのものである。

特にその品質に対してのこだわりは凄まじく、

肥前佐賀藩2代藩主鍋島光茂は、以下のことを文書にて命じている。

・近年、作風がマンネリ化しているので、もっと現代風の作品を作るように

・最近、納期が遅れることがあるので、そのようなことのないように

・伊万里焼の他の窯の職人が、みだりに藩窯に立ち入らないようにすること

・他の窯のデザインでも、斬新なものがあれば取り入れるようにすること

・献上用の余り物や、不出来な作品は、上司と相談の後、破棄するように

どうだろうか?

大名のいうことか、と思えるほど細かい指示だ。

これでは、ほとんど現代企業の指示書のように見える。

作風のマンネリ化を危惧しているということは、藩主自らそのデザインを

チェックしているということである。

納期の遅れを戒めるというのは、「鍋島焼」の信用というものを、

重要視しているということだ。

他の窯の職人が、藩窯に立ち入らないように、というのは、

そのデザインや技術の漏出を、防ぐ意味のことであろう。

他の窯の優れたデザインを取り入れるように、という指示は

「鍋島焼」の品質における貪欲さをうかがえる。

さらに余り物や、不良品を破棄することによって、

余分な数が市場に出回ることを防ぎ、「鍋島焼」のブランド力を高めている。

1675年、「鍋島焼」の藩窯は大河内山に移される。

ここで、幕末の廃藩置県が行なわれるまで、

「鍋島焼」は作られ続けることになる。

ここでは約30名の陶工達が、「鍋島焼」の製作にあたっていた。

彼らは藩お抱えの職人として、身分が保障されていた。

その代わり、技術漏洩を防ぐため、藩の厳しい統制下におかれた。

明治4年、廃藩置県が行なわれる。

これによって、藩政治は終わりを迎え、藩によって経営されていた藩窯も

存続していくことができなくなり、「鍋島焼」は途絶してしまう。

しかし赤絵町の今泉今右衛門家によって、

「鍋島焼」の伝統と技法は復興することになる。

廃藩置県の2年後、10代今泉今右衛門が家督を相続、

それまで分業制で行なわれていた「鍋島焼」製作は、今泉今右衛門家で

一貫製作されることになった。

その後、12代、13代今泉今右衛門は「無形重要文化財」に認定されている。

俗にいう「人間国宝」だ。

「鍋島焼」の洗練されたデザインセンスは、現在の感覚で見ても

古くささを感じさせない。

絵付けの美しさ、配置、色彩感覚、バランス、どれをとっても超一流だ。

もし、いつか有田焼の里へと観光に行くことがあれば、

ぜひ大河内山に足を伸ばし、そのハイセンスな磁器群に触れてほしい。

他の陶器によくある、味がある絵付け、ヘタウマな絵付けとは、

一線を画した作品を見ることができるだろう。

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