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笹沢左保「木枯し紋次郎」シリーズ

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時代劇のジャンルのひとつに、「股旅もの」というのがある。

別名「任侠もの」ともいわれ、いわゆる旅ガラスと呼ばれるやくざ者を

主人公にした時代劇だ。

この「股旅もの」のもっとも有名な作品が、今回紹介する

「木枯し紋次郎」シリーズだ。

笹沢左保によって書かれた、「木枯し紋次郎」は市川崑監督によって

テレビドラマとなり、一大ブームを巻き起こした。

紋次郎の口癖であった「あっしには関わりのねえこってござんす」は、

流行語になり、日本中の食堂から楊枝が消えた。

「仮面ライダー」では、主人公の相棒、滝和也が渡世人スタイルで登場し、

「ドカベン」では岩鬼がくわえている木の枝が、

紋次郎の真似であるとされている。

虚無的で、他人と関わり合いになろうとしない、紋次郎のキャラクターは、

それまでの時代劇の主人公とは一線を画していた。

殺陣も、それまでの時代劇と違い、華麗な剣術ではなく、

泥臭い殺し合いを強く意識した、リアルなものになっている。

これはまともに剣術を習ったことの無い、渡世人が主人公であることを

きちんと追求した結果であった。

武器も、武士の刀ではなく、町人が護身用に使った長脇差である。

紋次郎は、この長脇差を手に、地面を転げ回るようにして戦った。

まさに、これまでにない、新しい時代劇だった。

このようにテレビドラマの「木枯し紋次郎」は、

リアル路線を徹底的に追求して、製作されていた。

しかし原作の小説「木枯し紋次郎」は、リアルな渡世人社会の描写もあったが、

それ以上に毎回ミステリ的な、ストーリーのどんでん返しがあった。

この点は意外に知られていないのではないだろうか?

もともと笹沢左保はミステリによってデビューした作家だ。

「木枯し紋次郎」には、そのミステリ的な要素を多分に含んでいる。

もちろん探偵役は紋次郎、ということになるのだが、

紋次郎という主人公は、全く他人に関わろうとしない。

悪人に襲われている被害者に助けを請われても、例の

「あっしには関わりあいのねえこって……」と、見捨ててしまう。

そんな紋次郎が、毎回どういういきさつでそうなるのか、事件に関わってしまう。

何といっても侠客の世界の話だから、事件もわりと陰惨なものが多い。

紋次郎と悪人の立ち回りも終わり、ラスト、ついに事件のウラが明かされる。

紋次郎はひゅうっ、とくわえている楊枝を吹き、事件を暗示している

なにがしかに楊枝を突き刺すと、そのまま去っていく。

これが毎回の定番だ。

「木枯し紋次郎」には、時に豪華なゲストが出てくる。

実在の高名な侠客達だ。

国定忠次、清水の次郎長、大前田英五郎。

その名前を聞いたことのある人も、多いだろう。

国定忠次はすでに名前の売れている、侠客として。

清水の次郎長は、まだ売り出し中の若者として。

大前田英五郎は、関東にその名を轟かせている大親分として。

これらの実在の人物を登場させることによって、

あたかも紋次郎も、実在している人物であるかのように錯覚を起こさせる。

「木枯し紋次郎」に代表される渡世人だが、

実は、彼らが活躍(?)した時代も場所も、かなり限定される。

渡世人が活躍した時代は、ほぼ江戸時代の末期だ。

先にあげた国定忠次や、清水の次郎長は、

ほぼ江戸末期から明治時代にかけての、侠客達だ。

そして彼らの活躍した舞台も、ほぼ関東近辺に限られている。

それは当時、関東には天領が多かったからである。

天領とは、徳川幕府が直轄でおさめている土地のことだ。

この天領には、しっかりとした警察機関が無く、

たまに巡回にくる八州見回りが、唯一の警察機関だった。

そのため、天領の治安は悪化し、各地に侠客の跋扈を許すことになった。

「木枯し紋次郎」はそういう時代に生きた、侠客達の物語なのだ。

折しも時代は幕末。

この「木枯し紋次郎」の物語が展開している裏側では、

明治維新にかけた志士達の物語が、繰り広げられているのである。

しかしそんなことには、全く触れず、渡世人達の物語は紡がれていく。

これは幕末、表の歴史として出ることのなかった、

無宿人、渡世人、侠客という、アウトロー達の物語なのだ。

「木枯し紋次郎」シリーズは、主に2つに分けられる。

最初の「木枯し紋次郎」シリーズ、全15巻。

さらに「帰ってきた木枯し紋次郎」シリーズ、全6巻。

どこまでも虚無的で、人と関わり合いになろうとしない紋次郎の生き方は、

この小説が発表された時代よりも、むしろ現代の方が

理解されるのかもしれない。

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