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バカマツタケ

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先日、ニュースサイトの地域ニュースをチェックしていたら、
このような見出しが目に飛び込んできた。

『「バカマツタケ」の完全人工栽培に成功』

……。
思わず、なんと反応していいものか分からず、考え込んでしまった。

マツタケ」の人工栽培が難しいことは知っている。
マンガ「美味しんぼ」などでも、かつて「マツタケ」の人工栽培が
取り上げられていたことがあったが、その話を見て以降、
「マツタケ」の人工栽培が成功したという話は聞かないので、
そちらの話はまだ成功していないのだろう。
そんな中、飛び込んできた今回のニュース。
多分、自分と同じ様に突っ込んだ人は多いのではないだろうか?
すなわち、「バカマツタケ」って、何だ?と。

ニュースの概要はこんな感じだ。

兵庫県加古川市の肥料メーカー「多木化学」が10月4日、
「バカマツタケ」の完全人工栽培に成功したと発表した。
これまで「バカマツタケ」の人工栽培では、
人工培養の菌を自然環境にある樹木に植え付けて生育した例はあったが、
培養から生育まで、全て室内環境で完結させたのは
今回の例が世界で初めてだという。
今回の人工栽培は、天然木ではなく人工の菌床、
つまりオガクズなどの木質基材に米糠などの栄養源を混ぜて固めた
人工の培地を使って行なわれたということらしい。
シイタケなどが、この人工菌床からニョキニョキ生えてきている様子が
TVなどで紹介されることはあったが、
要は、あれと同じような感じで
「バカマツタケ」が生えてくるということだろうか?
同社は特許を申請中で、3年後の実用化を目指すという。
これが実用化ということになれば、大量に「バカマツタケ」が生産され、
これらが比較的安定した価格で、店先に並ぶ様になるだろう。

さて、やはりここで気になるのは、栽培されるのが
「マツタケ」ではなく、「バカマツタケ」であるという所だろう。
「マツタケ」の方は、今更改めて説明するまでもないだろう。
日本におけるキノコの最高峰であり、秋の味覚の代表格でもある。
毎年、時期になれば国産もの、輸入ものなどがスーパーの
野菜売り場に並ぶが、その量は決して多くはなく、
また値段も、他のキノコ類に比べれば圧倒的に高価である。
「香りマツタケ、味しめじ」という言葉がある様に、
そのキノコとしての真価は香りの方にあるようで、
実際に食味のレポートなどを見ても、
「香り」と「食感」についての記述がかなりの部分を閉めており、
「味」の方については、それほど詳しいものは見当たらない。
では、その「マツタケ」に「バカ」を付け加えた「バカマツタケ」は
一体、どのようなキノコなのだろうか?

「バカマツタケ」は、キシメジ科キシメジ属に属するキノコである。
本家(?)にあたる「マツタケ」も同じく、
キシメジ科キシメジ属に属しているので、
両者の関係は非常に近いといえるだろう。
形状としては「マツタケ」によく似ているが、
サイズ的にやや小さく、全体的にやや赤味を帯びている。
なお「マツタケ」は松林に発生することから、その名前がついているが、
この「バカマツタケ」は、ミズナラ、コナラ、ウバメガシなどといった
広葉樹林帯で発生する。
また発生する時期も、「マツタケ」に比べるとやや早いようだ。

何よりも気になるのは「バカマツタケ」というひどい名前の由来だが、
先に述べた様に、松林ではなく雑木林などに発生する点、
「マツタケ」に比べると早い時期に発生する点などから、
「バカ」な「マツタケ」の意味で名付けられた。
別名では「サマツ(早松の意味か?)」や
「ニタリ(似たりの意味らしい)」などとも呼ばれ、
これを珍重している地域もあるらしい。
この2つの名前を見ても(さらには「バカマツタケ」も含めて)
分かる様に、あくまでもその名前は「マツタケ」がその元になっている。
「サマツ」にしろ「ニタリ」にしろ、
「バカマツタケ」よりは、遥かにマシな名前なのだが、
あくまでも正式名称は「バカマツタケ」ということになっている。
それどころか学名ですら、そのまま「バカマツタケ」である。
「バカマツタケ」も無念であろう。

さて、名前だけでいえば「マツタケ」の劣化版とのイメージの拭えない
「バカマツタケ」であるが、肝心の味の方はどうなのか?
そこについて調べてみた所、香りについては「マツタケ」より強く、
味については「マツタケ」とほぼ同じだという。
……。
先に書いた様に、「マツタケ」の真価はあくまでも、その「香り」にある。
その肝心の「香り」について「マツタケ」を超えているのであれば、
これは劣化版どころか、上位種といっていいのではないか?

そういうような事情もあってか2015年、
農林水産省は「バカマツタケ」を、
2015年度「高級菌根性きのこ栽培技術の開発」委託事業の
研究対象としてきた。
2017年、奈良県森林技術センターと森林総合研究所が
屋外での人工的な子実体(キノコ)の発生に成功、
そして2018年10月、多木化学による
「バカマツタケ」の完全人工栽培の成功と、
この事業はわずか3年ほどの間に、しっかりとした形を成したわけである。
先にも書いた様に、「バカマツタケ」の完全人工栽培に成功した多木化学は
3年後の実用化を目指すとしており、これが実用化されれば
この人工栽培の「バカマツタケ」が大量に流通することになる。
そうなれば、この「バカマツタケ」の価格も安く抑えられ、
日常的に食べられるキノコの1つとして、
我々の食生活に定着していくことになるだろう。

ちょうど、これと同じような前例がある。
シイタケだ。
もともとシイタケは希少性が高く、
現在の「マツタケ」以上に高価なキノコであったのだが、
人工栽培の技術が確立することによって、大量に生産されるようになり、
現在のような日常的なキノコへと変わっていった。
もしこれと同じことが起こるのであれば、
「バカマツタケ」は1年を通して、安定した価格で供給されるようになり、
日常的なキノコとして、愛用されるようになるだろう。

もしそうなったとき、「マツタケ」は現在の様に
有り難がられる存在であり続けることが出来るのだろうか?

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