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潜水艦〜その2

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前回、「潜水艦(船)」について取り上げ、
そのメリットとデメリットを書いた。
今回は、「潜水艦(船)」が水に潜る仕組みについて書いていく。

以前、このブログで「飛行船」について書いたことがある。
最近では、ほとんど目にすることもなくなってしまった「飛行船」だが、
その原理ということで言えば、これは非常に「潜水艦」に似ている。
両者とも、水やガスの力を借りて、気体の比重を変化させ、
飛行・潜航の力としているからだ。

「飛行船」でいえば、あの巨大な風船の中に、
空気よりも比重の軽い気体、例えば水素やヘリウムなどを充満させ、
機体全体の比重を空気よりも軽くすることによって「浮力」を得て、
上空へと浮かび上がっている。
ある程度の高度まで上昇すれば、当然、気圧が下がってきて、
機体の比重と空気の比重が等しくなる。
そうなると、機体はそこで上昇が停まり、
一定の高度を漂うことになる。
後は、機体についているプロペラを回転させることにより、
機体を水平方向へ移動させるための力を得る。
機体を降下させるときは、風船の中の気体を抜くことによって
気体全体の比重を空気よりも重くし、
ゆっくりと地上へ向けて「落下」していくのである。

「潜水艦」の場合、艦内のタンクに水を入れることによって
船体全体の比重を、水よりも重くする。
「飛行船」では、空気よりも軽い気体を入れていたので、
「潜水艦」の場合、水よりも重い液体を入れないといけないのでは?
という風に考えてしまうかもしれないが、
「潜水艦」の場合、船体自体が
水よりもかなり比重の高い素材で造られているため、
タンク(バラストタンクという)に水を入れることによって、
その比重を水と同じか、それより重く調整できるのである。
かくしてタンクに水を入れた「潜水艦」は、
石ころが池の中に沈んで行くがごとく、
ブクブクと沈んで行くことになる。
もちろん、そのまま沈み続ければ、
石ころと同じで水底についてしまう。
これではただの「沈没」であり、「潜航」とはいえない。
沈降して行く途中で、タンク内の水の量を調整し、
(バラストタンク内に圧縮ボンベの空気を送り込み、水を排出する)
水の比重とピタリと釣り合わせ、
沈降を停止させ、水中を漂うのである。
この水中での静止状態、つまり、
浮上もせず、沈降もしないという状態を作り出し、
さらに複数あるタンク内の水の量を調節し、船体を安定させることを
専門用語で「ツリムを作る」という。
ツリムを作った後は「飛行船」と同じく、船体についている
スクリューを回転させることにより、推進力を得て、
水平方向に移動するのである。

さて、ここからタンク内に空気を入れ、水を排出して
船体の比重を水よりも軽くすれば、
当然、船体は浮上を始め、やがては水面上に浮かび上がることになる。
実は、このときが「潜水艦」にとって、もっとも危険な瞬間である。
前回、書いたように「潜水艦」というのは、一切目視が効かず、
完全な盲目状態で航行している。
電波も使えないため、全ては音波である「ソナー」を介して、
船外の状況を把握するしか無いのである。
だが、この「ソナー」は海上の様子を捉えるのが、非常に苦手だ。
というのも、海上には波の音などの雑音が多く、
さらに音波が海面によって反射されるので、
正確な状況をつかみにくいのである。
一応、海面上を確認できる潜望鏡がついてはいるものの、
これを使用するためには、水面直下まで浮上せねばならず、
さらに夜間や、波が高かったりすると、その潜望鏡すら
あまり役に立たない状況になってしまう。
海は果てしなく広いとはいえ、結構な数の船が航行している。
彼らは、水面下を潜航している「潜水艦」を捉えることが出来ない。
つまり、浮上してくる「潜水艦」というのは、
海面上を航行する船にとって、全く予想外の障害物になってしまうので、
これをかわすのは、はっきりいって不可能といって良い。
これによって引き起こされたのが、2001年にハワイ沖で起こった
「えひめ丸」の事故である。
米国の原子力潜水艦グリーンヴィルが、潜望鏡を伸ばそうと
水面直下まで浮上したとき、その潜望鏡か艦橋が、
愛媛県の水産高校の実習船だった「えひめ丸」の船底に接触、
これを切り裂いてしまったのである。
この事故により、生徒・教員合わせて9名が死亡した。
(ちなみに当時、総理大臣だった森総理は、
 ゴルフプレイ中に事故の一報を受けたが、そのままプレイを続行した。
 後にこの件が問題視され、森総理は辞任することになった)
滅多に起こらない事故とはいえ、
これはすべての「潜水艦」が潜在的に抱えている危険性であるといえる。

さらに「潜水艦」が、事故などにより故障した場合は、
非常に厄介な事態に陥る。
といっても、最悪でも浮上さえ出来れば、ことは簡単である。
サッサと浮上して、船内から脱出してしまえば良いのである。
問題は、故障によって浮上が出来なくなってしまった場合だ。
浸水などによって「潜水艦」が沈降し、
船内の耐圧殻(外部の圧力(水圧)から乗組員を守る殻)の
限界を超える水圧の深度まで沈んでしまえば、
もうこれは、その時点でオシマイである。
船体ごとぐしゃりと潰れて、誰も生き残ることは出来ない。
ただ、それほどの深さでない場所に鎮座した場合は
これを救助に向かうことが出来る。
救助母艦より乗員回収用の装置をおろしたり、
小型の救難艇を発進させ、鎮座船に取り付いて、
脱出口から乗員を回収することが出来る。
ただこれら場合、一度に大人数の乗員を回収することが出来ないので、
時間をかけて、何度も往復する必要がある。
極めて水深の浅い場所であれば、
脱出口から直接海の中に出ることも出来るが、
この方法が使えるのは、せいぜい深度数十mといった所で、
仮に上手く命が助かったとしても、
潜水病や鼓膜障害にかかってしまう。
最近ではこれを防ぐためのダイバースーツを、
艦内に装備している船も多くなった。
潜水艦乗りは、それぞれ専門の訓練を受けてきている乗員なので、
事故によって彼らを失うようなことになると、
人的な被害は、すぐに取り返しのつかないほど
大きなものになる可能性がある。
そういう事態を避けるためにも、潜水艦の安全確保は、
非常に重要なものとなっている。

さて、前回の「潜水艦」のメリット・デメリットに続き、
今回は「潜水艦」の水に潜る仕組みについて書いてみた。
次回は「潜水艦」の辿ってきた歴史を書いてみる。

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