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戦艦大和・記憶の歴史〜その4

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ここまで、3回にわたって、
戦後、戦艦大和が人々にどう受け入れられ、
どう扱われてきたかを書いてきた。

終戦によって、人々にその存在が明らかにされた大和。
「戦艦大和ノ最期」の発行によって、
その最期の様子が明らかになり、
「戦記物」と呼ばれる、子供向けの読み物によって、
大和は次第に人気を得ていく。
途中、創作物によって空を飛んだり、怪獣になったりしながら、
やがて「大和」を下敷きにしたアニメ、
「宇宙戦艦ヤマト」が製作されるに至った。

今回は最終回として、「ヤマト」以後から
現在に至るまでを書いていく。

一時のことであるが、
「架空戦記」と呼ばれるものが流行ったことがある。
歴史に「IF」はないとはいうのが1つの常識だが、
これを敢えて無視して、歴史の「IF」を描いたものが
「架空戦記」である。
書店には様々な「架空戦記」が並び、
もし、あのとき、ああなっていなかったら?という
「IF」の物語を提供している。

この「架空戦記」には、戦国時代もの、幕末ものなど、
様々なものが存在している。
特に日本の歴史が大きく動いた時代こそ、
「IF」の入り込む隙がある。
そういう意味では、太平洋戦争というのは
まさに日本にとって最大の転換点でもあり、
日本史上においても、もっとも波乱に満ちた時代であった。
だから、「IF」の物語が多く存在しているのも、
この太平洋戦争の時代である。
ミッドウェー海戦で敗北していなかったら?
レイテ沖海戦で敗北していなかったら?
沖縄特攻作戦が成功していたら?
こんな風に様々な「IF」を考えることが出来る。
そしてその「IF」の中には、当然のように、
「戦艦大和が大活躍していたら?」というものもある。
日本人にずば抜けた人気がある、最大最強の戦艦・大和。
これを「IF」の物語の中で、存分に大活躍させたいというのは、
当然といっていい願望だろう。
事実、数多ある「架空戦記」の中には、
戦艦大和を主人公に据えたものも、
多く存在しているのである。

実は「架空戦記」というのは、戦前から多く書かれている。
ただ、これら戦前の「架空戦記」は、
過去の歴史の「IF」を描いたものではなく、
近い未来に起こるかも知れない、
諸外国との戦争をシミュレーションしたものである。
だからこれを執筆しているのは、歴史好きの一般人などではなく、
キチンと日本の兵力・諸外国の戦力、
国際状況を把握している軍人である。
そしてこのシミュレーション小説の中には、
太平洋戦争を事前に予測しているものもあり、
その中では、きっちりと太平洋戦争の敗北を
見通しているのである。

だが今回、自分の言っている「架空戦記」は、
そういうものではない。
過去の太平洋戦争の敗北の歴史をねじ曲げ、
戦艦大和を活躍させるようなタイプの話である。
言い方は悪いが、劣等感からくる一種の自慰行為だ。
しかしそういうものが多く発売され、
それが一定数売れているという事実は、
戦後何十年経っても、
あの敗戦に劣等感を感じているということかも知れない。

「連合艦隊、ついに勝つ」では、歴史に詳しいマニアが
過去の時代にタイムスリップし、日本軍に入れ知恵することで
歴史を覆していく話である。
その入れ知恵によって、大和は大活躍するものの、
戦局の大勢を覆すことは出来ない、ということになる。
ただ戦艦大和は充分に活躍し、
それまでのような、戦中全く役に立たなかったという汚名を
返上するストーリーである。

「アメリカ本土決戦 戦艦大和 米艦隊を殲滅す」は、
連合艦隊が大活躍して連戦連勝、
アメリカ西海岸に上陸し、一帯を占領する物語だ。
やがてアメリカの生産力によって、
戦局が逆転されることを示唆して、物語は終わる。

この辺りはどちらも、結局日本の敗北は変わらないという
「締め」になっている。

「超戦艦大和、出撃す」、「飛行戦艦大和、出撃」
「陸上戦艦大和」は、どれもぶっ飛んだ作品だ。
「超戦艦」では、磁電砲という超兵器を大和が装備しているし、
「飛行戦艦」は、大和が空を飛ぶ。
「陸上戦艦」では、大和にキャタピラがついていて
アメリカ大陸を走破するのだ。
ここまでくると、もはやマンガである。
いっそのこと人型ロボットに変形して戦っても、
違和感のないレベルである。
ただ、そこまで「荒唐無稽」なことが起こらない限り、
太平洋戦争には勝てないよ、ということかもしれない。
そういう意味では、リアルかも……と思える。

そして現在。
現在の大和のキーワードとなるのは、「女性」である。
2013年に製作された「宇宙戦艦ヤマト2199」では、
オリジナル版に様々なアレンジが加えられていたが、
その中でも最大のものは、森雪以外にも女性クルーが増え、
大和の艦内がグッと華やかになったことである。
さらにガミラス帝国側にも女性キャラがふんだんに配され、
あの男臭かった「ヤマト」のイメージは一変してしまった。

さらに同じ2013年から始まったオンラインゲーム、
「艦隊これくしょん」だ。
これは日本海軍に所属していた軍艦を女性化し、
彼女等を編成して艦隊を作り、
深海棲艦と呼ばれる敵と戦わせるゲームである。
この中で戦艦大和は、
女性キャラクターの1人に変わってしまう。
もちろん、大和だけでなく
他の艦船もすべて女性化している。
こちらの方もやはりキーワードとなるのは「女性」である。
戦後70年を経て、男100%だった帝国海軍は、
女100%の帝国海軍へと、変わってしまったのである。

戦艦大和は、戦時中ほとんどの人に知られることなく、
知られぬままに九州坊ノ岬沖に沈んだ。
人々が「大和」を知ったとき、
すでに「大和」はなかったのである。
人々はわずかな情報を集め、
その頭の中に「大和」を作り上げた。
そういう意味では、
「大和」は「幻」でもあり「亡霊」でもある。
「幻」であるがゆえに、
「大和」は人々の願望を容易に受け入れ、
空を飛んだり、怪獣になったり、宇宙戦艦になったり、
陸上戦艦になったり、美少女になったりしたのである。
「幻」である「大和」は、これからも人々の願望を受け入れ、
自在に姿を変えていくだろう。

戦艦大和の歴史は、太平洋戦争中に終わっている。
それ以降の歴史は、人々の記憶が作り出した、
いわば記憶の歴史なのである。

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