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ケーキを7等分する方法

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今でこそ、日本は核家族化が進み、
1家族を構成する人間の数が、3〜4人なんていうのが
当たり前になってしまっているが、
一昔前では、1家族に5〜6人なんていうのは当たり前で、
もっと以前では、1家族8〜10人なんていうこともあった。

実際、うちなどでも、自分が子供のころは、
自分を含めた子供3人、父親、母親、婆さんと、
6人家族であった。
うちの家系はどういうわけか男が早死にするので、
父親、母親、爺さん、婆さんという
フルメンバーが揃うことはなく、
大体の場合が、父親、母親、婆さんという定番メンバーに
子供が加わるという家族構成である。

自分が子供のころは、誕生日といえば
1年に1度のイベントで(当たり前であるが)、
うちではプレゼントというものはなかったものの、
バースデーケーキだけは、必ず1ホール、供されていた。
うちには子供が3人いたので、
それぞれの誕生日に、それぞれ1ホールずつ、
さらにそれプラス、クリスマスにはもう1ホールということで、
1年間に4回、ケーキにありつく機会があったことになる。
子供の数+1回(クリスマス分)、
自分の子供のころは、ほとんどの家庭で
1年間にそれだけのケーキを食べていたと思われる。
(多分、現代でもそれほど変わっていないと思うが……)

さて、このホールのケーキを食べる際は、
どうしたって「これ」を切り分けてから、食べることになる。
大方のホールケーキは平べったい円柱形で、
これを切り分ける際は、中心から外周側へと、
放射状に切れ目を入れて、切り分けることになる。
ホールケーキの切り分け方は、
この方法が全国的に採用されており、
自分自身、ホールケーキをこれ以外のやり方で
切り分けているのを、見たことがない。

このとき重要なのは、
「いかに均等に切り分けるか?」
ということである。
普段、いい加減な子供たちも、
このときばかりは、厳しい視線をケーキに送ることになる。
量に直結してくる中心の角度はもちろんのこと、
イチゴの大きさ、チョコで出来た飾り物の有無、
果てはクリームの総量に至るまで、
厳しいチェックが入れられ、
少しでも不満があると即座に「物言い」がつく。
誕生日のケーキであれば、「主役」が多少、
「いい目」を見るのは暗黙の了解であるが、
それの無いクリスマスケーキでは、それぞれ一歩も引かなかった。
まさに子供たちにとって、ケーキの公平な分配は、
何よりも重要な関心事だったのである。

さて先日、アテも無くネットサーフィンをしていると、
このようなタイトルのページを見つけた。

『面接官「ケーキを7等分したい、どうする?」』

就職面接において面接官にこんな質問をされた、
あるいはされたら、どう答えるのか?ということを掲示板で聞き、
それに寄せられた様々な「答え」を、まとめたものである。

ホールケーキを切り分ける際、
奇数に切り分けるのはなかなかに難しい。
偶数に切り分けるにしても、
2つ、4つ、8つに切り分けるのは比較的容易だが、
6つに切り分けるとなると、難しくなる。
中央の角度を、上手く60度にしなければならないからだ。
同じように3つに切り分ける場合は120度、
5つに切り分ける場合は72度にしなければならない。
分度器をあてたりできない以上、
正確な角度で切り分けるのは至難の業である。
だが、ここまでは、まだいい。
正確な角度で切り分けるのが難しいといっても、
360度は2でも、3でも、4でも、5でも、6でも、8でも、
割り切れるからである。
少なくとも、その角度に切り分ければ、
(角度的には)正確に等分できる。
だが、7つに切り分けるとなると、そうはいかない。
360度は7では割り切れないからである。

この問題に対し、掲示板にこの問題を書き込んだ人物の答えは
「51度に切り分ける」というものであった。
さらにオチとして「落ちました」と書き込んであった。
51度の角度でケーキを切り分けたとすれば、
51度のケーキが7つと、3度のケーキがひとつ出来上がる。
7等分すべき問題で、7等分していないわけだから、
面接官が彼を落としたのは、極めて適切な判断だ。

もちろん、これ以外にも様々な答えが書き込まれた。

・薄くスライスする
・8等分にして1切れ捨てる
・あと6ホール買ってくる
・無理

などである。
スライスする、というのは問題外だ。
ホールケーキをスライスすれば、
ますますきっちりと等分しにくい。
というよりは、構造的にスライスはほぼ不可能だ。
8等分して1切れ捨てるというのも、
7等分するという条件を無視している。
不満が出ないように7人で分ける、という問題なら、
それもアリかもしれないが、今回の問題だと、
明らかに条件を満たしていない。
同じく、6ホール追加も条件を無視していて、問題外だ。
無理と思ったものを、「無理」と言い切る姿勢については
それなりに評価できるが、
実際に7等分することが出来るのならば、
「無理」と答えた人は、それに思い至れなかったことになる。

強烈なのは、

・ミキサーでドロドロにして、7つのコップに等分に分ける

というものだ。
なるほど、ケーキとしての形態は保っていないが、
これは確かにひとつの解決法である。
この方法の優れている所は、
「体積」というひとつの基準において、
非常に厳格に7等分が達成されている点だ。
また、ミキサーでかき混ぜているため、
イチゴが、チョコが、なんていう問題も起こらない。
唯一の問題は、この状態になったケーキを
誰も食べたがらないだろう、という点である。

面白いのは、様々な意見が出ているにも関わらず、
ケーキの「重量」に言及した意見が、
ほとんど無かったことである。

我々が、スーパーなどで食品を購入する場合、
多くの食品は「重量」という基準で小分けされている。
袋入りの食品であれ、肉や魚などのトレー入り食品であれ、
多くの食品には「内容量」という表示がされており、
そのほとんどは「g」表示で中身の量を表している。
今回の問題をこの基準で考えるのであれば、
ホールケーキの重量を計測した後、
51度〜52度の角度でケーキを7つに切り分け、
あとは、ひとつがホールの7分の1の重量になるように
クリームやイチゴなどを移動すればよい。
ミキサーを使った方法は、
「体積」を基準に7等分を達成していたが、
この方法だと、もっとも食品と相性の良い「重量」において、
きっちりと7等分を達成することが出来る。
「体積」や「重量」を基準にした方法で7等分した場合、
「それは本当に7等分ですか?」
と聞かれた場合にも、
きっちりと根拠を持って答えることが出来る。

……。
確かに「重量」を基準にして7等分するというのは、
アイデアとしては全く独創性のない、
つまらない方法である。
しかし、散々色々な方法が考えられても、
「重量」を基準にして7等分する方法が無かったのは、
不思議な感じがする。
ひょっとすると、この問題に答えている人たちの頭の中には、
「ケーキ=目分量で切り分けるもの」という固定観念が
出来上がっているのかも知れない。
恐らくは子供のころに、
自分と同じような「ケーキ体験」をしており、
その呪縛から逃れられていないのだとすれば、
「重量」を基準にした方法が、
すぐに浮かんでこないのも、あり得ることである。
「ケーキ」の重量を量るというのは、
それまでの体験からすれば、明らかに枠の外の考え方であり、
考え方が柔軟でなければ、そこには至れない。
そう、これは一種の「コロンブスの卵」である。
説明されれば、なんだ、そんなつまらない方法か、
と思ってしまうが、
実際、自由に考えてみても、
まるで盲点のように、「その方法」には気付かないのである。

ケーキを7等分するという問題は、
その「枠」を超えれる人間なのかどうかを、
量ろうとしているのかも知れない。

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