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アルプス一万尺

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現代では流行らないが、昔はハイキングや登山に出かけた際、

ギターを持ち出してみんなで歌を歌う、みたいなノリがあった。

もう何十年も前の話で、すでに自分が子供だったころには、

えもいわれぬ、時代遅れ感が漂っていた。

どうも、自分たちの親の世代には、そういうのがあこがれであったらしく、

その世代が組んだキャンプのプログラムには、

キャンプファイアーを囲んでみんなで歌、みたいなのがあった。

そういうのをみるたびに、なんともいえない感覚に陥った。

今考えれば、これがジェネレーションギャップというものだったのだろう。

その手の歌は、今でも山小屋などで歌っている人たちがいる。

かなり高齢の人たちが多い。

きっとその人たちの、青春の歌だったのだろう。

さすがにそういう郷愁に対して、どうこう言うつもりもないが、

あまり巻き込まれたくないなー、という気持ちは持っている。

そういう場所で歌われる歌は、現代の若者には通用しない。

時代がかった、山の歌だ。

その大方が、老人たちの思い出とともに消えていくのが運命だ。

しかしそんな中、本物だけは残っていく。

そういう山の歌のひとつが「アルプス一万尺」である。

軽快なノリのこの歌は、子供の手遊びで有名だ。

2人で向かい合って、音楽に合わせてお互いに手を打ち合う遊びだ。

1番の歌詞はかなり有名だが、ちょっとここに書き出してみる。

「アルプス一万尺 小槍の上で アルペン踊りを 踊りましょう」

後は、ランラランラ~と続く。

この歌詞を改めて検証すると、意外なことが見えてくる。

まず、冒頭の「アルプス一万尺」の箇所だ。

一万尺、とある。

メートルではなく、表記が尺貫法な所に時代を感じる。

ちなみに、1尺は約30cm。

つまり一万尺はメートル法になおすと、約3000m、ということになる。

3000m。

アルプス山脈にしては少々低すぎはしないだろうか?

ヨーロッパアルプスの最高峰はモンブランで、標高は4810mだ。

1800mも低い。

実は、それもそのはずで、ここで歌われている「アルプス」というのは

日本アルプスのことなのだ。

だとすれば、その標高が3000m、というのも大体あっている。

日本アルプスには3000m峰がいくつもある。

次は「小槍の上で」だ。

日本アルプスで「槍」といえば、「槍ヶ岳」である。

標高は3180m。

一万尺よりも少々高いが、ほぼ高さは合っている。

「小槍」というのは、槍ヶ岳の側にある、小さな突起のことをいっている。

かなり尖っている。

続く「アルペン踊り」がどんな踊りかわからないが、

ちょっと踊りを踊れそうな所ではない。

ここで踊るとなったら、それこそ命がけだろう。

だが、恐ろしいことに、動画サイトで検索してみると「槍ヶ岳」の山頂で

踊っている動画が結構ある。

はっきりと確認はできないが、動画によっては「小槍」の上で踊っている

ものもあるようだ。

「アルプス一万尺」の影響力、恐るべしというところだろう。

が、仕方がないのかもしれない。

自分も、「槍ヶ岳」や「小槍」に登れば、やってしまう自信がある。

とんがった高山の山頂という、一種の極限状態が、

登山者をハイな状態にするのかもしれない。

クライマーズハイだ。

面白いのは、どの踊りも「アルプス一万尺」のリズムで踊っていることだ。

……それは「アルペン踊り」ではないはずだが。

振り付けもまちまちだ。

若干、似通った部分はあるので、ひょっとしたら何か共通の振り付けが

あるのかもしれないが、踊っている動画はどれも踊りとしては微妙なので

参考にはならない。

ちなみにこの「アルプス一万尺」、歌詞が29番まである。

誰が作ったのかわからないが、がんばって作ったものだ。

もともとこの曲は、日本で作られたものではない。

ではどこで作られたのか?

もちろん、「アルプス」だからヨーロッパで、といいたい所だが、

実はこれはアメリカの民謡になる。

原題は「Yankee Doodle(ヤンキー・ドゥードゥル)」。

直訳すれば、「まぬけなヤンキー」。

ひどいタイトルだ。

この曲が日本に入ってきたのは1853年、ペリーと一緒に黒船でやってきた。

この時、黒船の音楽隊が演奏したのが、日本におけるこの曲の初演奏であった。

現在、「山の歌」と聞いて、日本人が一番思い浮かべるのがこの歌だろう。

そう考えれば、なかなかに偉大な歌だ。

もちろん「槍ヶ岳」の山頂で踊るのもいいが、

うっかり転げ落ちたりしないように、細心の注意を払って踊ってほしい。

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