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石鎚山〜その3

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By: Say-no

県道40号線という、かなりの悪路を越えて
ついに辿り着いた「土小屋」。

ロッジと売店が並んで建っており、
少し離れた場所には「石鎚神社」もある。
石鎚スカイラインに沿って進むと、
その先は行き止まりになっており、広い駐車場が作られている。
さらにその駐車場の手前には、国民宿舎「石鎚」への分岐があり、
その国民宿舎の奥からも、登山コースに入ることが出来る。

我々は駐車スペースに車を停め、荷物を確認した後、
徒歩で国民宿舎「石鎚」へ向かった。
幸いなことに、雨は上がっていて雨具を使う必要はない。
だが、友人はせっかく買った新しい雨具を着てみたかったのか、
これを着込んで登山するようだ。
アスファルトで舗装された道路を登って行くと、
やがて目の前に、国民宿舎「石鎚」が見えてくる。
かなり年代物の建物らしく、結構薄汚れている。
建物の前は駐車場になっているのだが、
車は1~2台しか停まっていない。
連休の初日でこれ、ということは、あまり客が入っていないか、
あるいは、客はここを通り過ぎて
石鎚山山頂の山荘に行ってしまうのかも知れない。

石鎚山は標高1982m。
山頂は西日本で一番高く、
眼下には四国国定公園の山々が広がっている。
日本七霊山のうちの1つで(残りは富士山、立山、白山、
大峰山、釈迦ヶ岳、大山(鳥取))、古くは奈良時代から
修験道の地として知られており、
かの弘法大師(空海)も登って修行したといわれている。
現在でも、7月に行なわれる「お山開き」には、
全国から白装束をまとった修験者が集まり、山頂を目指す。
実際、この日の登山でも、ホラ貝を携えた修験者風の夫婦や、
頭をきれいに丸刈りにした修験者装束の女性などを見かけた。
山頂までには、前社森の「試しの鎖(74m)」を含め、
「一の鎖(33m)」、「二の鎖(65m)」、
「三の鎖(68m)」と、4つの鎖場がある。
ただ、これら全ての鎖場を登るためには、
ロープウェールートを登る必要があり、
今回、自分たちが登った土小屋ルートでは、
「二の鎖」と「三の鎖」しか登ることが出来ない。
考えようによっては、この鎖場こそが
石鎚山登山の醍醐味といえるのだが、
マジメな話、かなり危険な場所のため、
クライミングの技術、知識のない人間にはお勧めできない。
もちろん、この鎖場を通らなければ
山頂にたどり着けないということはなく、
それぞれの鎖場には、迂回ルートが用意されており、
見ていた所では、ほとんどの登山者が
迂回ルートを利用しているようだ。

国民宿舎「石鎚」の駐車場の奥から山に入る。
この道は全くの山道で、幅も1人分ほどしかない。
2~300mほどこの道を登って行くと、
峰の上に作られている幅の広い登山道に合流する。
この道が、本来の土小屋ルートだ。
片道が約4.8km。
北西から南東に伸びる峰の上を、
縫うようにして登って行くコースだ。
峰の上を歩いている様なものなので、
右か左かのどちらかは、グッと下まで切れ落ちており、
その方向には、2000mに近い山々が見えるはずなのだが、
いかんせん、常時真っ白い霧が沸き立っており、
それらの山々の姿は、ほとんど見ることが出来なかった。
距離は長いように見えるが、傾斜の緩やかな場所が多く、
道の良く整備された歩きやすいコースだ。
所々、丸太を加工した木道が設置されており、
その上を易々と歩くことが出来るのだが、
この木道が設置されているのは、
山の斜面がかなり急に切れ落ちている場所で、
木道には手すり等の落下防止用のものが何もないので、
場所によってはかなりのスリルを味わうことが出来る。

コースには第1~第4までのベンチが設置されているのだが、
ちょうど第3ベンチを過ぎたあたりから、登山道は峰の上を外れ、
山の北面をトラバースして行く形になる。
左手には、100m以上ある様な岩壁がそそり立ち、
右手には数百m以上、急斜面が続いている。
霧などが全く無ければ、さぞ素晴らしい絶景の中を
歩くことが出来ただろう。
第4のベンチを過ぎ、しばらく進んで行くと
ロープウェールートとの合流地点である、二の鎖小屋にたどり着く。
ここには休憩所とトイレも設置されており、
休憩を取っている人も多い。
(ちなみにトイレは有料で、
 1回100円のチップを入れる方式である。
 地上の感覚からしてみれば
 「トイレはタダ」という気持ちになるだろうが、
 こういう場合は文句を言わずに、チップを入れたい)

そしてここから、石鎚山登山の目玉の1つである「鎖場」がある。
ロープウェールートで登ってきた人は、
すでに2カ所の「鎖場」を越えてきているのだが、
土小屋ルートで登ってきた自分たちにとっては、
ここが最初の「鎖場」ということになる。
だが、折り悪く、ここに来て天気が悪化し、
ポツポツと雨が降り始めた。
あわてて雨具を取り出し、これを着込んだのだが、
雨はシトシトと降り続け、止む様な気配が見られない。
ここから「鎖場」に進むか、迂回ルートに進むかの選択を
迫られるのだが、どうもうちのメンバーは皆、
「鎖場」へ行くつもりらしい。
二の鎖小屋から上に登って行くと、
エラく太い、ゴツい鎖が2~3本、ぶら下がっている。
斜面にはかなりエグイ角度がついており、
1つ間違えば数十mを、岩に叩き付けられながら
落下して行くことになる。
そんなことになれば、まず命はないだろう。
だが、そういう危険を感じていないのか、
自分たちの前には、小学生ぐらいの子供を連れた家族連れが、
せっせと鎖場を登っている。
我々は、とりあえず自分が先陣を切る形で、
鎖場に取り付き、急斜面を攀じ登り始めた。

これが晴天の日の鎖場ならば、
それほど危険さを感じなかったかも知れない。
こちらとて小学生時代には、
毎日アスレチックで遊ぶことを、強制されていたのだ。
だが、この日の条件は悪かった。
雨がシトシトと降り続けているため、
岩肌も鎖もベットリと濡れている。
クライミングの基本である「三点確保」を心がけながら
慎重に登って行くのだが、手で掴む場所、
足を置く場所をちゃんと選ばなければ、
ツルッと滑ってしまいそうだ。
そんな状態の鎖場を、重いリュックを背負い、
動きにくい雨具を着込んで登らなければならない。
今は小雨がぱらついているだけだが、
いつ、雨脚が強まるとも限らない。
数々の悪条件が、これでもかというほど重なっている。
正直、鎖場を甘く見ていたことは否めない。
怖い思いをしながら、少しずつ登って行き、
ようやく無事に65mを登り切ることが出来た。
自分に続いて間もなく、残り2人も登り切ったのだが、
さすがに2人とも疲労困憊したらしく、
次の鎖場は迂回路を使うことになった。

迂回路は垂直に近い岩壁に設置された鉄製の通路で、
真ん中には手すりがつけられている。
この手すりの右と左で、上りと下りが決められていて、
登山者はそれに従わないといけない。
山側の方は岩肌があるのだが、
反対側の方は手すりや柵などの、危険防止策が何も施されていない。
ここもまた、うっかり足を踏み外せば死亡事故発生となる。
スリル満点の迂回路を登り切ると、ようやく山頂山荘が見えてくる。
いよいよ山頂だ、と気分も盛り上がり、意気揚々と登って行き、
弥山山頂に到達した。

本来ならば、360度の大展望が臨めるのだろうが、
いかんせん、この日は真っ白な霧が沸き立っている。
東西南北と、さらに上下を見回しても
全て霧に覆われ、真っ白である。
とりあえず石鎚神社の山頂社にお参りし、
石鎚山登頂の喜びに浸る……というわけにはいかない。

そう、知っている人は知っているだろうが、
ここ弥山は石鎚山の最高峰ではない。
ここからさらに、刃の様な峰の上を移動し、
400mほど進んで行くと、石鎚山の真の山頂、
天狗岳があるのである。

これを極めずして、石鎚山登頂は名乗れない。

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