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大台ケ原〜その3

更新日:

早朝4時間あまりのドライブを経て、
無事、「大台ケ原」駐車場に辿り着いた。
だが、この日の「大台ケ原」は深い霧に覆われており、
駐車場ですら、まともに見晴らすことが出来ない。
仕方なく、霧深い駐車場の中を歩いて回り、
方位磁石で方向を確認し、
「東大台」周遊コースの入り口を確認すると、
未だ霧の晴れぬ、「大台ケ原」の原生林に
足を踏み入れたのであった。

さて、「東大台」周遊コースに足を踏み入れ、
まず、目についたのは「クマ出没注意」の看板であった。
出るのか……と、思わず腰が引け気味になったが、
冷静に考えてみれば、本州の、これだけ深い山の中だと、
むしろクマがいない方がおかしい。
自分も友人も、熊鈴などを持って来てはいないので、
歩いていても、足音以外の音はたたない。
ただ、これは「大台ケ原」全体的にいえることだが、
樹木は生えているものの、その数は非常に少なく、
それこそ100mやそこらは、林の中を見通すことが出来る。
地面には50㎝ほどの高さまで、ササがびっしりと生えており、
クマやシカがいれば、かなり離れた所からでも
気付くことが出来る。
もし仮にクマがいたとしても、かなり離れた場所で
こちらがそれに気付くことが出来れば、
冷静に対応することが出来るだろう。
そんなワケもあり、辺りに注意を払いながら
ゆっくりと歩を進めていく。
道はしっかりと踏み固められており、
平らな場所では舗装道路を歩いているのと、変わらない。
先に書いた通り、人の歩く場所以外には
びっしりとササが茂っているので、
道を見失うこともない、非常に分かりやすく、
歩きやすいコースである。
そんな歩きやすいコースを進んでいくと、
やがてコースは上り坂になる。
つづら折りになった坂を、ジグザグに登って行くと、
そこには展望デッキが設置されており、道も二手に分かれている。
展望デッキに上がってみたが、深い霧のせいで眺望は0である。
ここの分かれ道を左手に行けば、
「大台ケ原」最高峰の「日出ヶ岳」となる。
距離にしてみれば、わずか300mほどで、
山頂まではしっかりとした木製の階段が設置され、
登山者たちは、この木製の階段を上らなければならない。
「大台ケ原」の植生を守るための、措置だろう。

木製の階段を上り終えると、
目の前には木材で組まれた櫓が建っている。
ちょうど二階建てになっており、二階部分は展望台を兼ねている。
だが、残念なことに、ここにいたって尚、
霧はまだ晴れておらず、全く展望がきかない。
一応、展望デッキに登ってみたのだが、当然、全く見晴らしはなく、
展望も高度感も0である。
ところでこの「日出ヶ岳」の展望デッキ、
四隅の柱の上に、尖った金属の針が立っている。
最初は何なのかよく分からなかったのだが、
この針を良く見てみると、この針からワイヤーが伸びており、
地面へと繋がっている。
それでようやく、この針が「避雷針」であることに気がついた。
よくよく見てみると、どの避雷針にも使用された感じがある。
使用感があるということは、ちゃんと雷が落ちたということである。
展望デッキの下の階には、
「カミナリが鳴り始めたら、展望デッキの1階中央で、
 身体を小さくしてうずくまりましょう」
とある。
なるほど、四隅の柱全てに避雷針がついているため、
柱に近い位置にいると、危険なのかも知れない。
自分たちが、この「日出ヶ岳」展望デッキを訪れたのは
午前9時過ぎだったので、
まだまだ雷の起こりやすい時間ではなかったのだが、
午後から、この場所を訪れる場合、
にわかに雷雨に遭遇することも、あるに違いない。
そういう場合、この展望デッキは、
シェルターの役目も果たしてくれるのだろう。

山頂でひとしきり休憩した後、
再び木製の階段を下り、分岐点まで戻って来た。
地図によれば、ここから大きく南下し、
しかる後、西へと進んで行くことになる。
分岐点から南へと進んでいくと、道が木道へと変わる。
登山客によって植物を踏み荒らされないためであろう。
一帯にはササが一面に生い茂っており、
そのササ原のあちこちに、立ち枯れた樹木が見られる。
案内看板の説明によれば、
立ち枯れているのはトウヒと呼ばれる樹木で、
マツ科の常緑樹だという。
もちろん「大台ケ原」には、枯れていないトウヒも多く見られるが、
この正木峠一帯のトウヒは、ほとんどが立ち枯れてしまっている。
かつて台風の影響でトウヒが倒れ、日が差し込むようになったため
ササが繁茂するようになり、そこにシカが入り込んだ。
このシカ達の食害によって、正木峠一帯のトウヒは
立ち枯れてしまったという。
実際、この日、自分たちも正木峠、正木ヶ原を歩いていて、
3匹のシカを目撃している。
どうやら、かなりの数のシカが生息しているようである。
シカ達に樹皮を食い荒らされないように、
幹に金網を巻かれている樹木があちこちで見られた。

正木峠、正木ヶ原と、木道を歩いているうちに、
あれだけ立ちこめていた霧が、かなり薄くなってきた。
「日出ヶ岳」を越えてからは、あまり高低差はなく、
全体的にいえば、ゆったりとした下り坂になっている雰囲気だ。
そのため、歩いていても疲れを感じる様なことはない。

「尾鷲の辻」と呼ばれる分岐点に来た所で、
軽い休憩を入れる。
ここから「大台ケ原」駐車場まで、直通のルートがあるのだが、
今回はそのルートを使わず、
さらに周遊コースを進んでいくことにする。

「尾鷲の辻」を越えてしばらく進むと、
突如として、巨大な「像」が現れる。
髪を顔の横で束ねた人物の「像」で、手に持った杖の先には、
翼を広げた鳥がとまっている。
どうやら初代天皇・神武天皇の「像」のようだ。
辺りは、開けた広場になっており、
その中央をコースが横切っている。
「牛石ヶ原」と呼ばれる場所らしい。
その名前から察するに、
牛の形をした石があるのだろうと思っていたが、
その予想通り、広場の真ん中辺りに牛に見えなくもない石がある。
回りをロープで囲んであるので、触ったり、
上に乗ったりすることは出来ない。
はっきりいって、神武天皇の「像」のインパクトが強すぎて、
肝心の「牛石」の方は、ほとんど記憶に残らない。
しかし、一体何を考えて、この様な「像」を設置したのだろう?
余りに場違いな気がする。

「牛石ヶ原」を越えてしばらく進むと、
再び分岐点にさしかかる。
この分岐を別れて先に進んでいけば、
「大蛇嵓(だいじゃぐら)」と呼ばれる場所に出る。
それがどういうものなのか、よくわからないまま、
せっかくここまで来たのだからという、軽い気持ちで進んでいった。
分岐点から先は、下り坂になっており、
足下に気をつけながら先に進んでいく。
ある程度先に進むと、だんだんと道が細くなってくる。
さらに右手を見ると、ほとんど直角に近い急斜面が
数百mほど切れ落ちており、恐ろしい迫力である。
もちろん、うっかりと転げ落ちようものなら、命はない。
途中、岩の上に板を架け渡した場所を越えて先に進んでいくと、
巨大な岩が、デンと鎮座していた。
ああ、これが「大蛇嵓」かと思っていると、
その岩の横に案内板がおいてあり、
「これは大蛇嵓ではありません。
 大蛇嵓はもっと先です」
という様なことが書いてある。
「大蛇嵓」って、一体何なんだと思いながら、岩の横をすり抜け、
先に進んで行った。
先に進んでいくと、突如として周りに木がなくなり、
見晴らしのいいポイントに出た。
足場は巨大な一枚岩の様で、結構つるりとしている。
斜めになった一枚岩の先に鎖による柵が作ってあり、
そこから先には行けないようになっている。
もちろん、鎖の先も、周りも切り立っているので、
つるりとした一枚岩の上で、つるりと滑ってしまえば、
コロコロと転がり落ちていくことになる。
柵はあるものの、それほど高い柵ではないので、
下手をすれば、あっさりと跳び越えてしまいかねない。
我々はへっぴり腰になりながら、柵の近くまで下りていった。

柵の側に腰を下ろし、改めて景色に目をやると、
そこは素晴らしい絶景ポイントであった。
目の前には大峰連山が横たわっており、その巨大さに圧倒される。
横へ目をやると、切り立った岩塊が直角に近い。
後でパンフレットを見ると、800mの断崖絶壁らしい。
目の前にある崖だけで、的場山の倍の高さがあるわけだ。
すでに霧は晴れ、はるか遠くの峰まで見晴らすことが出来る。
少なくとも、霧に包まれ、全く視界の効かなかった山頂よりも、
遥かに素晴らしい絶景である。
まさに今回の「大台ケ原山行」の中で、一番の目玉であった。

さて、いくら素晴らしい絶景であるといっても、
いつまでもそこに留まっているわけにはいかない。
ひとしきりその絶景を楽しんだ後、再びへっぴり腰になりながら、
その場を後にしたのであった。

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