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巨人の星〜その1

更新日:

自分自身、スポーツというものとは
縁遠い人生を送ってきているのだが、
持っているマンガの中には、
どういう訳かスポーツものが混じっている。

ひとつは以前にも書いたことがあるが、
月刊少年マガジンで連載中のバスケットボールマンガ、
「DEAR BOYS」である。
これは高校バスケットボールを描いたマンガで、
自分が中学校のころから連載している作品だ。
元々は母親が大ファンで、コミックスを集めていたのだが、
連載半ばにして母親は亡くなり、
それを継ぐようにして、自分が続きを買い続けた。
25年以上の長期連載だが、
作中の時間は1年ほどしかたっていない。
遅々としているものの、ストーリーは進んでおり、
月刊少年マガジン誌上では、
ようやくインターハイ決勝戦の決着がつこうとしている。
このマンガを読んでいるおかげで、
若干のバスケットボールの知識はある。
(あくまでも、マンガから得た知識だけであるが……)

そして、もう1つ持っているマンガが「巨人の星」だ。
こちらの方は、その名前を知っている人も多いだろう。
「DEAR BOYS」に比べてみれば、
知名度ははるかに高い作品だ。
「DEAR BOYS」が連載中の作品のため、
普通のコミックスで集めているのに対し、
「巨人の星」は、すでに連載が終了しているため、
文庫版での収集である。
さらに続編である「新・巨人の星」についても
文庫版で揃えてある。
こちらには「巨人の星」の番外編と、
「巨人の星」と「新・巨人の星」の間に起こった出来事を描いた、
「それからの飛雄馬」が掲載されている。

さて、改めて「巨人の星」という名前を出しても、
これを聞いたことが無い、という人は少ないだろう。
「思い込んだら~、試練の道を~」で始まる
アニメ版のオープニング、「ゆけゆけ飛雄馬」は
懐かしのアニソン特集では、はずせない1曲だし、
「大リーグボール養成ギプス」や、
「大リーグボール」という単語は、
「巨人の星」を読んだことのない人でも
耳にしたことがあるだろう。
さらに「星一徹」といえば、日本の頑固オヤジの
代名詞といえるキャラクターで、
「星一徹のような父親」という表現を
耳にしたことのある人もいるだろう。
だが、その中で
「巨人の星」を読んだことがあるという人は、
どれくらいいるだろう。
恐らく一定以上の年齢の人の中には、
かなりの割合で読者がいるはずだが、
その世代より下の人たちでは、
名前は聞くけど、内容は知らず、という人も多いだろう。
かつての自分も、まさにそうであった。
「巨人の星」は、自分の育ってきた世代より、
上の世代の人間が夢中になったマンガだ。
少なくとも、自分が育ってきた時代では
マンガでも、アニメでも「巨人の星」というのは、
全く未知の作品であった。

「巨人の星」は、1966年から1971年にかけて、
週刊少年マガジンで連載された、
「野球」をテーマにしたマンガである。
連載が開始が、ほぼ半世紀前である。
もちろん、自分もまだ生まれていない。
このマンガの冒頭シーンが、
長嶋茂雄のジャイアンツ入団シーンであることや、
王貞治が早稲田実業に通う高校生として登場していることから、
どういう時代を舞台にしているかがわかる。
主人公の父親・星一徹は「戦争で肩を壊した」とあるので、
まだまだ戦争というものが、色褪せてしまう前の時代である。

戦前、ジャイアンツで三塁手をしていた父・一徹は、
戦争によって肩を壊し、ジャイアンツを追われる。
彼は自らが果たせなかった夢、
「巨人の星」を息子・飛雄馬に託し、
虐待と紙一重な特訓を繰り返す。
一徹は、飛雄馬の意志を全く無視して特訓を施していたため、
息子から激しい反発を招く。
当然である。
しかし、後にライバルとなる花形満との出会いや、
まだ高校生だった王貞治との出会いにより、
飛雄馬は野球の素晴らしさに開眼、
以降は自ら進んで特訓を行なうようになる。

「巨人の星」の代名詞ともいえる「大リーグボール養成ギプス」や、
ボールにガソリンをかけ、火をつけたボールでノックする、
「火の玉ノック」などはこのころに出てくる。
星一徹による「ちゃぶ台返し」が行なわれるのも、
この時代の話である。
飛雄馬が、小学生のころの物語、
いわば幼年編ともいえる部分である。
こうやって見ると、初期のころから随分と
カッ飛んだマンガだったことがわかる。
作中で飛雄馬は父親のことを、「時代遅れ」と称している。
このフレーズはこの先も度々出てくる。
このころに飛雄馬に出会った花形満は、後に
「日本中あげて、ふわふわ骨無し草のように
 欧米かぶれしつつある風潮に逆らい、
 父上とともに、古き良き日本を頑固に死守する姿」
と評している。
なんのことはない。
「巨人の星」で描かれている、「根性」と「精神論」は、
すでに「巨人の星」の時代でさえ、時代遅れだったのである。
花形は星親子の姿を見て、「古き良き日本」と評したが、
彼に出会ったころは、当の飛雄馬でさえ、
自分たちのことを、時代遅れとバカにしていたのは、
なんとも皮肉な価値観の違いだ。
王貞治との勝負を経て、飛雄馬は野球の素晴らしさに目覚め、
本気で野球に取り組むことを父・一徹に告げる。
それを聞いた一徹は感激し、例の「火の玉ノック」特訓の末、
飛雄馬は花形満に勝利した。
飛雄馬の決意を知った一徹は酒を止め、
息子を高校へ進学させるべく、
昼夜ぶっ通しで、体力の全てを使い果たすごとく
働き続けるのであった。

これが「巨人の星」で描かれた、少年時代である。
日雇い労働者の息子である飛雄馬が、
自らの高校進学に、大きな不安を抱いている場面が出てくるが、
この時代は、まだまだ子供の高校進学率は低く、
貧乏な家の子供は、義務教育を終えた後、
すぐに働きに出るのが、当たり前の時代だったのである。

一部に戦争の影を残しつつも、
高度経済成長の中で、日本が豊かになっていく、
まさに、そのまっただ中の物語なのである。
この時代、すでに人々が忘れつつあった「根性」と「精神性」を、
「巨人の星」はスポーツの世界において復活させた。
それは、「巨人の星」に誘発されるように、
「スポ根ブーム」が起こったことでも明らかである。
そして、このとき生まれた「スポ根」という価値観は、
スポーツの世界に定着し、
現在でもなお、この価値観を持つ指導者たちによって、
スポーツ指導が行なわれている例も、少なくないのである。

今回は「巨人の星」、幼年編を中心にして話を進めてみた。
次回は、飛雄馬が高校へと進学し、
球界にデビューする辺りを書いていく。

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